幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『プーランク:ぞうのババール/サティ:ジムノペディ、グノシエンヌ、他』  ジャンヌ・モロー(語り)&ルイサダ(ピアノ)

プーランクぞうのババール/サティ:ジムノペディ、グノシエンヌ、他』 
ジャンヌ・モロー(語り)&ルイサダ(ピアノ) 

Poulenc: L'histoire de Babar 
Satie: 3 Gnossiennes, Gymnopédie No. 1, Sports et divertissements 
Jeanne Moreau / Jean-Marc Luisada 


CD: Deutsche Grammophon 
発売:ポリドール株式会社 
POCG-1858 (1995年) 
¥3,000(税込)/(税抜価格¥2,913) 
Made in Japan 

 


帯裏文:

プーランクとサティ。二十世紀初頭のフランスを生きた彼らの音楽は、退廃的でありながらも、洒落ていて、パリ独特の「粋」を感じさせます。ルイサダが紡ぎだす、メランコリックな音色のピアノと、伝説的名女優ジャンヌ・モローのスリリングな語りは、互いによく溶けあって、妖艶な雰囲気を醸しつつ、上質なワインのように心地よく酔わせてくれます。ゆったりした、大人の時間のためのアルバムです。」


エリック・サティ 
ERIK SATIE 
(1866-1925) 

1.ヴェクサシオン 2:32 
Vexations (Pages mystiques, no 2) 
2. グノシエンヌ 第3番 2:43 
Gnossienne no 3
3.ジムノペディ 第1番 3:53 
Gymnopédie no 1 
4.ヴェクサシオン 1:24 
Vexations 
5.グノシエンヌ 第1番 3:10 
Gnossienne no 1 
6.グノシエンヌ 第2番 2:09 
Gnossienne no 2 
7.ヴェクサシオン 1:14 
Vexations 
8-18.スポーツと気晴らし 
 序文/食欲をそそらないコラール 1:39 
 Préface / Choral inappétissant 
 第1曲 ブランコ 0:45 
 1. La Balançoire 
 第2曲 狩り 0:29 
 2. La Chasse 
 第3曲 イタリア喜劇 0:40 
 3. La Comédie italienne 
 第4曲 花嫁の目覚め 0:41 
 4. Le Réveil de la mariée 
 第5曲 目かくし鬼 0:53 
 5. Colin-Maillard 
 第6曲 魚釣り 1:27 
 6. La Pêche 
 第7曲 ヨット遊び 0:50 
 7. Le Yachting 
 第8曲 海水浴 0:33 
 8. Le Bain de mer 
 第9曲 カーニバル 0:44 
 9. Le Carnaval 
 第10曲 ゴルフ 0:46 
 10. Le Golf 
 第11曲 蛸 0:37 
 11. La Pieuvre 
 第12曲 競馬 0:27 
 12. Les Courses 
 第13曲 陣とり遊び 0:52 
 13. Les Quatre-Coins 
 第14曲 ピクニック 0:34 
 14. Le Picnic 
 第15曲 ウォーター・シュート 0:47 
 15. Le Water-Chute 
 第16曲 タンゴ 1:50 
 16. Le Tango 
 第17曲 そり 0:31 
 17. Le Traîneau 
 第18曲 いちゃつき 0:36 
 18. Le Flirt 
 第19曲 花火 0:29 
 19. Le Feu d'artifice 
 第20曲 テニス 0:39 
 20. Le Tennis 
29.ヴェクサシオン 1:08 
Vexations 
30-32.《冷たい小品集》から〈逃げださせる歌〉 
Pièces froides: Airs à faire fuir 
 Ⅰ 4:00 
 Ⅱ 2:10 
 Ⅲ 4:06 
33-35.最後から2番目の思想 
Avant-Dernières Pensées 
 第1曲 田園相聞歌(ドビュッシーに捧ぐ) 1:24 
 1. Idylle, à Debussy 
 第2曲 朝の歌(ポール・デュカスに捧ぐ) 2:00 
 2. Aubade, à Paul Dukas 
 第3曲 瞑想(アルベール・ルーセルへ捧ぐ) 1:15 
 3. Méditation, à Albert Roussel 
26.ヴェクサシオン 1:06 
Vexations 

フランシス・プーランク 
FRANCIS POULENC 
(1899-1963) 

17.ぞうのババール 27:26 
L'Histoire de Babar, le petit éléphant 


ジャンヌ・モロー(語り) 
Jeanne Moreau, récitante 
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ) 
Jean-Marc Luisada, piano 

