幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

セクエンツィア 『《イベリアの声》第1集「雷の子ら」カリクストゥスの写本による使徒聖ヤコブの音楽』

セクエンツィア 『《イベリアの声》第1集「雷の子ら」カリクストゥスの写本による使徒ヤコブの音楽』
Sequentia
Vox Iberica I: Donnersöhne
Gesänge für den heiligen Jakobus aus dem Codex Calixtinus
(Santiago de Compostera, 12. Jahrhundert)


CD:deutsche harmonia mundi
BMGビクター株式会社
BVCD-47(1992年)
税込定価3,000円(税抜価格2,913円)

 

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1.「われらが声を響かしめよ」 fol. 187v (ヨハネス・レガリス師) 1:40
Magister Iohannes Legalis: Vox nostra resonet
2.「カトリック教徒はすべて喜ぶべし」 fol. 185 (パリのアベラルトゥス[アベラール]師) 5:45
Magister Albertus Parisiensis: Congaudeant catholici
3.「貴きヤコブ/御身、祈りつづけよ」 fol. 188 (トロワの司教アト師) 2:41
Magister Ato episcopus Trecensis: Iacobe virginei ... / Tu prece continua
4.「われら喜び祝わん」 fol. 185v (ソワソンの司教ゴスレヌス師) 1:20
Magister Goslenus episcopus Suessionis: Gratulantes celebremus festum
5.「ヤコブと共に/悲しきはわが魂」 fol. 188 (トロワの司教アト師) 2:24
Magister Ato episcopus Trecensis: Huic Iacobo ... / Tristis est anima mea
6.「いと高き王の栄光にかけて」 fol. 185v (ベリーの大司教アルベリクス[アルベリック]師) 3:12
Magister Albericus archiepiscopus Bituricensis: Ad superni regis decus
7.「ヤコブヨハネが見てとりしとき/して、イエズスは彼らを叱り給いぬ」 fol. 108 (作者不詳) 2:18
Cum vidissent autem ... / Et conversus Ihesus
8.「われらの一団をして讃えさしめよ」 fol. 185r (トロワの司教アト師) 2:42
At episcopus Trecensis: Nostra phalans plaudat leta
9.「ヘロデ王は送りぬ/して、彼らはヤコブを殺しぬ」 fol. 189 (トロワの司教アト師) 4:04
Ato prefatus: Misit Herodes ... / Occididt autem Iacobum
10.「アレルヤ。イエズスはヤコブを呼び」 fol. 189v (ソワンの司教ゴスレヌス師) 3:08
Magister Goslenus episcopus Suessionis: Alleluia. Vocait Ihesus Iacobum
11.「聖ヤコブへのベネディカムス」 fol. 130v (アンセルム師) 4:05
Benedicamus sancti Iacobi a magistro Anselmo editum: Exultet celi curia. Fulget dies.
12.「この日、われら喜びもて」 fol. 131v (シャルトルの司教フルベルトゥス[フュルベール]) 4:29
Fulbertus episcopus Karnotensis: In hac die laudes cum gaudio
13.コンドゥクトゥス「聖なるヤコブよ、御身の祭日は」 fol. 186v (ベネヴェントの前司教) 3:55
Antiqus episcopus Boneventinus: Iacobe sancte, tuum repetito
14.「全能の父、神よ」 fol. 190 (シャトー・レーナールのガウテリウス師) 3:33
Magister Gauterius de Castello Rainardi: Cunctipotens genitor deus, omnicreator, eleyson
15.「権能高き王、聖なる父よ」 fol. 189 (シャルトルの司教フルベルトゥス[フュルベール]) 2:29
Fulbertus episcopus Karnotensis: Rex immense, pater pie, eleyson
16.「救世主、山上に在りしとき/あたかも雷鳴のごとく」 fol. 187v (トロワの司教アト師) 3:07
17.「ヤコブよ、年ごとに」 fol. 186v (ヴェズレーのアイラルドス[エーラルド]師) 2:13
Magister Airardus Viziliacensis: Annua gaudia, Iacobe debita
18.「おお、救い主よ/危難のうちに呼ばわる者らを/プローザ: 最後の日に港をば」 fol. 188 (トロワの司教アト師) 5:18
Magister Ato episcopus Trecensis: O adiutor ... / Qui subvensis periclitantibus ... / Portum in ultimo
19.「久遠なる栄光の王に」 fol. 187 (シャトー・レーナールのガウテリウス師) 3:46
Magister Gauterius de Castello Rainardi: Regi perhennis glorie
20.〈ヴェニテ〉につづけて歌われるための賛歌「喜び舞え、朗らかに」 fol. 105v (エルサレムの司教グイレルムス) 2:43
Ymnus sancti Iacobi a domno Guillelmo patriarcha Iherosolimitano editus, post Venite cantandus: Jocundetur et letetur
21.「われら主を祝福せんⅠ・Ⅱ・Ⅲ」 fol. 190, fol. 190, fol. 190v (前出のガウテリウス師/トロワのドロアルドゥス師/同じくドロアルドゥス師) 3:16
Gauterius prefatus: Benedicamus domino [I]
Magister Droardus Trecensis: Benedicamus domino [II]
Idem Droardus: Benedicamus domino [III]
22.「一族の父」 fol. 193 (作者不詳) 4:49
Dum pater familias

