幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『The English Lute Songs』 Julianne Baird/Ronn McFarlane

『The English Lute Songs』
Julianne Baird/Ronn McFarlane
ジュリアン・ベァード/イギリス・リュート歌曲集[1]

CD: Dorian Recordings, a dividion of The Dorian Group, Ltd., NY
DOR-90109 (1988)
輸入・発売: 株式会社ミュージック東京
New Seasons Classics/NSC84

 

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1. This Merry Pleasant Spring [Anon.] 1:40
この楽しい春に(作曲者不詳)
2. Woods, Rocks and Mountains [Robert Johnson (c. 1583-1633)] 3:17
森よ、岩よ、山よ(ロバート・ジョンソン
3. April is in My Mistress' Face [Thomas Morley (1557-1602)] 1:00
私の恋人は四月のようにさわやか(トマス・モーリィ)
4. No More Shall Meads be Deck'd With Flow'rs [N. Lanier (1588-1666)] 2:49
もはや野には花が咲かないだろう(ニコラス・レニエ)
5. Lute Solo: The French King's Masque [Anon.] 1:16
リュート独奏、フランス王のマスク(作曲者不詳)
6. Come My Celia [Alfonso Ferrabosco (before 1578-1628)] 2:00
おいで、私のシーリア(アルフォンソ・フェラボスコ)
7. O Death, Rock Me Asleep [Anon.] 3:34
あゝ死よ、私を平和な眠りにとじこめよ(作曲者不詳)
8. Where the Bee Sucks [Johnson] 0:48
私は蜜蜂のように蜜をとる(ロバート・ジョンソン
9. Full Fathom Five [Johnson] 1:20
五尋の水底深く(ロバート・ジョンソン
10. Come Away, Hecate [Johnson] 2:10
早くいらっしゃいヘケイト(ロバート・ジョンソン
11. The Willow Song [Anon.] 5:10
柳の歌(作曲者不詳)
12. Lute Solo: Alman, 'Hit and Take It' [Johnson] 2:25
リュート独奏、アルマンドロバート・ジョンソン
13. Dear, Do Not Your Fair Beauty Wrong [J. Wilson (1595-1674)] 2:27
貴女の美しさを不当に評価しないように(J. ウィルソン)
14. Come Hither You That Love [Johnson] 1:57
いらっしゃい 恋をする人はみんな(ロバート・ジョンソン
15. Have You Seen But a White Lily Grow [Johnson] 4:09
無垢な百合の花が咲いているのを見たことがありますか(ロバート・ジョンソン
16. I Must Complain [Anon.] 2:35
恋人をほめながら でも不服を言う(作曲者不詳)
17. Nothing on Earth [Anon.] 3:42
この地上で私の恋の思いを伝えてくれるのは(作曲者不詳)
18. Fain Would I Wed [Thomas Campion (1567-1620)] 1:16
素敵な男性となら結婚もいとわない(トマス・キャンピオン)
19. Miserere, My Maker [Anon.] 3:11
神よ 憐れみを(作曲者不詳)
20. O That Mine Eyes [Thomas Brewer (1611-c. 1665)] 3:11
あゝ 私の眼が(トマス・ブリューアー)
21. Lute Solo: Alman [Johnson] 1:30
リュート独奏、アルマンドロバート・ジョンソン
22. Care, Charming Sleep [Johnson] 2:41
よろしく優しい眠りよ(ロバート・ジョンソン
23. Cupid is Venus' Only Joy [Anon.] 2:12
キューピットはヴィーナスの最愛の子(作曲者不詳)
24. O Let Us Howl [Johnson] 1:29
あゝ 恐ろしい声で吠えよう(ロバート・ジョンソン
25. As Life What is so Sweet [William Webb (c. 1600-after 1656)] 2:07
人生はとても楽しいので(ウィリアム・ウェッブ)
26. Turn, Turn Thy Beauteous Face Away! [Wilson] 0:50
貴女の美しい顔をそむけよ(ウィルソン)
27. Take, O Take Those Lips Away [Wilson] 1:55
あの唇を隠してほしい(ウィルソン)