録音:1994年7月 パリ 
Recording: Paris, Salle Wagram, 7/1994 
Executive Producer: Roger Wright 
Recording Producer: Arend Prohmann 
Tonmeister (Balance Engineer): Hans-Peter Schweigmann 
Recording Engineer: Hans-Rudolf Müller 
Editing: Stefan Weinzierl 
Cover Photo: Gilles Decamps 
Photo of Artists: Gilles Decamps 
Photos of Satie and Poulenc: Archiv für Kunst und Geschichte, Berlin 


◆井上さつきによる「曲目解説」より◆

「《スポーツと気晴らし》」
「この曲集は、装飾画家シャルル・マルタンの書いた一連の風俗画に、詩画集ふうに、短いピアノ曲を書くという企画にもとづいて1914年に作曲された。依頼主はパリの出版者ルシアン・ヴォージェルで、当初はストラヴィンスキーのところに話が持ち込まれたが、作曲料の条件が折り合わなかったために、サティのところに廻ってきた仕事だった。サティはストラヴィンスキーに対するよりも安く提示された金額が、それでも自分には高すぎる(!)と主張して、さらに値下げさせたというエピソードが残っている。」


◆「ジャン=マルク・ルイサダ、サティとプーランクの録音について語る」より◆ 

「サティの作品に関しては、私はためらわずに《スポーツと気晴らし》と、他に《ジムノペディ》、《グノシエンヌ》、そして録音の間を通してオスティナートのように繰り返される《ヴェクサシオン》からのライトモティーフを選んでいた。この曲はいわば強迫観念的なもので、サティの意図を尊重しようとすれば、その(サティによるところの)「正規の」持続時間、つまり24時間を達成するためにはそれを840回繰り返さなければならないのだ。だから私たちは、ヴェクサシオンを終始バックグラウンドとして使い、ピアニストが別の部屋で弾いているかのようにそれを断片的に取り上げることにした。」


◆「ジャンヌ・モロー、録音について語る」より◆

「サティは私と同じようにフランス人の父とイギリス人でプロテスタントの母を持つという点で私はある程度関心はありましたが、特に彼に引かれるということはありませんでした。《スポーツと気晴らし》はミイのジャン・コクトーの家で見た覚えがありますし、(中略)サティがとても独創的で、お金のために仕事をした人でなかったことも、名声を得た時があったことも知ってはいました。しかしジャン=マルク・ルイサダが私に《ジムノペディ》と《グノシエンヌ》を弾いてくれたとき、私はこの低い声を、エリック・サティの心の声を、やったらよいのではないかと考えたのです。サティというこの男は変人で、おかしい人なので、気に入ったからです。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、訳詩(秋山邦晴矢川澄子)、「このアルバムについて」「曲目解説」(井上さつき)、「ジャン=マルク・ルイサダ、サティとプーランクの録音について語る」「ジャンヌ・モロー、録音について語る」(訳:エムアンドエムインターナショナル(株)/補訂:井上さつき)、「4Dオーディオ・レコーディングとは」、写真図版(モノクロ)3点。

ぞうのババール」(ジャン・ド・ブリュノフ作)のナレーションと、サティのピアノ曲の楽譜に書き込まれている言葉を、ルイ・マル『鬼火』(1963年)等でおなじみの女優ジャンヌ・モローが朗読しています。
ぞうのババール」は、「かあさん」を狩人に殺されたババールが逃げ出して、辿り着いた町でお世話になった「おばあさん」を見捨てて国に戻って、結婚して王様になるという父権的な童話なのでうさんくさいです。
ところで、サティはピアノ曲「世紀ごとの時間と瞬間の時間」の楽譜に「関係者各位へ」として、「演奏中に、この文章(引用者注:楽譜に書き込まれた言葉)を大声で読みあげることを禁ずる。この指定に違反するどのような行為も、その不遜なる態度に対しては、わが正義の怒りを招くであろう。どんな例外も許されない」と記しています。これが「世紀ごとの時間と瞬間の時間」のみを対象とした戒告だとすると、本CDには「世紀ごとの時間と瞬間の時間」は含まれていないのでセーフですが、他の曲に関しても適応されるのであるとするとアウトです。しかしジャンヌ・モローは、「ジムノペディ」をサウンドトラックとして採用してサティ再評価のきっかけになったともいえる『鬼火』の主演女優であるし、サティの生涯唯一の恋愛の相手であったシュザンヌ・ヴァラドンを彷彿とさせる「ファム・ファタル」なので、サティは「身に受けたはずかしめ」(「ゴチック舞曲」第6曲より)を慈悲深く許してくれるのではなかろうか。

★★★★★ 


タンゴ


「タンゴは 悪魔の踊り――悪魔の気に入りの踊り――悪魔は 心を凍らせるために タンゴを踊る――彼の妻も 娘たちも そして召使たちも こうやって心を冷たくする」

 

ぞうのババール


 

 

 

 

 

 

 

 