セクエンツィア[中世音楽アンサンブル]
SEQUENTIA: Ensemble für Musik des Mittelalters
指揮: ベンジャミン・バグビー、バーバラ・ソーントン
Leitung: Benjamin Bagby & Barbara Thornton
歌: ベンジャミン・バグビー/スティーヴン・グラント/ウィリアム・ハイト/フリートヘルム・ホーマン/コリン・メースン/エリック・メンツェル/ライムント・ノルテ/ベルンハルト・シュナイダー
Gesang: Benjamin Bagby, Stephen Grant, William Hite, Friedhelm Hohmann, Colin Mason, Eric Mentzel, Raimund Nolte, Bernhard Schneider
Instrument (No. 11): Organistrum

Produzenten/Producers: Klaus I. Neumann (WDR), Barbara Thornton (Sequentia)
Aufnahme/Recording: Dr. Thomas Gallia, Paul Dery
Technik/Technical equipment: Sonart, France
Aufgenommen/Recorded: 22. XI. - 25. XI. 1989. Roquemaure (FR)
Titlebild/Front cover picture: Der heilige Jakobus/St. James the Apostle
Initiale aus/Initial from Codex Calixtinus

Eine Coproduktion mit Westdeutscher Rundfunk Köln WDR

Total Time - 73:41


◆本CD「解説」より◆

キリスト教徒の諸王国は、“サンティアゴ Santiago”[=
Santo+Iago、聖イアゴ(=ヤコブ)]に、イスラムの侵略者たちとの戦闘にあたり、先頭に立って彼らを導く守護聖者かつ英雄の姿を見出した。11世紀、12世紀とレコンキスタが軌道に乗り、侵略者たちが後退していくにつれて、聖ヤコブの聖堂は、ヨーロッパ中で最も重要な巡礼の地となり、あらゆる国々から熱心なキリスト教徒たちを惹きつけるようになった。」

「〈教皇カリクストゥスの写本 Codex Calixtinus〉あるいは〈聖ヤコブの書 Liber Sancti Jacobi〉と呼ばれる写本はこんにちもサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂に所蔵され、聖ヤコブにまつわる奇蹟物語を記録している。その生涯と殉教のいきさつ、シャルルマーニュ帝と騎士ローランがサンティアゴへの巡礼のさきがけをなしたという、いささか宣伝めいた作り話、ヨーロッパ最古の旅行案内(?)とも思われる巡礼者たちへの手引き(中略)、そして、2日間にわたり6月24~25日に催される記念儀式にさいして歌われるべき聖歌の数々などが、そこには記載されている。」

「写本に含まれる聖歌は、つぎのようなものである――祭日前夜に歌われる晩課(夕べの祈り)と徹夜課(徹宵の祈り)のためのミサ曲。次いで夜課(夜の祈り)のための楽曲、賛歌、ミサ曲など。これら多数の楽曲はこの機会のため特別に作曲されたもので、伝統的グレゴリオ聖歌の、洗練されたメリスマに富むスタイルのうちから旋律を借用している。同時に、写本の中には、いくらか、当時の新しい手法によって作曲された聖歌も含まれる。それらはフランスで発達したもので、脚韻を採り入れて作られた、生き生きとしてリズミカルな詩に作曲されたものである。(中略)それらの旋律は、高尚なグレゴリオ様式の聖歌に比べ、より調子がよく親しみやすかった。これらの歌はおおむね行進のために用いられ、(中略)民衆的な要素の強いものは“巡礼者の歌”として親しまれた。」

 

◆本CDについて◆

日本盤。原盤は独ハルモニア・ムンディ。
ブックレット(全32頁)に「解説」(リチャード・クロッカー&ベンジャミン・バグビー/訳: 濱田滋郎)とその原文(英文)、「セクエンツィアについて」(濱田滋郎)、「SEQUENTIA」(英文)、歌詞(ラテン語)と対訳(訳: 濱田滋郎)。ブックレット裏表紙に写真図版(モノクロ)1点。

セクエンツィアによる中世スペイン音楽シリーズ「イベリアの声」全三巻のうちの第一巻。男声による合唱(アカペラ)で、楽器は11曲目のみオルガニストルム(中世風ハーディ・ガーディ)が使用されています。
「雷の子ら」 は新約聖書マルコ伝3章16節「イエズスは、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネを呼ばれ、彼らに“ボアネルゲス”すなわち“雷の子ら”との名を与えられた」によっています。

教皇カリクストゥスの写本」は教皇カリクストゥスに仮託された「偽書」で、本CDで歌われている詩の内容も、キリスト教の守護聖者=レコンキスタの闘将としての「聖ヤコブ」を称えるもので、多分に政治的です。

★★★★☆


Jocundetur et letetur

 

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