高柳昌行ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アート "Complete 'La Grima' 「涙」 完全版 (1971)

高柳昌行ニュー・ディレクション

・フォー・ジ・アート

"Complete 'La Grima'

「涙」 完全版" (1971)




「がんばれチャンバラトリオ
そんなヤジに始まり、「帰れ」コールで終わるこの41分45秒の記録は、日本的「世間」に対する「個」のアナーキーな戦いの歴史における重要きわまりないドキュメントであるといえます。

ところで、「涙(ラグリマ)」といえばタレルガ(タレガ)のギター曲です。クラシックギターの初心者が必ず練習する曲です。もちろん私も(なにが「もちろん」なのかよくわかりませんが)、まがりなりではありますが、弾けます。小品ですが、過去をしみじみと回想し現在の痛みを噛みしめ、未来にほのかな希望を託すような、穏やかなる名曲であります。
高柳昌行のラ・グリマは、ハードでアグレッシヴでアヴァンギャルドな大曲ですが、しかし本質的には、荒廃した「現実」の痛み(20世紀初頭に詩人T・S・エリオットが「荒地(Waste Land 荒涼国)」で歌ったような)の表現であり、未来への希望の表現であり、アーサー王伝説で荒涼国を荒廃から救うのが、社会のルールやマナーを廃棄した聖なる白痴である騎士パルシファルであるように、腐敗しまくった高度経済成長期の日本において、神秘学でいうところの「アストラル投射」のフリージャズ版ともいうべき「集団投射」の方法によって「聖杯探求」の旅に出た、「チャンバラトリオ」ならぬフリージャズ三銃士こそ、他ならぬ高柳昌行ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アートなのでありました。現実よりも現実的な超現実(シュルレアル)、エリオットも言ったように、「人間は極度の現実には耐えられない(Humankind cannot bear very much reality)」、それゆえの、大衆(オルテガが言ったような意味での)の保身の叫びとしての「帰れ」コールだったわけです。


Takayanagi Masayuki New Direction for the Art - Complete "La Grima"
Doubtmusic dmh-113 (2007)

1. "La Grima" 41:45

Takayanagi Masayuki: guitar
Mori Kenji: saxophone
Yamazaki Hiroshi: percussion

Recorded at Genya Festival in Sanrizuka on 14 August, 1971.
Mastered by Suto Tsutomu