Donella Del Monaco  『Chansons Satie』 

Donella Del Monaco 
『Chansons Satie』 
The Best Songs of Erik Satie


CD: Opus Avantra Studium 
OPUS 071 (1997) 

 


1. Les oiseaux (ca 1905 from "Trois melodies sans paroles")  3:14 
2. Tendrement - poems by Vincent Hyspa (1902)  4:55 
3. Sylvie - poems J. P. Contamine De Lauour (from "Trois melodies de 1886")  2:38 
4. La Diva de l'Empire - poems by D. Bonnaud e N. Blès (1904)  3:00 
5. Valse n. 1 "Les trois valses distinguèes du prècieux dègouté"  1:16 
6. Poème n. 1 from "Les trois poèmes d'amour" poems by E. Satie (1914)  0:59 
7. Valse n. 2 from "Les trois valses distinguèes du prècieux dègouté"  1:08 
8. Poème n. 2 from "Les trois poèmes d'amour" poems by E. Satie (1914)  0:50 
9. Valse n. 3 from "Les trois valses distinguèes du prècieux dègouté"  0:58 
10. Poème n. 3 from "Les trois poèmes d'amour" poems by E. Satie (1914)  0:58 
11. Je te veux  for pianoforte (1887)  6:26 
12. Daphénéo  poems by M. God from "Trois melodies de 1886"  1:35 
13. Elégie  poems by J. P. Contamine De Lauour (from "Trois melodies de 1886")  3:15 
14. Premier menuet  for pianoforte (1920)  1:38 
15. Les Anges  poems by J. P. Contamine De Lauour (from "Trois melodies de 1886)   2:37 
16-19. Quatres petites melodies 
Elégie  poems by A. de Lamartine  7:00 
Danseuse  poems by Jean Cocteau  0:40 
Chanson  poems by anonimus of XVIII sec.  0:35 
Adieu  poems by R. Radiguet  0:38 
20. Guilleret (danse) op. 96  by Eugénie Satie-Barnetche, for pianoforte (1856) 2:00 
21. Air du rat  poems by L. Fargue (1926 from "Ludions")  0:25 
22. Le Chapelier  poems by L. Chalupt (from "Trois melodies de 1916")  0:56 
23. Chanson du chat (1926 from "Ludions")  0:45 
24. La statue de bronze  poems by L. Fargue (from "Trois melodies de 1916")  1:45 
25. Poudre d'or (1902 valse for pianoforte)  5:50 
26. Je te veux (1897 valse - voice and pianoforte)  4:17 


Donella Del Monaco: voice [#1-4,6,8,10,12,13,15-19,21-24,26] 
Massimiliano Damerini: piano solo [#5,7,9,11,14,20,25]
Attilio Bergamelli: piano accompanist [#1-4,6,8,10,12,13,15-19,21-24,26]  
 

Total Time: 52:12 


◆Donella del Monacoによるライナーノーツより(大意)◆ 

エリック・サティを演奏するには、「クラシック」だけでなく他の音楽ジャンルにもアプローチできる、開かれたアヴァンギャルドな精神が必要とされる。これまでもキャシー・バーベリアンやメレディス・モンクのような革新的な歌手たちがサティに魅せられてきたし、私の音楽生活にとっても、キャバレーや文学カフェとの関連を通して、サティはライトモチーフであり続けている。


◆本CDについて◆ 

イタリアのプログレ/前衛音楽グループ「オパス・アヴァントラ」のヴォーカリスト、ドネラ・デル・モナコによるサティ歌曲集(ピアノ伴奏はアッティーリオ・ベルガメッリ)+ピアノ曲集(ピアノ独奏はマッシミリアーノ・ダメリーニ)です。

ブックレット(全24頁)にDonella Del Monaco「Chansons Satie」(英・伊文)、Ornella Volta「Erick Satie」(英・伊文)、演奏者紹介「Donella Del Monaco」「Massimiliano Damerini」「Attilio Bergamelli」(英・伊文)、トラックリスト&クレジット、歌詞(仏語原文)、レーベル紹介「Opus Avantra Studium」(英・伊文)、写真図版(モノクロ)1点。

収録歌曲は「歌詞のない3つのメロディ」より「鳥たち」、「やさしく」、「シルヴィア」、「エンパイア劇場のプリマドンナ」、「3つの恋愛詩」、「3つの歌」より「ダフェネオ」「ブロンズの彫像」「帽子屋」、「悲歌」、「天使たち」、「4つの小さな歌」より「悲歌」「踊り子」「シャンソン」「別れ」、「潜水人形」より「鼠の歌」「猫のシャンソン」、「あんたが欲しいの(Je te veux)」で、その間にピアノ独奏曲(「嫌らしい気取屋の3つの高雅なワルツ」、「おまえが欲しい(Je te veux)」、「最初のメヌエット」、「金の粉」、それとサティの父親の再婚相手でピアノ教師のウジェニー・バルネシュ作曲「快活に(踊り)」)が適宜ちりばめられています。

