小杉武久
Takehisa Kosugi
『キャッチ・ウェイブ』
Catch-Wave
CD: Marketed by SHOWBOAT/sky station Inc.
Special Products A Service of Sony Music Entertainment(Japan)Inc.
SWAX-502 STEREO(TDCD 90622) (2002年)
¥2,800(税抜)
帯文(オリジナルLPのものと同文):
「肉体と、さまざまな波動との即興的な出会いが生んだ
マグネティック・ライヴ・エレクトロニック・ブルース(引用者注:「ブルース」に傍点)!!
キャッチ・ウェイヴ/小杉武久
ヴァイオリン、声、電子メディア、光、風によるインプロヴィゼーション――――
あらゆる音楽にとっての最前線を果敢に旅する小杉武久、初めてレコード・メディアに登場!!」
裏ジャケより:
「キャッチ・ウェイブ、或いは謎ときとしての音楽。光速をもつ音と沈黙、音速をもつ光と影。」
「SOUNDS SPEEDING ON LIGHTS, LIGHT SPEEDING ON SOUNDS
MUSIC BETWEEN RIDDLES & SOLUTIONS」
「"the deaf listen to sounds touching, watching,……
the blind watch sight listening, smelling,……"」
●Side A――26:35
マノ・ダルマ’74
mano-dharma '74
時空に変化するメディアにおけるソロ・インプロヴィゼイション
an excerpt from a meta-media solo improvisation performed by Takehisa Kosugi
「ひとりで仕掛けひとりで演奏しているような音楽。ひとりの演奏者と様々なメディアの波動の仕掛け。しかしそれを支えているものは微風や光や見えない電磁波やゆっくりした不可聴の電子のうねり。知覚の想定を超えた無音の領域……。時空は知覚(意識)にとって予期されぬ出来事として仕掛けられている。知覚が〈波動〉を〈合成〉しようとする意識、しかし、どうやって〈変化〉そのものを所有することが出来るのか。ある想定のもとに演奏が旅立つ。だが彼にとってこれまで〈無〉であった世界がそこで聴かれることにより想定がくつがえされる。意識にとって「無」であり「影」であるような沈黙の部分がそのようにして響き出す。あらかじめの想定を超えた音楽としての即興演奏。「意識」が「無意識」からの音をたえず聴くこと。そのようにして意識をメタ(meta)化すること。意識が背おっている“影”の部分に光をあてること。ある影に光があてられるとその影は“カット”されて消える、しかし切りとられた影の向うに又別の影が……。そこに又光をあて…又…。そのような意識が資産として所有したものを無意識の無産の状態にたえず投げかえすこと、そのような意識と無意識の間のキャッチ・ボール。〈永久の無産革命〉そのプロセスの〈meta意識〉としてのインプロヴィゼイション〈キャッチ・ウェイブ〉、意識の無産化へのプロセスとしての〈mano-dharma=思念の道、或いは理法〉そのような無産の状態を産むための意識をはらむこと。そのコンセプト(はらみ)を資産にすること。だから所有の個的情念により音たちが(作品として)残されるのはなにか無なしい。個的情念の資産をぞろぞろひっぱってきめられ、資産化されたレールの上をしか走り得ない音楽は決して鳥のように無産の空間をはばたくことはない。又そのような意識で育てられた鳥は確実に「石」にぶち当って死ぬだろう。花が死に鳥が死に風が死に、月が死ぬ。所有された花はすぐ死ぬ。コンクリートの建物の中で私有されたツバメの飛行は可能か。風が所有されると腐る。大地の資産が空中にばらまかれたとき月は姿を消す。そのようにして音たちも「かこわれた」詩、無産の音たちの復讐を受けるだろう。花や鳥や風や月が「石」を通過するそのような意識のメタ化。しかしそのプロセスはそんなにたやすくないだろう。エゴの内にはらまれる所有の情念、それを、想定を超えた状況の中でいかに解きはなつか。いかにして“情況(引用者注:「情況」に傍点)の音楽”を作用させるか。
メディアをこすればメッセージが現われ意識をマッサージする。その時、意識はメタ化されるか。そのこすり合いの反すう、フィードバックのうちにメディアも又、メタ・メディアであり得るか。
1975年1月 小杉武久」
●Side B――22:31
ウェイブ・コード #e-1
wave code #e-1
ソロ唱者小杉武久による3重演奏
triple performance by a solo vocalist: Takehisa Kosugi
「A) aryo-n
aryu- aru-a-n
aryu-n ariyue-n
ariyu-n
B)
bishi
bashi
D) dosu-n
dohyan
E)
efef ef
eff efiefo
fwa
F) fuwa-n
fuwa
fuwa
G) gokugoku
goku
gokun
H)
hira hira
hirari
I) i---i-au---n
i-n i---n
i-ai-u-n
J) ji-
ji-n ji---n
ji-n
K) ka-
ka-
ka-
L)
lua-n lui-n
