『オスマンの響き~トルコの軍楽』
Turkish Military Band Music of Ottoman Empire
ワールド・ミュージック・ライブラリー 1
CD: キングレコード株式会社
KICC 5101 (1991年)
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427)
帯文:
「強烈なリズムとアンサンブル!ジェッディン・デデンを中心に全21曲を収録。これぞオスマン・トルコの栄光。」
帯裏文:
「オスマン・トルコの栄光の陰には、軍楽メヘテルハーネがあった。モーツァルト、ベートーヴェンにも多大な影響を与えた強烈なリズムとアンサンブル。コマーシャル、ドラマで一躍有名になった“ジェッディン・デデン”以下21曲を収めた決定盤。」
オスマンの響き~トルコの軍楽
Turkish Military Band Music of Ottoman Empire
1.古い陸軍行進曲「ジェッディン・デデン」(祖先も祖父も) 2:26
Old Army March "Geddïn Deden" (Your forefathers)
2.陸軍行進曲 3:24
Army March
3.祖国のマーチ 2:10
Patriotic March
4.テクビル行進曲 1:46
Tekbïr and Battle March
5.若いオスマン 3:05
Young Osman
6.シヴァストポル行進曲 2:53
Sïvastopol March
7.前奏曲Ⅰ 1:25
Prelude I
8.前奏曲Ⅱ 1:35
Prelude II
9.ジハード(聖戦) 2:22
"Cïhadi" (Holy War)
10.行進曲「勇気満ちて」 3:07
March with Full Courage
11.ズルナ・タクシーム~エステルゴン城 4:45
Zurna Taksïm ~ The Estergon Castle
12.軍隊行進曲 2:12
Military March
13.行進曲「歴史のページをめくる」 3:49
March "Turn the Pages of the History"
14.シュレイマン王子の行進曲 2:53
March of Prince Süleyman
15.サズ・セマイ(器楽) 2:06
Saz-Semaï (instrumental Music)
16.エステルゴン城 3:06
The Estergon Castle
17.古い陸軍行進曲「ジェッディン・デデン」~軍楽の祈り 2:16
Old Army March "Geddïn Deden" ~ Prayer for the Military Band
〈古典音楽〉
18.ケメンチェ独奏「ベステニガル旋法のタクシーム」 4:30
Kemençe Solo "Taksïm in Bestenïgâr Mode"
19.ケメンチェ独奏「イスファハーン旋法のタクシーム」 3:00
Kemençe Solo "Taksïm in Isfahân Mode"
20.ケメンチェと歌「バラの園」(ニハーベント旋法) 6:32
Kemençe and Song "Rose Garden" (in Nihâvend mode)
21.ケメンチェと歌「路上の夜」(キュルディリ・ヒジャーズカル旋法) 4:05
Kemençe and Song "Stayed on the Road for You" (in Kürdili Hicazkâr mode)
オスマン・トルコ軍楽隊 (1~17)
The Military Band of the Old Turkish Army
ケメンチェ: ハルドゥン・メネメンジオール (18~21)
Kemence: Haldum Menemencioglu
歌: エメル・メネメンジオール (20、21)
Song: Emel Menemencioglu
現地録音
小柴はるみ (1~10: 1973年/11~12: 1969年)
小泉文夫 (13~17: 1971年6月/18~21: 1977年4月)
Cover Design: 美登英利
Cover Photo: 女人双偶像(アナトリア文明博物館蔵・中近東文化センター提供)
◆本CD「楽曲解説」より◆
「このディスクでは、主に15世紀以来の伝統を今に伝える軍楽と、クラシック・ケメンチェによる4種類の旋法を紹介した古典音楽を収めてある。
トルコの伝統的軍楽メヘテルハーネ Mehterhane は、詳細は不明だが、紀元前に中央アジアに発するとされる。7-8世紀の記録にも兵士が手にする楽器の名などが見られる。」
「トルコでは、新しい土地を占領すると、そこで得た奴隷を軍隊に編入し、彼らを統率するために報酬を与えたり、さまざまな規則や法律が整えられて、非常に近代的な組織を誇っていた。その組織化の一手段が軍隊であり、トルコが中央アジアを席巻し、西アジアまで勢力を拡げた一つの原因が軍楽隊であるとまで、考えられている。従って、後には他の民族もこれを取り入れるようになり、トルコの軍楽は西洋の軍楽隊やブラス・バンドの基礎となった。18世紀のモーツァルトやベートーヴェンの時代には、ヨーロッパで非常に流行し、いわゆるトルコ・マーチの原型になったが、一部には逆に西洋の軍楽から影響を受けた点もあり、その基本的性格は変わらないとしても、ある程度の変化、発展を遂げている。」
「さて、古典音楽については18.-21. にケメンチェ Kemençe の演奏を紹介する。これは小さな弓奏楽器であるが、膝の上に立て、弦の横に左手の爪を当てて演奏する。そのために指の先で垂直に弦を押さえるのとは異って、ポルタメントや微少音程など微妙な表情を出すことが出来る。(中略)ここに挙げられた旋法は、いずれもトルコ音楽の代表的なものである。」
「18. と19. のタクシームとは即興演奏の形式で、演奏者の自由な発想によって、その旋法に基づいた旋律型を組み合わせ独奏する。
20.と21.は愛をうたった歌曲である。(中略)最初は18世紀の詩人、ネディン Nedin の作品「バラの園」に、演奏者自身が曲を付けたものである。(中略)二曲目の歌は黒海沿岸のトラブゾン地方でうまれた作曲家ハフズ・ユスフ・エフェンディ Hafjz Yusuf Efendi (1857-1925)が1881年に作曲したものである。アクサク aksak という8分の9拍子(2+2+2+3)のリズム型を持つ。」
◆本CDについて◆
ブックレットに「楽曲解説」(小泉文夫/小柴はるみ)、英文解説、写真図版(モノクロ)4点、「ワールド・ミュージック・ライブラリー」CDリスト、地図2点。
1987年のCD(「Ethnic Sound Collection」5)の再発です。
小泉文夫録音の#13-21は、「世界の民族音楽シリーズ」LP『トルコの音楽』(1978年)の「第2面」(サイドB)をそのまま持ってきたものなので、ちょっと統一を欠いた構成になっています。
軍楽というのは妙なもので、全体主義的なもの(小学校の運動会や「集団行動」なども含めて)に対する反発と同時に、捨て身なベルセルカー的なものに対する異様な懐かしさのようなものを感じてしまいますが、それは機能的な人間社会に対する反発と、人間社会を脱構築する動物的本能に対する郷愁といってもよいので、基本的には同じものです。鬼気迫る、というか、鬼哭啾啾な「ジェッディン・デデン」などは、生者と戦う満身創痍の亡霊の行進曲として耳を傾けると趣が深いです。
軍楽だけだったら「★★☆☆☆」ですが、「ケメンチェ」がすばらしいので「★★★★☆」です。
turkish military band music ottoman empire
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