本作についてはネット上にも情報がほとんどなく、プログレファンからもサティファンからも見過ごされがちだと思いますが、たいへんよいです。ドネラはドラマチックかつ表情豊かに歌っています。

★★★★★ 


Les oisesaux 


La Diva de l'Empire



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Donella Del Monaco  『Schönberg Kabarett』 

Donella Del Monaco 
『Schönberg Kabarett』 


CD: Opus Avantra Studium S.a.r.l 
OPUS 077 (2002) 
|A|D|D| 

 


Schönberg Kabarett 
1. NACHTWANDLER (Gustav Falke, Arnold Schönberg) 1901  3:59 
2. GALATHEA (Franz Wedekind, Arnold Schönberg) 1901  2:15 
3. GIGERLETTE (Otto Julius Bierbaum, Arnold Schönberg) 1901  1:42 
4. DER GENÜGSAME LIEBHABER (Hugo Salus, Arnold Schönberg) 1901  2:18 
5. EINFÄLTIGES LIED (Hugo Salus, Arnold Schönberg) 1901  2:15 
6. MAHNUNG (Gustav Hochstetter, Arnold Schönberg) 1901  2:54 
7. JEDEM DAS SEINE (Colly, Arnold Schönberg) 1901  3:12 
8. ARIE AUS DEM SPIEGEL VON ARKADIEN (Emmanuel Schikaneder, Arnold Schönberg) 1901  3:04 

Chansons Grises 
di Reynaldo Hahn, testi Paul Verlaine 
9. CHANSON D'AUTOMNE  2:10 
10. TOUS DEUX  1:55 
11. L'ALLÉE EST SANS FIN  2:00 
12. EN SOURDINE  3:20 
13. L'HEURE EXQUISE  2:08 
14. PAYSAGE TRISTE  2:35 
15. LA BONNE CHANSON  1:40 
16. OFFRANDE  2:52 


DONELLA DEL MONACO, soprano 
MASSIMILIANO DAMERINI, pianoforte 


Registrazione: Opus Avantra Studium 
Copertina: Gianni Sassi 
Grafica e foto: Marco Galliazzo 


◆本CDについて◆

イタリアのプログレ/前衛音楽グループ「オパス・アヴァントラ」のヴォーカリスト、ドネラ・デル・モナコテノール歌手マリオ・デル・モナコの姪)がシェーンベルクのキャバレー・ソングとレイナルド・アーンのヴェルレーヌ歌曲集を歌った純クラシックCDです。

ブックレット(全16頁)にAlfred Caronによる解説「Des planches au salon: chansons et mélodies de la "Belle Epoque"」(仏文)/「From theatre stage to drawing room, songs and melodies of the "Belle Epoque"」(英文)/「Dal palcoscenico al salotto: canzoni e melodie della "Belle Epoque"」(伊文)、歌詞(独語原文&伊訳 #1~8のみ)。インレイにトラックリスト&クレジット。

CDクレジットに記載されていないデータ的なことを補足すると、1979年にシェーンベルク作曲のキャバレー・ソング集&「牧歌(Ecloge)」「さすらい人(Der Wanderer)」「期待(Erwartung)」を収録したLP『Schönberg Kabarett』をCrampsレーベルよりリリース(2007年にストレンジ・デイズより紙ジャケCD化)、その10年後の1989年にA面収録曲(本CD#2~8)を再録音、B面にレイナルド・アーン作曲のポール・ヴェルレーヌの詩による歌曲集『灰色のシャンソン』全曲&「捧げ物」新録音を収録したLP&CD『Schöenberg Kabarett 2』をArtisよりリリース、2002年にリリースされた本CDはタイトルは『Schönberg Kabarett』となっていますが内容は『Schönberg Kabarett 2』に1989年版ではオミットされていたキャバレー・ソング「Nachtawndler」(本CD#1)を1979年版から追加収録したものになっています(#1の伴奏はピアノMaurizio Carnelli、トロンバLeonardo Malandra、オッタヴィーノMaria Grazia Zanini、スネアドラムGiuseppe Marotta)。

本作はプログレファンからもクラシックファンからも見過ごされがちだと思いますが個人的には長年の愛聴盤です。

★★★★★ 


Galathea 


Chanson d'automne


 


 

 

 

 

 

 

 

山本精一  『カバー・アルバム第一集』

山本精一 
『カバー・アルバム第一集』 


CD: P-VINE RECORDS 
PCD-25154 (2013年) 
定価¥2,625(税抜価格¥2,500) 
Made in Japan 

 


帯文:

