幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

高柳昌行 New Direction  『live independence』

高柳昌行 New Direction 
『live independence』 


CD: P.S.F Records 
シリーズ: J. I. コレクション
PSFD-57 (1995年) 
¥2,884(税込)/¥2,800(税抜) 

 

f:id:nekonomorinekotaro:20210924120914p:plain

 

高柳昌行 NEW DIRECTION/live independence 

1. Herdman's pipe of Spain 
2. Mass Projection 

1970.3.11, 3.12. ステーション'70 


高柳昌行(g) 
吉沢元治(b) 
豊住芳三郎(ds)

Produced by 生悦住英夫・斎藤安則 
Directed by 石谷仁(Selfportrait) 
Front Photo by 五海裕治 
Recorded by 石谷仁  
Mastered by 五十嵐輝明 
Masatering Assisted by 根本加寿子 
Designed by 加藤理恵(EDICOM) 


◆本CD解説(清水俊彦)より◆ 

「1970年、高柳昌行が吉沢元治(b, cello, folk pipe)と豊住芳三郎(ds, perc)から成るトリオ……このユニットはその前年に、フリー・フォームによる高柳の初のリーダー・アルバム『INDEPENDENCE』を吹き込んでいる……を率いて行った〈ステーション'70〉でのライヴ演奏のドキュメントを、なんと四半世紀後にアルバム化したこの『LIVE INDEPENDENCE』は、おそらく彼のディスコグラフィーの中でも極めて重要な位置を占めるだろう。
 その理由は少なくとも二つある。一つは、彼がピアノとの結びつきから、そして暗黙のうちに調性音楽の歴史全体からギターを引き離し、音色やハーモニックな可能性や弦の新しいテクニックを開発しながら、ポスト・ウェーベルンサウンド・コンセプションともいうべきものを、セリーの構造を通してではなく、ジャズのエッセンスであるリズミックな強調を通して、単一の楽器に完全に適用したということを、『INDEPENDENCE』におけるよりもさらに説得力豊かに実証していることである。もう一つは、このコンセプトを集団的規模にまで拡張するために創出され、フリー・フォームへの自分自身の方法論的基盤をなすことになる〈Gradual Projection〉(漸次投射)と〈Mass Projection〉(集団投射)……両者はすでに『INDEPENDENCE』でもその萌芽をみせている……をより明確に打ち出していることである。」
「このアルバムは2曲のみから成っており、いずれのタイトルも『INDEPENDENCE』で用いられている。しかし、演奏そのものはライヴにふさわしく長時間にわたっており、そのディスクールは〈一にして多〉であるような力のイメージを喚起しながら、実際に、そして決定的に多義性をもつに至っている。
 『Herdsman's pipe of Spain』では、吉沢のフォーク・パイプがフィーチャーされており、そこには(中略)テーマらしきものが垣間見られるが、それは〈起りうるもの〉の中でほのめかされるだけであり、したがってそれは〈生成テーマ〉と呼んだ方がふさわしいだろう。つまり、3人のインプロヴァイザーたちは、つねに探究の見通しと成功した方法の系統的な表出を対比させ、さまざまな層やテクスチャーを漸層的に結びつけ、積み重ねることによって、新しい音楽的テーマが発生するような総合体をつくり出している。そうした意味で、この演奏はまさしく〈Gradual Projection〉の名に値するものと言えるだろう。
 一方、『Mass Projection』では、高柳は1曲目でのアコースティック・ギターに代わって、エレキ・ギターとそれに付属するいくつかの装置を用いており、ハウリングディストーションを前面に押し出しているという点で、晩年のあのソロ・ノイズ・インプロヴィゼーションをいち早く暗示しているかのようだ。」


◆本CDについて◆ 

ブックレットに清水俊彦による解説「『LIVE INDEPENDENCE』について」。

同じシリーズで出ている『call in question』と同日の録音です。
「Gradual Projection」と「Mass Projection」、それぞれ20分を越える二つの演奏が収録されていますが、スピードと強度が追求される「Mass Projection」の方向性だと、吉沢元治のベースの持ち味である叙情性と内面性が発揮される余地がなく、またここではほとんどギターとドラムのデュオ状態で、第二の弦楽器の必要性がないので、吉沢がやめさせられたのもむべなるかなという気がします。

★★★★☆ 


Mass Projection

youtu.be

 

nekonomorinekotaro.hatenablog.com

nekonomorinekotaro.hatenablog.com

nekonomorinekotaro.hatenablog.com