幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

ポール・ヒリアー 『プロエンサ/中世トゥルバドゥールの恋歌』

ポール・ヒリアー 『プロエンサ/中世トゥルバドゥールの恋歌』
Proensa
Paul Hillier


CD: ポリドール株式会社 
ECM NEW SERIES
JOOJ 20301 (1989年) 
税込定価¥3,008(税抜価格¥2,920) 

 

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帯文: 

「中世南仏プロヴァンス地方(当時の言葉でプロエンサ)にて活躍したトゥルバドゥール。
俗に「恋愛の発明者」といわれる詩人/音楽家であった彼らの存在は、文明史・音楽史上極めて重要である。ヒリヤード・アンサンブルのリーダー=ポール・ヒリアーの歌唱は、
透明な叙情美を湛え、現代の喧噪と隔絶した不思議な静寂へと聴き手を誘う。」


《プロエンサ/中世トゥルバドゥールの恋歌》 
Proensa 

1.本当のからっぽについて (ギヨーム9世/1071‐1127) 4:48 
Farai un vers (Guihelm IX)
2.栄光の王よ (ギロー・ド・ボルネーユ/1165-1210活躍) 9:26 
Reis glorios (Guiraut de Borneil)
3.復活祭の時節は (ライモン・ド・ミラヴァル/1185-1213活躍) 11:34 
Aissi cum es genserpascors (Raimon de Miraval)
4.先日 生垣のそばで (マルカブリュ/1128-1150活躍) 9:45 
L'autrier una sebissa (Marcabru)
5.私を失ってしまったぞ (ベルナール・ド・ヴァンタドゥール/1145-1180活躍) 12:06 
Be m'an perdut (Bernart de Ventadorn)
6.陽の光に向かい (ベルナール・ド・ヴァンタドゥール) 8:37 
Can vei la lauzeta (Bernart de Ventadorn)
7.プロヴァンスに戻って (ペール・ヴィダル/1175-1205活躍) 9:27 
Pos tornatz sui (Peire Vidal)
8.歌をひかえねば (ギロー・リキエ/1254-1292活躍) 4:21 
Be.m degra de chantar (Guiraut Riquier)


ポール・ヒリアー: バリトン
ティーヴン・スタッブズ: リュート&プサルテリー 
アンドリュー・ローレンス=キング: ハープ&プサルテリー 
エリン・ヒドリー: ヴィエール 

Paul Hillier: voice
Stephen Stubbs: lute & psaltery
Andrew Lawrence-King: harp & psaltery
Erin Headley: vielle

A Theatre of Voices project

録音: 1988年2月 シュトゥットガルト

Digital Recording, February 1988, Stuttgart
Engineer: Peter Laenger
Cover Photo: Werner Hannappel
Cover Design: Barbara Wojirsch
Produced by Manfred Eicher

An ECM Production


◆本CD解説(ポール・ヒリアー)より◆ 

「トゥルバドゥールの歌は、あるひとつの文化をしのばせるよすがとなり、またそのなごりを最もよくとどめているものであるが、その文化がひとたび花咲いたのは、かつてのローマの属州(プローウィンキア)で、今日南フランスとなっているところ、つまりはプロヴァンス、それが往時の言葉でいうところのプロエンサである。
 このアルバムは、かの時代のしわくちゃな稿本から詩と音楽とを取り出し、それを歌のかたちにしてみたものである。たしかに、その音楽は時の流れの底に深く沈みこみ、実際どのように歌が歌われていたのか正確には知る由もない、それは充分承知の上である。とはいえ、トゥルバドゥールの歌はさまざまな理論や手のこんだ音楽上の脚色の邪魔を受けずに、そのままの姿で、充分やっていけるものなのだ。」
「楽器を参加させることは、どの作品にも必要不可欠というわけではないのだが、ここではいわば声の引き立て役として用い、各詩節のあいだには間奏を入れ、歌と歌をつないで、時には、ある音型を肉付けして背景をなす伴奏となるようにした。」

「トゥルバドゥール自身については、「伝記」 vida がその伝説的な姿を、わずかながら伝えてくれる。」
「マルカブリュ(1128-1150活躍)はガスコーニュの人、マルガブリュナという名の貧しい女のせがれであった。この男は、人々の記憶にある最初のトゥルバドゥールのうちのひとりであった。」
「(異本によれば)マルカブリュはある金持ちの家の戸口に捨てられていて、彼が誰なのか、どこから来たのか、誰も知らなかった。…セルカモンというトゥルバドゥールとよく一緒に暮らしていた…非常に高名であり、その歌は世に知れわたっていた。…しかし、この男に悪口をいわれたギュイエンヌの女たちに殺された。」
「ペール・ヴィダル(1175-1205活躍)はトゥールーズの人、毛皮屋の息子であった。彼はこの世の誰よりも巧みに歌った。また、かつてこの世に生まれ出た者のうち最高に頭のおかしい男のひとりであった。というのも自分の好むことや望むことは何でも実現すると信じていたからである。いとも達者に詩をつくり、たいそう美しい旋律をものし、武勲のことであれ愛についてであれ、他人の悪口を言うにつけても、まったく気違いじみたことを語るのだった。
 サン=ジルのある騎士が、ペールの舌を切ってしまう。自分の妻の恋人になった(とふれこんだ)からである。傷が癒えると、ペールは海を渡った。やがてギリシア女を娶り、連れて帰ってきたが、この女はコンスタンチノープルの〔東ローマ帝国の〕皇帝の姪で、その夫である自分こそ帝国の正当な継承者であると、ペールは思い込んでいたのであった。(中略)この男はいつも名馬を乗り回し、皇帝のお付の従者たちを従えていた。自分ほどすばらしい騎士、これほど女に愛されている男はこの世にいないと思っていた。」


◆ペール・ヴィダル「プロヴァンスに戻って」より◆ 

「罪を犯さないのに悔悛の苦行をし 
そして悪いことをしないのに許しを乞い 
そして何もないところからやさしい贈り物を 
そして怒りから好意を引き出し 
そして涙からは全き喜びを 
そして苦味からは甘き味わいを 
そして恐れによって勇敢になり 
そして失うことで得ることを知り 
そして負けて勝つ 

さもなければ救いが得られなかったかも知れない」


◆ギロー・リキエ「歌をひかえねば」より◆ 

「私の歌は私にとって魅力を持ちえない
私の歌には陽気さが欠けているからだ 
だが神は私にこんな能力を与えて下さった 
歌いながら私は辿れる 私の狂気を 
分別を 喜びを 絶望を 
私を苦しめたものを 本当にためになったことを 
歌以外ではまともなことはほとんど何も言えない私 
でも私はあまりにも来るのが遅かった」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全24頁)にポール・ヒリアーによる解説(訳:吉村恒)、歌詞対訳(細川哲士)。

楽譜が現存しない#1と#8は朗読です(#1は楽器による伴奏付、#8は朗読のみ)。そういうことも含めて、なにより必要最小限な伴奏によるバリトン独唱なので、たいへん渋い、いぶし銀のような作品になっています。

★★★★☆ 


Ventadorn: Can Vei La Lauzeta

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