幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『宮廷の愛』 ロンドン古楽コンソート/デイヴィッド・マンロウ

『宮廷の愛』 ロンドン古楽コンソート/デイヴィッド・マンロウ 
The Art of Courtly Love
The Early Music Consort of London
David Munrow, conductor


CD: ワーナーミュージック・ジャパン 
WPCS-16262/4 (2016年) 
定価¥3,100(本体)+税

 

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帯文: 

ルネサンス音楽がとても新鮮に響いた今から40年前に、最も生き生きとそれを再現してみせた「マンロウの遺産」。彼の率いるこのロンドン古楽コンソートによる14~15世紀の宮廷での音楽は、『説得力のある演奏こそがオーセンティックな演奏』と言われた名盤。初版LPに掲載されていたレコーディング時の写真も多数掲載。」

 


CD 1 56:00 
ギヨーム・ド・マショーとその時代 
Guillaume de Machaut and his Age 

1.シャンソン: 優しき恋人よ、御身にこそ(ジュアン・ド・レスキュレル) 2:22 
Chanson: A vous, doue debonaire (Jehan de Lescurel)
a) two cornetts, alto shawm
b) baritone, tenor cornett, tenor kortholt
c) two cornetts, alto shawm
2.モテット: 救けて! 救けて!/ああ、どこに私のなぐさめが(ギヨーム・ド・マショー) 2:01 
Motet: Hareu! hareu! - Helas! ou sera pris confors (Guillaume de Machaut)
two counter tenors, slide trumpet
3.バラード: 恋が私を焦がれさせ(ギヨーム・ド・マショー) 2:37 
Ballade: Amours me fait desirer (Guillaume de Machaut)
tenor, fiddle, bass rebec
4.モテット: 「美」よりもなお美しく/徳と連れ立った美/意中の人を得るかどうか(ギヨーム・ド・マショー) 2:28 
Motet: Trop plus est belle - Biauté parce de valour - Je ne suis (Guillaume de Machaut)
two counter tenors, tenor
5.ロンドー: 二人きりで(ピエール・デ・モラン) 2:54 
Rondeau: Amis tous dous (Pierre des Molins)
a) organ solo
b) alto cornemuse, fiddle, bass rebec, lute
6.たとえ奥方が私を見放して…(ギヨーム・ド・マショー) 4:02 
Se ma dame m'a guerpy (Guillaume de Machaut)
7.ヴィルレー: 私のためいきは(ギヨーム・ド・マショー) 2:21 
Virelai: Se je souspir (Guillaume de Machaut)
tenor, descant recorder (1), citole, bass rebec, harp (2)
8.バラード: おみなよ、もしもそなたが(ギヨーム・ド・マショー) 2:03 
Ballade: Dame se vous m'estes (Guillaume de Machaut)
bagpipes solo
9.ヴィルレー: 佳きひとに逢っての帰り(ギヨーム・ド・マショー) 2:43 
Virelai: Quant je sui mis (Guillaume de Machaut)
tenor, chorus, bass rebec, lute
10.バラード: 私の心は「自然」と争う(ギヨーム・ド・マショー) 3:52 
Ballade: Mes esperis se combat (Guillaume de Machaut)
counter tenor, alto shawm, tenor cornett
11.ロンドー: 終りこそがわが始まり(ギヨーム・ド・マショー) 1:39 
Rondeau: Ma fin est mon commencement (Guillaume de Machaut) two cornetts, soprano cornemuse
12.ヴィルレー: 優しく美しいおみな(ギヨーム・ド・マショー) 2:21 
Virelai: Douce dame jolie (Guillaume de Machaut)
tenor, chorus, sopranino recorder (1), cornetts, rebecs, citole, tabor
13.モテット: たしかな望み/謙虚さの甘い露(ギヨーム・ド・マショー) 3:00 
Motet: De Bon Espoir - Puis que la douce (Guillaume de Machaut)
two counter tenors, alto cornemuse
14.バラード: あらゆる花々のうち(ギヨーム・ド・マショー) 6:11 
Ballade: De toutes flours (Guillaume de Machaut)
a) tenor, treble recorder (1), lute, fiddle, bass rebec
b) organ solo
15.二重バラード: テセウス、ヘルクレス、イアソンが/私は見たくもない(ギヨーム・ド・マショー) 2:19 
Double ballade: Quant Theseus - Ne quier veoir (Guillaume de Machaut)
two counter tenors, fiddle, tenor kortholt
16.舞曲: エスタンピー・レアル 第7番(作者不詳・13世紀) 2:02 
Dance: La Septime estampie Real (Anon. 13th century)
small shawm, nakers
17.ロンドー: 君が眼差しの輝きを(ギヨーム・ド・マショー) 3:18 
Rondeau: Quant j'ay l'espart (Guillaume de Machaut)
counter tenor (1), tenor cornett
18.バラード: 不可思議の蛇フィトン(ギヨーム・ド・マショー) 4:48 
Ballade: Phyton, le mervilleus serpent (Guillaume de Machaut)
tenor, two tenor crumhorns (1,2)
19.二重バラード: 武人たち、恋人たち……/おお、あらゆるメロディの華(F・アンドリュー) 2:47 
Double ballade: Armes, amours - O flour des flours (F. Andrieu)
two counter tenors, fiddle, bass rebec, organ


