幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『The King's Delight: 17c. ballads for voice & violin band』 The King's Noyse/David Douglass

『The King's Delight: 17c. ballads for voice & violin band』
国王の楽しみ~17世紀のバラード集
The King's Noyse/David Douglass
ザ・キングズ・ノイズ/デヴィッド・ダグラス(指揮)


CD: harmonia mundi france/harmonia mundi usa, inc.
HMU 907101 (1993)
Made in Germany

発売元: 株式会社 キングインターナショナル
KKCC-265 (1994年)

 

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1. The king's delight (Anon.) 1:26
国王の楽しみ(作者不詳) 
2. All in a Garden Green (Anon.) 2:27
緑の庭では(作者不詳) 
3. Gathering peascods (Anon.) 0:46
ギャザー付ピーズコット(作者不詳) 
4. Blew-cap for me (Anon.) (to the tune of *Blew-cap*) 3:48
青い帽子をくれる人(作者不詳、「青い帽子」の旋律に合わせて) 
5. Fortune my foe (Anon.) [lute solo] 7:36
運命、我が敵(作者不詳、リュート独奏) 
6. Browning (William Byrd 1543-1623) 4:40
ブラウニング(ウィリアム・バード、1543-1623) 
7. Jog on (to the tune of *Jog on, my honey*) (Anon.) 2:08
ゆらりゆらりと(作者不詳、「ゆらりと、可愛い人よ」の旋律に合わせて) 
8. Courante - Packington's Pound (Michael Praetorius 1571-1621) 1:19
クーラント~ピッキントンの池(ミヒャエル・プレトリウス、1571-1621) 
9. Daphne (Anon.) 4:40
ダフネ(作者不詳) 
10. Huntsuppe (John Whitfield 1588-1616) [lute solo] 2:29
起床ラッパ(ジョン・ホイットフィールド、1588-1616、リュート独奏) 
11. The lovely northerne lasse (Anon.) (to the tune of *Broom, broom the bonny, bonny broom*) 7:35
可愛い北の娘(作者不詳、「エニシダよ、可愛いエニシダよ」の旋律に合わせて) 
12. Tantz (Johann Schultz fl. 1622) 1:29
踊り(ヨハン・シュルツ、1622活躍) 
13. O Nachbar Roland (Samuel Scheidt 1587-1654) 6:01
ああ友人のローランド(サミュエル・シャイト、1587-1654) 
14. Dulcina (William Brade 1560-1630) 1:03
ドゥルチナ(ウィリアム・ブレイド、1560-1630) 
15. As att noone Dulcina rested (Anon.) (to the tune of *Dulcina*) 6:29
午後にドゥルチナが(作者不詳、「ドゥルチナ」の旋律に合わせて) 
16. Grimstock (Anon.) [cittern solo] 1:11
グリムストック(作者不詳、シターン独奏) 
17. Robin is to the greenwood gone (Anon.) 0:54
ロビンは森へ (作者不詳) 
18. Ricercar - Bonny sweet robin (Thomas Simpson 1582-1630) 3:27
リチェルカーレ~愛しいロビン(トマス・シンプソン、1582-1630) 
19. A light hearts A jewell (Anon.) (to the tune of *Jack Pudding*) 2:41
陽気な心は一つの宝石(作者不詳、「ジャック・プディング」の旋律に合わせて) 
20. Child Grove (Anon.) 1:47
チャイルド・グローヴ(作者不詳) 
21. Easter Thursday (Anon.) 1:30
聖木曜日(作者不詳) 
22. The Beggar Boy (Anon.) 1:19
物乞いの少年(作者不詳) 
23. Mr. Issac's maggot (Anon.) 1:28
アイザック氏の池(作者不詳) 
24. The little barley-corne (Anon.) (to the tune of *Stingo*) 3:33
小さな大麦の粒(作者不詳、「スティンゴ」の旋律に合わせて) 

Total Time 72:43


The King's Noyse
David Douglass: director & violin
Robert Mealy: violin & viola 
Jane Starkman: viola 
Scott Metcalf: viola
Emily Walhout: bass violin
Paul O'Dette: lute & cittern
Ellen Hargis: soprano (#4,7,11,15,19,24)


Recording: November 3 - 5 1992, Campion Center, Boston, MA
録音: 1992. 11. 3/5/キャンピオン・センター(ボストン)
Executive Producer: Robina Young
Engineer: Brad Michel (SOUND/MIRROR, Inc.)
Producer and Editing: Paul F. Witt
Cover: "Queen Elizabeth Dancing with Robert Dudley, Earl of Leicester." (Detail)
Recorded and produced in the USA