lu-n
lo---n
M) mokumoku
mokumokumoku
niya- niya-go
N)niya-n
O) ororon orroron
ororon
ororon
P) pika
pikapika
pikari pikapika
pikari
qaqaqa
Q) qaqa
rinrin
R) riri-n ri-n
S) shin shin shi-n
shi-n
T) tatatatatata
ufa uhiufa
U) uhyo-
uhiuhi uhi-
vio-n
V) via---n viyowa-n
via-n viau-n
vee-n
weivweive-iv
W) we-iv w-e-i-v we-v
we---v
xixixixi
X) xexi
xixi xexexe
xuxi
Y) yu---n
yo-n yo-n yua-n
ya-n yui-n
Z) zep zep zapzap
zabu-p zabop
zap pza-p」
「●以下26例の音声信号としてある
A)ある物体の回転
B)ある物体の強打
C)鉱物性の小物体のふれ合い
D)重い物体のぶつかり
E)犬のある種の状態
F)軽い物体が漂う
G)液体を飲む
H)風に動く軽い物体
I)ある物体が空中を通過する
J)鳴くセミ
K)鳴くカラス
L)影が通過する
M)煙
N)鳴くネコ
O)涙する人
P)光の点滅
Q)ある種の笑い
R)鳴るベル
S)夜のしじま
T)走るひと
U)ある種の興奮
V)ある種の楽器演奏
W)ある種の波動
X)花の恋の対話①
Y)花の恋の対話②
Z)Z氏のある情感」
「物事=無産の状態が音の信号に変換されてあるものとしての擬態語 onomatopoeia。集合的な意識の中でつちかわれたものたち。そして〈私〉の中に〈私的〉に現われた無意識からの所産であるところの信号あるいは暗号(コード)。そのようなものとしてあるこの26例はアルファベット文字の24に対応している。したがって暗号化された音たちの発音により、その音たちが対応している文字に解かれるような謎解き遊びも出来る。
これは1972年に“仕掛け”られた「piano-wave-mix」(高橋悠治のために)の部分としてもあり、ピアニストの場合には、キーボードに対応する音の暗号として企画されているが、イヴェントを伴った声のパフォーマンスとしても自立しているものである。ここでのヴァージョンはそのオリジナルなテキストに変更が加えられた第2 version である。又ここでの演奏はエレクトロニック回路(マノ・ダルマ’74と同じ)を通過することにより、さらに変更(メタ化)が加えられた。そしてある限定された時間(20―25分)に行なわれる事のために、26例は3回に分けて演奏され、2回目は1回目の演奏を聴きながら、3回目は1回目と2回目の重複された演奏を聞きながら(再生による)という風に行なわれている。この複合的な操作のプロセスでのメタ・メディアとの出会いの結果、あらかじめ決められた暗号は混乱を起し、複合意識によって変更をせまられ、26項目のあるものはその通りには行われていない。そしてその変更された暗号 code は記されなかった(引用者注:「記されなかった」に傍点)ので全て忘却のうちにある。
1975年1月 小杉武久」
■録音データ
プロデューサー:吉村あき子/エンジニア:鈴木智雄、辻暁
Producer: Akiko Yoshimura Engineer: Tomoo Suzuki & Satoru Tsuji
録音年月日と場所:1974年9月16、17日 CBS・ソニー 第1スタジオ
Recorded Date: September 16, 17, 1974 Location: CBS/Sony Studio No. 1
協力:藤田育夫(Voltage COntroled Filter製作)、吉田秀樹、川口義晴、間章
Many thanks to Messrs. Ikuo Fujita, Hideki Yoshida, Yoshiharu Kawaguchi & Akira Aida
ジャケット写真:藤井保/ジャケット・デザイン:寺田有恒&石塚静夫
Cover Photo: Tamotsu Fuji Cover Design: Aritsune Terada & Shizuo Ishizuka
additional credits
Digitally remastered by 阿部允泰 at SONY MUSIC STUDIOS TOKYO
監修:田口史人
◆本CDについて◆
紙ジャケ(厚紙)仕様。オリジナルLP(1975年、CBS・ソニー、SOCM-88)はシングルジャケでしたが、本CDでは見開きジャケになっていて、中ジャケには演奏中の小杉の写真(モノクロ)が使用されています。オビは表裏ともにLP時のデザインを再現しています。投げ込みライナーに湯浅学による解説、「小杉武久 活動歴(抜粋)」(1960年から2001年まで)、「additional credits」。オリジナルのクレジットは小杉によるライナー等と共に(極小文字で)裏ジャケに記載されています。
★★★★☆
Mano Dharma '74
Wave Code #E-1
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