山本精一の歌の原点となる50~60年代のフォーク・ソングを中心とした10編。」


帯裏文:

「キャリア初となるカバー作品集。ピート・シーガーニール・ヤングジョニ・ミッチェル高田渡からジャックスまで、山本精一がこよなく愛したライヴでもおなじみのカバー・ソング全10曲をじっくりと。ギターもタップリ。山本精一のひとつの定番となる作品集です。」


1. Turn Turn Turn [Pete Seeger]  3:41
(詞:Pete Seeger/原詩:旧約聖書コレヘトの言葉より/曲:Pete Seeger) 
「この曲はPete SeegerとTHE BYRDSバージョンとのミックス」

2. I Believe In You [Neil Young]  4:33
(詞曲:Neil Young) 

3. Circle Game [Joni MitchellBuffy Sainte-marie]  4:41
(詞曲:Joni Mitchell) 

4. For Absent Friends [Gensis]  1:31
(詞曲:Genesis) 

5. オーブル街 [ザ・フォーク・クルセイダーズ]  4:19 
(詞:松山猛/曲:加藤和彦) 

6. 失業手当 [高田渡]  4:24
(詞:高田渡/原詩:Langston Hughes/訳詞:木島始/曲:高田渡) 

7. そして船は行くだろう [あがた森魚岡田徹]  4:46 
(詞:あがた森魚/曲:岡田徹) 

8. Ramblin' Boy [Tom Paxton/高石友也岡林信康]  6:13
(詞:Tom Paxton/訳詞:中山容/曲:Tom Paxton) 

9. からっぽの世界 [ジャックス]  9:14
(詞曲:早川義夫) 

10. We Shall Overcome [Pete Seeger Version]  4:22 
(原曲:Charles Albert Tindley詞曲のゴスペルソング‟We Will Overcome”として知られる)


vocal & guitar: Seiichi Yamamoto 

Produced by Seiichi Yamamoto 
recording and mastering engineer: Tomohito Nomura 
recorded at MOTHER SHIP STUDIO, in Jujou, Kyoto 

design: Satoshi Oguri (P-VINE RECORDS) 
all photos: Seiichi Yamamoto 

 


◆本CDについて◆ 

紙ジャケット仕様(E式見開きジャケ)。裏ジャケにトラックリスト、中ジャケにトラックリスト&クレジット、写真図版(モノクロ)。16頁ブックレット(蛇腹)に歌詞、写真図版(カラー/モノクロ)。

#1「Turn Turn Turn」のピート・シーガー・バージョンは『The Bitter and the Sweet』(1962年)、ザ・バーズ・バージョンは『Turn! Turn! Turn!』(1965年)に収録。
#2「I Believe In You」はニール・ヤング『After the Gold Rush』(1970年)収録曲。
#3「Circle Game」のジョニ・ミッチェル・バージョンは『Ladies of the Canyon』(1970年)、バフィー・セイントメリー・バージョンは『Fire & Fleet & Candlelight』(1967年)に収録。
#4「For Absent Friends」はジェネシス『Nursery Cryme(怪奇骨董音楽箱)』(1971年)収録曲。この曲は山本氏とも共演しているカンタベリー系の重鎮リチャード・シンクレア(日本在住)もジェネシス・トリビュート・オムニバスCD『Supper's Ready』(1995年)、ライヴCD-R『What in the World』(2003年)でカバーしていました。
#5「オーブル街」はザ・フォーク・クルセイダーズ『紀元貮阡年』(1968年)収録曲。この曲はNovo Tono仲間のPhewさんも『Five Finger Discount』(2010年)でカバーしていました。
#6「失業手当」は高田渡『ごあいさつ』(1971年)収録曲。
#7「そして船は行くだろう」は岡田徹『架空映画音楽集Ⅱ―erehwonの麓で』(2012年)収録曲。
#8「Ramblin' Boy」のトム・パクストン・バージョンは『Ramblin' Boy』(1964年)、高石友也バージョンは『坊や大きくならないで/高石友也フォーク・アルバム〈第3集〉』(1969年)、岡林信康バージョンは『わたしを断罪せよ』(1969年)に収録。
#9「からっぽの世界」は『ジャックスの世界』(1968年)収録曲。
#10「We Shall Overcome」のピート・シーガー・バージョンはライヴ盤『We Shall Overcome』(1963年)その他に収録。

基本的にアコースティック・ギター弾き語り(多重録音含む)ですが、#5、6はエレキ・ギターが入っています。#7、9のバッキングはエレキ・ギター多重録音です。

全体的な流れとしては、いいこともあれば落ち込むこともあるけれど、それはそういうものとして受け入れて、その向こうにあるなにかを信じることができれば、そのうちなんとかなるだろう(#1~4)、鬱状態に陥ることがあっても(#5)、失業したら家で寝てたのしい夢を見たり(#6)、行く当てもなくさまよって月や流れ星を見たり(#7)、人生という放浪の末に幸あれ(#8)、再び重篤鬱状態に陥ることがあっても(#9)、その向こうにあるなにかを信じることさえできれば、自分も世界もそのうちなんとかなるだろう(#10)、です。