CD 2 49:18 
14世紀後半の前衛 
Late Fourteenth Century Avant Garde 

1.ヴィルレー: 武器をとれ、武器をとれ(グリマース) 1:52 
Virelai: a l'arme, a l'arme (Grimace)
two counter tenors, alto shawm, slide trumpet
2.バラード: フィトン、フィトン(フランシスクス) 
Ballade: Phiton, Phiton (Franciscus)
tenor, two tenor crumhorns (1,2)
3.ヴィルレー: 5:10 
Virelai:
(a)おお、優しき夜うぐいす(ボルレー) 
Hé, trés doulz roussignol (Borlet)
counter tenor (1), baritone, tenor recorder, lute, harp (1)
(b)わが優しの夜うぐいす(ボルレー?) 
Ma tredol rosignol (attrib. Borlet)
four singers, two descant and treble recorders, citole, fiddle, harp (1)
4.ロンドー: 煙をくすべる者(ソラージュ) 3:57 
Rondeau: Fumeux fume (Solaeg)
baritone, bass kortholt, bass rebec
5.バラード: 真実の男(ヨハネス・デ・メルーコ) 1:58 
Ballade: De home vray (Johannes de Meruco)
counter tenor (2), treble rebec, alto cornemuse, bass rebec
6.舞曲(イスタンピッタ): 三つの泉(作者不詳・14世紀) 4:06 
Dance: Istampitta Tre fontane (Anon. 14th century)
sopranino recorder (1), citole, crwth, nakers
7.ロンドー: いとも優しき恋人よ/わが佳きひとよ/十万遍も(ヨハネス・ヴァイヤン) 5:13 
Rondeau: Trés doulz amis - Ma dame - Cent mille fois (Johannes Vaillant)
two counter tenors, baritone
8.ヴィルレー: この歓び(ピキニ) 4:02 
Virelai: Plasanche, or tost (Pykini)
two counter tenors, two treble recorders (1,2), lute, harp (1), fiddle, bass rebec
9.バラード: 恋がわたしの心を(アントネッロ・デ・カゼルタ) 4:50 
Ballade: Amour m'a le cuer mis (Anthonello de Caserta)
tenor, bass rebec, tenor kortholt
10.モテット: 〈トリブム・クエム〉(作者不詳・14世紀) 2:14 
Motet: Tribum quem (Anon. 14th century)
organ solo
11.バラード: ああ、わたしの心は果てる(ソラージュ) 1:50 
Ballade: Helas! je voy mon cuer (Solage)
counter tenor (1), treble rebec, citole, tenor cornett
12.ヴィルレー: 時節のかたわらに(作者不詳・14世紀後半) 2:03 
Virelai: Contre le temps (Anon. late 14th century)
counter tenor (2), baritone, alto crumhorn (1)
13.カノン: 〈アンドレー・スーレ〉(マテウス・デ・ペルジオ) 1:24 
Canon: Andray soulet (Matheus de Perusio)
treble rebec, soprano cornemuse, organ
14.バラード: 〈ル・グレニュール・ビアン〉(マテウス・デ・ペルジオ) 3:05 
Ballade: Le greygnour bien (Matheus de Perusio)
treble recorder (1), tenor cornett, organ
15.バラード: わが優しき恋人(ヨハネス・シモン・アスプロワ) 2:52 
Ballade: Ma douce amour (Johannes Simon Hasprois)
counter tenor (1), fiddle, bass rebec
16.ヴィルレー: とどめよ、とどめよ(作者不詳・14世紀後半) 2:19 
Virelai: Restoés, restoés (Anon. late 14th century)
two counter tenors, tenor, alto shawm