◆本CD別冊解説書所収の解説(ジャック・アシュワース/佐々木勉 訳補)より◆

「ヴァイオリンの合奏では、主に舞曲が演奏された。また、ヴァイオリン奏者たちは、今日ではヴィオラ・ダ・ガンバやリコーダーのためと考えられている作品も演奏したに違いない。さらに、ほんの一例に過ぎないが、オルランドゥス・ラッスス(1532~1594)が仕えたバイエルン公の宮廷では、ヴァイオリンが声楽曲の演奏に参加――歌にヴァイオリンが加わる場合とヴァイオリンのみの場合とがあったと考えられる――していたことが明らかとなっている。ヴァイオリン奏者たちは、記憶を頼りにしたり、民衆歌曲の旋律やパッサメッツォのような低音旋律に基づいて即興演奏を行うなど、しばしばまったく楽譜によらずに演奏したと考えられる。現在、レンヌの博物館には、二人一組で踊るラ・ヴォルタという舞踏の様子を描いた16世紀の絵画が所蔵されている(中略)。作者は明らかではないが、描かれているのは、ほぼ間違いなくヴァロワ宮廷の舞踏会である。二つのヴァイオリンと各一つづつのヴィオラとチェロから構成されていたと推測される合奏団は、楽譜を見てはおらず、即興的に曲を変奏して場を盛り上げている(こうした演奏は珍しいものではなく、初期のヴァイオリン奏者たちは、今日のロック・ミュージックやカントリー・アンド・ウェスタン・ミュージックの演奏者たちと同じようなことを行っていただけである)。
 トマス・メイス(1612頃~1706年頃)にとって、ヴァイオリンは、「人間の耳に満足感をもたらすのに適し、その脳を愉悦で満たす、高い称賛に値する音楽」を生む楽器であった。」
「大判紙1枚に印刷された通俗的な物語歌であるブロードサイド・バラードでは、旋律は実際には紙面に印刷されなかったが、歌詞の作者か印刷業者によってどの旋律に合わせて歌うのかが指示されていた。したがって、それらを演奏しようとする際には、それを当時の楽器編曲から見つけ出さなければならない。また、それらの旋律は、ジョン・プレイフォード(1623~86年)による舞踏教本〈舞踏教師 Dancing Master〉(中略)にも見出だすことができる。」
「すでに述べたように、例えばここで器楽曲として演奏されている(中略)旋律は、バラードを歌う時だけではなく、踊る時にも使われたものである。」


◆本CD別冊解説書所収「演奏者について」(佐々木勉)より◆ 

「「ザ・キングズ・ノイズ」(「ノイズ」という言葉は、16、17世紀には合奏団という意味で使われ、さらに17世紀から19世紀まで旋律的な美しい音楽も指していた)は、ルネサンス期に人気のあったコンソートである、ヴァイオリン・コンソートを蘇らせるために1988年にディレクターのデヴィッド・ダグラスによって組織された。この団体は、ダグラスが行った初期ヴァイオリンの演奏技法の研究や、16、17世紀のコンソート音楽にそれを応用しようという彼の関心から生まれた。」


◆本CDについて◆

輸入盤に別冊解説書(日本語)付。

スリップケースにCDジュエルケース&ブックレット。ブックレット(全68頁)に Jack Ashworth による解説(英語原文、仏・独訳)、歌詞(英語原文、仏・独訳)、演奏者紹介(英・仏・独)、写真図版(モノクロ)2点、図版・カット8点。 ジュエルケース内二つ折りブックレット裏表紙に写真図版(モノクロ)1点。
別冊解説書(全12頁)に解説(ジャック・アシュワース/佐々木勉 訳補)、「演奏者について/楽器について」(佐々木勉)、歌詞訳(佐々木勉)。

デヴィッド・ダグラス指揮ザ・キングズ・ノイズのファースト・レコーディング。ゲストはソプラノのエレン・ハージスとリュート&シターンのポール・オデット。

★★★★☆


Jog on 

 

ゆらりゆらりと、細道を、
 陽気な雌鶏は柵の中。
一日中、陽気な気分で行きましょう。
 悲しみなど、さらりと忘れてしまいましょう。

財布の中身は寂しいけれど、
 考え込むのは止めましょう。
あれこれ悩んでも仕方がない。
 何も心配することはありません。

不安よ去れ、悲しむのは止めましょう。
 憂欝なんか糞食らえ。
笑って、歌って、お気に召すままに。
 ドリーといっしょに騒ごうか。」