Total program length: 65:11


Julianne Baird: soprano
Ronn McFarlane: lute

Recorded at the Troy Savings Bank Music Hall, Troy, NY, October 6-7, 1987
Session Producer: Craig D. Dory
Engineers: Craig D. Dory, Douglas Brown
Post-Session Producer: Ronn McFarlane
Editor: Douglas Brown
Excutive Producer: Brian M. Levine

Cover painting: An anonymous portrait of a lutenist and a lady (Florentine School, 16th c., Earl of Leicester Collection, Holkham Hall, Norfolk


◆本CD日本語帯解説(大橋敏成)より◆

「このCDの優れた点は、第1にフローリッド・ソング Florid Song (「華麗な歌」ほどの意、装飾句、装飾音をふんだんに使った歌曲)を集めて、それを高度な技術で聴かせてくれていることであり、第2にあまり紹介されていないR. ジョンソンの歌曲を中心にプログラムを組み、それに彼のリュート独奏曲を配していることである。」
バロック初期に全盛をきわめたいわゆるフローリッド様式は、16世紀半ばのイタリアに端を発すると言われている。この時期の声楽家は、楽譜に書かれた一つずつの音符を効果的な音型に置き換えて、華々しくしかも趣味よく変奏を即興することが期待されていた。」
「英国のフローリッド・ソング―ダウランド、キャンピオン、ピルキントンなどのリュート歌曲からもわかるように、1600年前後の英国では、暖かく単純な旋律線と、詩のリズムの忠実な表現という率直さが尊ばれていたので、このフローリッド様式はなかなか素直に受け入れられなかった。(中略)キャンピオンのような影響力のある詩人作曲家は、「詩と音符のむつまじい結びつき」を強調し、直截さを尊ぶ気風を推し進めた(この路線は17世紀をとうして英国の歌曲を支配した)。彼にとっては、ダウランドのような作曲家の歌曲すらも「長くて混み入っていて、フーガで引き留められ、シンコペーションで繋がれた」複雑で技巧的すぎるものであった。そのダウランドも、ディヴィジョン(音符を細かく分割してゆく変奏、すなわちフローリッド唱法)を「無学で非音楽的な行為」と断じていた。」
「しかしこのように、ディヴィジョンについてのしつような反対意見が述べられていた事は、その時代の英国の演奏習慣のなかに、イタリアの演奏様式が影響を与えていたことの証しではないだろうか。」
「このCDの演奏をとうして、英国ノフローリッド・ソングは、他の国のそれと比較してみても、十分に成長した芸術であったことが理解出来る。たしかに、装飾の控え目さが英国の17世紀の芸術歌曲の主流ではあるが、ここに紹介されているようなフローリッド唱法の伝統の結果が、パーセルの“The cares of lovers”とか、“Sweeter than Roses”に代表される「作曲家によって書き込まれた装飾」に開花してゆくのだと思う。」


◆本CDについて◆

ブックレット(全52頁)に解説(Julianne Baird/Ron McFarlane)と演奏者紹介(英・独・仏)、歌詞(英・独・仏)、「The Troy Savings Bank Music Hall」「A Note on the Recording」(英・独・仏)、写真図版(モノクロ)2点。
輸入盤に日本語帯解説(大橋敏成)、「歌詩対訳」ブックレット(英語原詩と大橋敏成による訳詞、全12頁)が付されています。

ジュリアン・ベァード(ソプラノ)、ロン・マックファーレン(リュート)。[2]はもってないです。

★★★★☆


O Death, Rock Me Asleep

youtu.be


「あゝ死よ、私を平和な眠りにとじこめよ
静かな休息へ連れて行け。
私の疲れた罪のない霊を
心配にみちた胸から去らせよ。
死の鐘よ ゆっくりと鳴れ
私の悲しい弔鐘よ鳴り響け
それが私の死を告げるように。
私は死ななければならない
何故なら治療するものは何もないので
死ぬだろう いま私は死ぬだろう。」
(訳詞: 大橋敏成)


O Let Us Howl

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