CD 3 50:12 
ブルゴーニュ宮廷の音楽 
The Court of Burgundy 
1.ロンドー: この五月(さつき)(デュファイ) 2:37 
Rondeau: Ce moys de may (Dufay)
counter tenor (2), tenor, baritone, sopranino and two descant recorders, citole, fiddle, tambourine
2.バラード: あでびとは、塔のほとりに(デュファイ) 2:28 
Ballade: La belle se siet (Dufay)
two counter tenors, fiddle
3.ロンドー: 私はいつもそうはしない(バンショワ) 2:03 
Rondeau: Je ne fai toujours (Binchois)
treble rebec, bass recorder (1), bass viol, lute
4.シャンソン: とつぐ頃の乙女たち(バンショワ) 1:34 
Chanson: Files a marier (Binchois)
two counter tenors, sackbut (1), tenor shawm
5.ロンドー: 恋におちて(バンショワ) 6:24 
Rondeau: Amoreux suy (Binchois)
tenor, baritone, bass viol, lute
6.バラード: ジュロアモール(バンショワ) 1:55 
Ballade: Jeloymors (Binchois)
organ solo
7.ロンドー: 矢にえぐられて(デュファイ) 2:54 
Rondeau: Navré je suis (Dufay)
tenor, sackbut (1), tenor shawm
8.モテット: コンスタンティノープルの母なる聖教会の哀歌(デュファイ) 3:12 
Motet: Lamentatio Sanctae Matris Ecclesiae Constantinopolitanae (1454)
counter tenor (1), baritone, tenor kortholt, sackbut (1)
9.舞曲: バス・ダンス; ラスパーニャ(Ⅰ)(作者不詳・15世紀) 2:16 
Dance: Basse danse I La Spagna (Anon. 15th century)
cornett (1), alto shawm, sackbut (1), tabor
10.ロンドー: 故あってこそ私は嘆く(デュファイ) 4:59 
Rondeau: Par droit je puis (Dufay)
two counter tenors, tenor and bass viols
11.ロンドー: わが佳きひとの要塞を(デュファイ) 4:07 
Rondeau: Donnés l'assault (Dufay)
counter tenor (1), alto shawm, two sackbuts
12.ロンドー: いとも甘き君がまなざし(バンショワ) 2:39 
Rondeau: Vostre trés doux regart (Binchois)
tenor, bass crumhorn (3), bass kortholt
13.ヴィルレー: ああ、死なんばかりの悲しみ(デュファイ) 3:30 
Virelai: Helas mon dueil (Dufay)
counter tenor (1), tenor, sackbut (1)
14.ロンドー: よく出来るはず(バンショワ) 1:36 
Rondeau: Bien puist (Binchois)
soprano and two tenor crumhorns
15.ストローファ: 美わしの聖処女(デュファイ) 5:02 
Stropha: Vergine bella (Dufay)
counter tenor (1), tenor and bass viols
16.舞曲: バス・ダンス; ラスパーニャ(Ⅱ)(作者不詳・15世紀) 2:48 
Dance: Basse danse II La Spagna (Anon. 15th century)
cornett (1), alto shawm, two sackbuts, tabor


ロンドン古楽コンソート
The Early Music Consort of London 
デイヴィッド・マンロウ(指揮) 
David Munrow, conductor 

James Bowman: counter tenor (1)
Charles Brett: counter tenor (2)
Martyn Hill: tenor
Geoffrey Shaw: baritone
Oliver Brookes: bass rebec, crwth, bass viol, crumhorns (3), recorders (3)
James Tyler: lute, citole, tenor viol, tenor crumhorn (2)
Christopher Hogwood: organ, harp (1)
Eleanor Sloan: treble rebec, mediaeval fiddle, harp (2)
Alan Lumsden: slide trumpet, tenor cornett, tenor sackbut (1), recorder (2)
David Munrow: recorders (1), crumhorns (1), shawms, cornemuse, kortholt, bagpipes
David Corkhill: nakers, tabor and tambourine
Michael Laird: cornett (1)
Iaan Wilson: cornett (2)
Roger Brenner: tenor sackbut (2)

録音: 1972~1973年
Recording Producer: Christopher Bishop
Balance Engineer: Stuart Eltham

「Originale」シリーズ・マスター制作:杉本一家(JVCマスタリングセンター) 