羅針盤『らご』(1997年)でプロコル・ハルムの「Pilgrim's Progress」の替え歌カバー「Howling Sun」を、Novo Tono大友良英山下毅雄を斬る』1999年)でTVアニメ「ガンバの冒険」OP&EDを、羅針盤『会えない人』(2003年ミニアルバム)でニール・ヤングの「Only Love Can Break Your Heart」を、『なぞなぞ』(2003年)で「砂に消えた涙」の替え歌カバー「B1のシャケ」を、等、山本精一の歌モノにおけるカバー曲の占める意義は大きいです。本作はフォークカバーアルバムですがジャックスやジェネシスも入っていて一筋縄ではいかないです。第二集以下はまだ出ていないですが、昭和歌謡や昭和アニメソング、プログレカバーアルバム(ルインズ波止場では「Close to the Edge」等ありますが)なども出るとよいです。

★★★★★ 


からっぽの世界


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

John Renbourn  『The Nine Maidens』 

John Renbourn 
『The Nine Maidens』 


CD: Transatlantic Records / Flying Fish Records, Inc. 
FF70378 (1985) 

 


1. New Nothynge  3:50 
2. The Fish in the Well  2:24 
3. Pavan d'Aragon  5:38 
4. Variations on My Lady Carey's Dompe  6:07 
5. Circle Dance  4:18 
6. The Nine Maidens 
 a. Clarsach  5:43 
 b. The Nine Maidens  4:50 
 c. The Fiddler  2:40 


Tracks: 3, 4 and 6a, b and c recorded by Joe Partridge, The Airfield, Padstow, Cornwall. 
Tracks: 1 and 5 recorded by Ian Dent, The Daylight Company, Honiton, Devon. 
Track: 2 recorded by Pascal Bomy, C.L.O. Studio, Paris, France. 
Digitally mixed. Mastered on half inch 30 ips tape by John Dent, The Sound Clinic, Chiswick, London 
Produced by John Renbourn 

All compositions by John Renbourn 
Front cover photo by James Wier 
Design/Artwork by Carol McCleeve 


◆本CDについて◆ 

二つ折りブックレット(内側はブランク)にトラックリスト&クレジット、インサート(十字折り)にJohn Renbournによる楽曲コメント&クレジット。

ジョン・レンボーンのグループ活動(John Renbourn Group/Ship of Fools)の端境期に作成されたソロ作(1986年)で、ケルト色が濃いですが、中世・ルネサンス志向のインスト・アルバムという点では『The Lady and the Unicorn』(1970年)に近いです。

#1「New Nothynge」は『Another Monday』(1966年)収録曲「Lady Nothynge's Toy Puffe」のギター二重奏(オーバーダブ)版。
#2「The Fish in the Well」は『The Hermit』(1976年)収録曲「The Princess and the Puddings」の新アレンジ版で、レンボーンの低音ギターとレミ・フロワサール(Remy Froissart)の高音ギターの二重奏。タイトル(井の中の魚)はドルドーニュ県(フランス)を放浪した時の思い出にちなんでいます。
#3「Pavan d'Aragon」は16世紀スペインのビウエラ曲のスタイルで書かれたオリジナル曲(ギター独奏)。中世のアラゴン王国は放浪のトゥルバドールたちが集まったところで、現代の放浪のギタリストであるレンボーンにとっても魅力的な土地であったようです。
#4「Variations on My Lady Carey's Dompe」は1525年頃のイギリスのヴァージナル曲に基づく変奏で、レンボーンのアコースティック&エレクトリック・ギター(オーバーダブ)とトビー・ペドレー(Toby Pedley)のリコーダー。太鼓(レンボーン)はパドストウ(コーンウォール)のメーデー用のものを借用したそうです。
#5「Circle Dance」は中世舞曲サルタレッロ(タランテラの原形)に基づく曲。レンボーンはギター&シターン&太鼓、盟友トニー・ロバーツ(Tony Roberts)がノーサンブリアン・スモールパイプ&ソプラニーノ・リコーダー、それに漁港ブリックハム(デヴォン)のストリート・ミュージシャン、ジェフ・メレル(Jeff Merrell)とジョー・タンコック(Joe Tancock)がそれぞれフィドルとバウロンで参加しています。
#6「The Nine Maidens」は三つのパートからなっていて、ギター独奏の「a. Clarsach」(クラールザッハ)はスコットランドアイルランドのハープの古名で、アーサー王伝説のトリスタン(トリストラム)とも関連付けられています。「b. The Nine Maidens」(九人の乙女)は古代の巨石群で、この曲がレコーディングされたコーンウォール地方のセント・コロンブ/パドストウ間の道沿いにあって、安息日に踊っていた地元の娘たちとフィドル奏者(fiddler)が石に変えられてしまったという民間伝承によっています。レンボーンのギター&リコーダー、トビー・ペドレーのリコーダー、ベン・バロウ(Ben Burrow)のコンガ、ジュリアン(ジュールス)・ディグル(Jules Diggle)のタンバリンによる舞曲。締めくくりはレンボーンのギターとディグルのコンガによる「c. The Fiddler」。

