幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『田園の交響詩~チルボンのガムラン』

『田園の交響詩~チルボンのガムラン』 
The Gamelan of Cirebon 
ワールド・ミュージック・ライブラリー 30 


CD: キングレコード株式会社 
KICC 5130 (1991年) 
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427) 

 

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帯文: 

「ジャワともスンダとも異なる不思議な魅力に
溢れたチルボンのガムラン
柔らかい鉄のゴングの響きと田園的な掛声のリズム。」


帯裏文: 

「あまりにも柔らかい鉄のゴングの響き。なんとも田園的な掛け声のリズム。西ジャワと中部ジャワに挟まれたチルボンで育まれた独特のガムランは、スンダともジャワとも異なる、不思議な魅力に溢れている。」


1.ジパン・ワリック 8:27
Jipang Walik 
2.キセル 8:10 
Kiser 
3.ドゥルマヨン~ペンドロン~オヨン・オヨン・バンコン 17:38 
Dermayon~Bendrong~Oyong-oyong Bangkong
4.クンバン・スンサン~オウェット・オウェタン~ロンタン・グデ 24:20 
Topeng Panji: Kembang Sungsang~Owet owetan~Lontang Gede


ハンドヨ、アリ・ウィジャヤ、スジャナ・アルジャ、ケニ・アルジャ、R.Y. ユスフ、サンドゥルッ、シドゥム・プルマナワティ、ボドン、ダルジャ、アムディ、ラシタ・チャス、マスディ、ヨヨ・アンドヨ・スディブヨ、ワハジョノ、スケンドゥリ 
Handoyo, Ali Wijaya, Sujana Arja, Keni Arja, R.Y. Yusuf, Sandrut, Sidem Permanawati, Bodong, Darja, Ammuddy, Rasita Cas, Masdi, Yoyo Andoyo Sudibyo, Wachjono, Sukendri

1989年6月1日、東京、アオイスタジオにて録音 
Recorded June 1, 1989 at the Aoi Studio, Tokyo
Producer: Minoru FUkuda
Director: Kyoji Hoshikawa
Engineer: Hatasuro Takanami
Coordinator: Fumi Tamura

Recorded by King Record Co., Ltd.

Cover Design: 美登英利 
Cover Photo: 仮面バンジ(松井康雄 撮影・福岡まどか 蔵) 


◆本CD解説(田村史)より◆ 

ガムランは、ジャワの他の地域やバリにもあり、それぞれ異なった特性を持っている。チルボンのガムランは、躍動感溢れるリズム、奔放に挿入される掛け声、メリハリの効いた太鼓の奏法、などに特徴がある。幸福感と酩酊感を誘うアンサンブルなのである。用いる音階は、プラワ Prawa (他地域のスレンドロ Slendro に対応する名称)とペロッグ Pelog の二つだが、一つの種類の芸能にはどちらか一方の音階のみを充てるのが普通である。プラワは、半音を含まない、日本の民謡音階などに近い五音音階で、ペロッグは沖縄音階にとてもよく似た五音音階である。ここに収録されているのは、プラワの鉄製のガムランの演奏である。アンサンブルでは、サイズの違う三つの吊りゴングと瘤が上を向くように置かれた二セットのゴング―クブルック Kêbluk・クレナン Klenang―が一定の法則に従って曲の枠組みを作り、音階に調律されたゴング・チャイム―ジュングルン Jêngglung―が骨格となるメロディーを奏し、やはり音階に調律された小型のゴング・チャイム―ボナン Bonang―と鉄琴のサロン Saron 四台が派手な変奏メロディーを繰り出し、クマナック Kêmanak が音と音の隙間を細かく埋めていく。そして、三もしくは四台の太鼓―クンダン Kêndang―を一人の奏者が操って、アンサンブル全体を操縦していくのである。そして、金属片を重ねた賑やかな音のクチュレック Kêcrek が、リズムにさらにメリハリを付け、踊りの動きをサポートする。頻繁に聞かれる元気の良い掛け声―スンガカン Sengakan―は、演奏者が興に乗って投げ込むものである。」
「曲目の 2 と 3 には、奏者の掛け声の他に、女性のソロが入る。これを、プシンデン Pesinden と呼ぶ。歌詞と曲との関係は相互に専属的なものでなく、さまざまな歌詞を自由に選択して、即興的に歌い込んでゆくものである。」

「ジパン・ワリック 
 タユバンや他の芸能の、開始の音楽として演奏される曲である。(中略)曲名の Jipang は果物の名で、Walik は「逆さの」、の意である。Jipang という別の曲の、少しちがったバリエーションといった意味である。」
キセル 
 この曲も、1.と同様にポピュラーな曲で、(中略)曲の名は、作曲者である有名なダランの名に因んでのものである。」
「ドゥルマヨン~ベンドロン~オヨンオヨン・バンコン 
 形式も規模も由来も異なる三曲が続けて演奏される。(中略)曲名の Dêrmayon は、チルボンの隣の郡 Indramayu に因んで付けられている。Bendrong の意は確かではないが、非常によく知られた曲である。Oyong-oyong Bangkong は、「蛙の泳ぎ」といった意で、同名の民謡を元に作られている。」
「トペン・パンジ:クンバン・スンサン~オウェト・オウェタン~ロンタン・グデ 
 トペンの音楽である。仮面舞踊劇トペンは、チルボンの芸能の中で最もユニークな、最も素晴らしいものであると言っても過言ではないだろう。(中略)ここに収録されているのは、チルボンの北西に位置するスランギット Slangit という村のトペン・ババカン Topeng Babakan の、最初の踊り、“パンジ Panji”、の音楽である。(中略)演劇的基盤となっているのは、ヒンズー・ジャワ文化最盛期の東部ジャワに起源を持ち、東南アジアに広まった、パンジ物語である。主人公であるパンジは理想の美丈夫であり、失踪した許嫁を探して放浪する悲劇の王子である。白色の清楚で神秘的な仮面によって表され、その踊りは静かで内面的な美しさを秘めたものである。」


◆本CDについて◆ 

ブックレットに「解説」(田村史)、英文解説、写真図版(モノクロ)4点、地図(「CIREBON」)1点。「ワールド・ミュージック・ライブラリー」CDリスト、地図2点。

★★★★★ 


Jipang Walik

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