◆本CD解説(マンロウ)より◆

「この《宮廷の愛》は、ギヨーム・ド・マショーの時代からギヨーム・デュファイの時代までの、フランス世俗音楽の集成である。マショーは1300年ごろに生まれ、デュファイは1474年に亡くなっているが、じっさいにここに含まれる時代の幅は100年を少し越える位のものであろう――なぜなら、マショーのシャンソンの大部分は彼の後期、1349年以後に書かれた作品なのだから。これは、古い時代の音楽史において、おどろくほど豊富で多彩な成果があげられた時期のひとつであった。この時代は、けっしてたんなるポリフォニック歌曲の発展期ではなく中世における歌曲芸術の総括期であるともいえた。マショー以前に書かれたポリフォニックなシャンソンは単純なものであり、また何としても、その数は少なかった(参考のために、このディスクは、1304年に死んだジュアン・ド・レスキュレルの手になる、こんにち残る唯一のポリフォニックな作品から始められている)。作曲家たちが――詩人たちはそれと歩みを共にしなかったが――中世時代の歌謡の定型(formes fixes)を捨てて、より自由なルネッサンス風の作品へ向かい始めるのは、デュファイ以後である。」

「このように、ゆたかで多彩な一時代を扱うにあたって、レコードを作る上のおもな難問は、選曲であった。」
「まずCD1は、ほとんどすべて、ギヨーム・ド・マショーその人にあてられた。他のあらゆる作曲家にまして彼を優遇するのは正当なことに思われる――たんにポリフォニック・シャンソンの発展史における主要人物であるばかりか、残された作品から判断するかぎり、彼はこの時代におけるもっとも豊穣なシャンソン作家なのだから。
 CD2にはマショーの直接の後継者たち、主として1370年から1410年までアヴィニョンの法王のもとで活動した人びとの作品を収めた。(中略)たとえ一人の抜きんでた作曲家はいないにしても、ひと握りの作品によってのみ知られるこの人びとの多くは、魅力と個性に満ちみちている。」
「CD3はほぼ1420年から60年までの時代にあてられ、ポリフォニック・シャンソンの発達史上にピークを形づくる二人の大家、デュファイとバンショワの作品が選ばれた。」
「個々のレコードについていえば、その中で、楽曲はできるかぎり代表的な曲目を、系統立てて選んだ。各レコードにおけるロンドー、ヴィルレー、バラードの比率については、それぞれの時代に作曲された割合を反映するようにつとめ、また、もっとも重要なタイプの紹介に力を入れた。」
「さらに、各レコードはつぎの三つのタイプによる器楽演奏を含んでいる。
 Ⅰ)ある形式をとる歌曲の器楽合奏
「Ⅱ)ある形式をとる歌曲の鍵盤用編曲」
「Ⅲ)舞曲の例」


◆本CDについて◆

ブックレット(全80頁)に濱田滋郎による解説、デイヴィッド・マンロウによる解説(訳:濱田滋郎)、マイケル・フリーマンによる解説(訳:濱田滋郎)、斉藤基史による付記、歌詞対訳(濱田滋郎、CD1 #6のみ佐藤吾郎)、図版(モノクロ)19点。

本作は1973年に三枚組LPとしてリリースされました。本作は古楽における重要作ですが、とりわけ「14世紀後半の前衛 」と題して、マショーとデュファイの間の過渡期のマニエリスム的傾向の綺想的・遊戯的・自己言及的歌曲を収録しているCD2が興味深いです。
CD1 #6「たとえ奥方が私を見放して…」に関しては、本CDブックレットの記載によると「当アルバムと同時に録音が行なわれたが、収録時間の関係で、これまでのLP及び国内盤CDには収録されていなかった」(斉藤基史)ということです。

★★★★★


Douce dame jolie

youtu.be

 

Istampitta Tre fontane

youtu.be

 

Fumeux fume

youtu.be

 

「アヘンのみはもくもくと煙をふかす
もくもくとものをかんがえる 
煙にまかれてもの思う
アヘンのみはもくもくと煙をふかす 
なぜなら彼は納得ゆくまで 
アヘンをふかして楽しんでいる 
アヘンのみはもくもくと煙をふかす 
もくもくとものをかんがえる。」 


デイヴィッド・マンロウによる解説より: 

「ロンドー《煙をくすべる者 Fumex fume》は、アメリカの音楽学者ウィリ・アーベルによって「14世紀におけるクロマティシズム(半音階趣味)のユニークな例」と評された作品だが、ある奇妙な文人たちの徒党に関連をもっている。1360年代から’70年代ににかけてフランスに現われた風変りな文人あるいはボヘミアンの一団は、みずから〈アヘンのみ連中 fumeurs〉と称していた、詩人デシャン Deschamps は、この人びとがどのようにその気まぐれとユーモアを発散したか、またどのように“盛大に煙を吐いた”かを描写している。この歌は、おそらく彼らの寄り合いでじっさいに歌われたことがあるにちがいない。」