幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『Elizabethan Songs: "The Lady Musick"』 Emma Kirkby/Anthony Rooley

『Elizabethan Songs: "The Lady Musick"』 
Emma Kirkby/Anthony Rooley


CD: Editions de L'Oiseau-Lyre/The Decca Record Company Limited, London, England
425 892-2 (1990)
CD is made in USA/Printed in USA/Made in USA

 

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Elizabethan Songs
The Lady Musick

Bartlett - Campion - Danyel - Dowland
Edwards - Jones - Morley - Pilkington

1. Richard Edwards: Where grypinge griefs 4:05
2. Thomas Campion: Come let us sound 3:02
3. John Dowland: In this trembling shadow 8:05
4. John Danyel: Like as the lute delights 3:39
5. John Dowland: I saw my Ladye weepe 5:35
6. Francis Pilkington: Rest sweet Nimphs 3:45
7. Thomas Campion: When to her Lute 1:41
8. Francis Pilkington: Musick deare sollace 5:05
9. Thomas Morley: I saw my Ladye weeping 3:40
10. Robert Jones: If in this flesh 4:07
11. Francis Pilkington: Come all ye 4:06
12. John Bartlett: Sweete birdes deprive us never 6:09

Emma Kirkby: soprano
Anthony Rooley: lute

Producer: Peter Wadland
Engineer: Martin Haskell
Recording location: Decca Studio No. 3, West Hampstead, June 1978

Cover Photo of Emma Kirkby by Reg Wilson (DECCA)


◆本CD解説(Emma Kirkby)より(大意)◆

学芸を女性として擬人化するのは中世以来の共通の考え方で、ほとんどのヨーロッパの言語では学芸は女性名詞であり、絵画では天上の貴婦人として表わされる。ダウランド「リュート歌曲集第一巻」の扉絵にも、貴婦人としての「幾何学」「算術」「天文学」「音楽」が、従者としてのストラボン、プトレマイオスポリュビオスと共に描かれているが、それら四人の貴婦人は「四科(Quadrivium)」(啓蒙の四つの方法)で、「三学(Trivium)」(「文法学」「修辞学」「論理学」)と共に「自由七科(the seven Liberal Arts)」を形成し、それが「ジェントルマン」の教育の基礎となる。
音楽が数学と同類に扱われているのは奇異に思われるかもしれないが、音楽のハーモニーとプロポーションは、人間に、神による創造の原理を垣間見させてくれるものであった。調和と均衡がとれた完全なシステムが創り上げる「大宇宙の歌」(song of the universe)、この「神の音楽(musica divina)」あるいは「天球の音楽(musica mundana)」は、シェイクスピアも言うように(『ヴェニスの商人』第五幕第一場)、あまりに崇高なので人間の耳には理解できない。
人間が作ることができる音楽には二種類あって、人間=小宇宙の音楽(musica humana)(人体における調和と均衡)と器楽による音楽(musica instrumentalis)(楽器あるいは声による演奏)であり、これらによって人間は己れの魂が神のハーモニーを分有するものであることを想起する。

「音楽の貴婦人(Lady Musick)」は数世紀にわたって様々に表現されてきた。シャルトル大聖堂の浮彫では鐘(完全な数学的ハーモニーのシンボル)を叩いている。ピタゴラスのように一絃琴だったり、ヴィオールだったり、のちの世紀の聖セシリアを思わせるオルガンだったりするが、最も一般的なのはリュートであった。


◆本CDについて◆

ブックレット(全20頁)にエマ・カークビーによる解説(原文は英語、仏・独訳併載)と歌詞(英語原文のみ)、写真図版(モノクロ)1点。

「音楽」と、「貴婦人」としての音楽のミューズをテーマにした英国エリザベス朝リュート歌曲のアンソロジーです。伴奏はアントニー・ルーリー。LP(ジャケットデザインはCDと異なります)は1979年リリース。

トーマス・モーリーとジョン・ダウランドがほぼ同一の歌詞にそれぞれ作曲している(「I saw my Ladye weepe」「I saw my Ladye weeping」)のを聞き比べてみると興味深いです。

★★★★★


Dowland: I Saw My Ladye Weepe

youtu.be

 

Morley: I Saw My Ladye Weeping

youtu.be

 

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