★★★★★ 


The Nine Maidens: Clarsach / The Nine Maidens / The Fiddler


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

John Renbourn  『Lost Sessions』

John Renbourn 
『Lost Sessions』 

ジョン・レンボーン 
『ロスト・セッションズ』 


CD: Edsel Records / Demon Records Ltd 
EDCD 490 (1996) 
Manufactured in Germany 

MSI/TOKYO 
MSIF 3446 
¥2,500(税抜) 

 


帯文:

「ジョン・レンボーンがペンタングル解散後の70年代初頭にジャッキー・マクシー、テリー・コックスらの仲間と共に行った伝説のセッションが遂に発売!」


1. Just Like Me  3:46 
ジャスト・ライク・ミー 
2. Sleepy John  4:19 
スリーピー・ジョン 
3. Riverboat Song  3:55 
リヴァーボート・ソング 
4. Green Willow  4:20 
グリーン・ウィロー 
5. Seven Sleepers  5:17 
セヴン・スリーパーズ 
6. To Glastonbury  4:16 
グラストンベリーへ 
7. Floating Stone  4:19 
フローティング・ストーン 
8. O Death  3:08 
オー、デス 
9. The Young Man's Song  4:19 
ヤング・マンズ・ソング 


All songs written by John Renbourn 


◆ジョン・レンボーンによるライナーノーツより◆

「ここに収めた歌はいずれも70年代はじめ頃―正確な日付はどうもはっきりしない―一連のセッションで録音したものだ。このセッションはロンドン北部のなつかしいリヴィングストン・スタジオで行われ、(中略)ミュージシャンのほとんどは優れた演奏家であると同時に親しい友人でもあった。特にはっきりした計画を考えていたわけではなく、その後テープはどこかへ行ってしまった。」
「70年代の初めは、短期間ではあったがわたしにとって音楽的に荒涼とした時期だった。ペンタングルとして数年間長期にわたるツアーを続けた後だったので、バンドの解散がはっきりしてくると、物事が動くスピードがずいぶんゆっくりしたものになった。自分自身を励ますために何人かの友人たちを集め、ちょっとした音楽をやって楽しく時を過そうと試みたことは覚えている。」
「ロイ・バビントン(Roy Babbington)は六弦のエレクトリック・ベースを携えて現れた。テリー・コックス(Terry Cox)はドラム・キットを叩き、ケシャブ・サテ(Keshav Sathe)はタブラ、ジャッキー・マクシー(Jacqui McShee)がふらりと来てバックグラウンドですてきなスキャットを二つ三つ合わせてくれたし、クレア・デニス(Claire Denise)はチェロを弾き、リー・ニコルソン(Lea Nicholson)はコンセルティーナを持ってきて、ゴードン・ハントリィ(Gordon Huntley)はペダル・スティールで継ぎ目ひとつないコーラスを紡ぎ、スー・ドラハイム(Sue Draheim)がカントリー・フィドルを奏で、(中略)トニー・ロバーツ(Tony Roberts)がフルートとリコーダーを加えた。わたしにはその頃偶然手に入ることになった古い見事なストラトに電気を通すチャンスを得るという望外のおまけまでついた。音楽の幅はファンキーからフォーキー、汎音的なものから田園的なものまでカヴァーしていた。後になって、ジャッキー、スー、ケシュ、トニィそれにわたしはもう少しオフィシャルなベースで集まり、「ジョン・レンボーン・グループ」としてツアーや録音を行い、田園的要素をもう少し深く追いかけることになった。
 今聞きかえしてみると、歌は大体において自伝的なもので、テムズにつないだ古い屋形船から引っ越して街を出て―「リヴァーボート・ソング」―西部地方へ移る―「グラストンベリーへ」―というわたしの移動を反映している。」


◆本CDについて◆ 

輸入盤国内仕様。ブックレット(全12頁)にJohn Renbournによるライナーノーツ(April 1996)、歌詞、カット図版5点、ブックレット裏表紙に写真図版(モノクロ)1点。インレイにトラックリスト、写真図版(モノクロ)1点。投げ込み(十字折り)にトラックリスト、ジョン・レンボーンによるライナーノーツ日本語訳、訳詞(大島豊)。

全曲歌モノです。音の方はペンタングルふうだったりフォーク・ロックだったりして興味深いです。
#6「To Glastonbury」は1979年に日本で録音された『So Early in the Spring』と、1977年にリリースされたライブラリー音源集『The Guitar of John Renbourn』で再演されています。
#4「Green Willow」はペンタングルのコンピ盤『The Time Has Come』(2007年)に再録されています(「From the John Renbourn album *Just Like You* - recorded in 1972-73 but first issued, as *The Lost Sessions*, on Edsel Records in 1996. Features Terry Cox on drums.」)。

★★★★★ 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

John Fahey  『The Dance of Death & Other Plantation Favorites』 

John Fahey 
『The Dance of Death & Other Plantation Favorites』 


CD: Takoma / Fantasy, Inc. 
TAKCD-8909-2 (1999) 
Printed in U.S.A. 

 


1. Wine and Roses (John Fahey)  3:24 
2. How Long (Fahey)   2:52 
3. On the Banks of the Owchita (Fahey)  3:48 
4. Worried Blues (Fahey)  2:20 
5. What the Sun Said (Fahey)  10:08 
6. Revelation on the Banks of the Pawtuxent (Fahey)  2:31 
7. Poor Boy (Fahey-White)  3:16 
8. Variations on the Coocoo (Clarence Ashley; arr. & adapted by Fahey)  3:56 
9. The Last Steam Engine Train (Fahey)  2:14 
10. Give Me Corn Bread When I'm Hungry (Fahey)  3:08 
11. Dance of Death (Fahey)  7:35 

Bonus tracks 
12. Tulip (aka When You Wore a Tulip and I Wore a Big Red Rose) (Wenrich-Mahoney; arr. & adapted by Fahey)  2:41 
13. Daisy (aka A Bicycle Built for Two) (Harry Dacre; arr. & adapted by Fahey)  1:16 
14. The Siege of Sevastopol (trad.; arr. Fahey)  1:19 
15. Steel Guitar Rag (attrib. to Sylvester Weaver)  2:10 


JOHN FAHEY - guitar 


Produced by ED DENSON 
Produced for reissue by BILL BELMONT 

Recorded by GENE ROSENTHAL at Adelphi Studios, Silver Spring, MD; August 22, 1964. 

Remastering, 1999 - JOE TARANTINO 
(Fantasy Studios, Berkeley) 

Original LP design - TOM WELLER, Joyful Wisdom Enterprises 
CD art direction - Jamie Putnam 
CD design - Deb Sibony 


TOTAL TIME  53:36  AAD 


◆本CDについて◆ 

ブックレット(巻々四つ折り+アンケートはがき)にLee GardnerによるCDライナーノーツ、オリジナルLPライナーノーツ、トラックリスト&クレジット。インレイにトラックリスト&クレジットと紹介文。

アメリカの特異なギタリスト、ジョン・フェイヒイの第3作『死の舞踏その他のプランテーション(大規模農園)愛唱曲集』(1964年)。
1st『Blind Joe Death』、2nd『Death Chants』、そしてこの3rd『The Dance of Death』と、ハナっから「Death」づくめのメメント・モリ(死を想起せよ)なフェイヒイですが、本CDライナーノーツに引用されている本人の弁によると、「よく「フェイヒイの演る変な曲(weird stuff)」と言われるけれど、変なのはハーモニーやリズムといった面ではなくて、ディープでダークなエモーションのあらわれなんだ。僕はすごいギタリストとはいえないけれど、とてもディープなギタリストだと思うよ」とあります。

#1「Wine and Roses」はヘンリー・マンシーニの「Days of Wine and Roses」をラジオで聞いたフェイヒイが、後に記憶によって再現したらこうなったそうです。ディープでダークな「酒と薔薇の日々」。

オリジナルLPライナーノーツは例によって韜晦的かつ寓意的なもので、本作録音直後の1964年8月24日、アメリカで善と悪の戦いが勃発、名誉の戦死を遂げたフェイヒイの銅像が建てられることになって、それにからんで謎めいた経緯で発見された録音テープを音盤化したのが本作であるといったようなことが書かれています(じつはフェイヒイはまだ生きていて、やっと悪の部隊(forces of evil)を打ち倒したのでミュージシャンとしての活動を再開できると語ったそうです)。あたかもコルトレーンの1966年の発言「悪の力が存在している、私は善の力になりたいのだ(I want to be a force for real good. ( . . . ) I know that there are bad forces.)」を先取りしているかのようです。

★★★★★ 


Wine and Roses