『ベルク: 室内協奏曲/ピアノ・ソナタ/4つの小品』
バレンボイム(ピアノ)/ブレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン
CD: ポリドール株式会社
シリーズ: 20世紀のクラシック 20th Century Classics
F28G 50494/423 237-2
¥2,800
アルバン・ベルク
Alban Berg
(1885-1935)
ピアノ、ヴァイオリンと13の管楽器のための室内協奏曲 (1923-25)
Chamber Concerto for Piano and Violin with 13 Wind Instruments
1.Thema scherzoso con variazioni 7:37
2.Adagio 12:09
3.Rondo ritmico con introduzione 10:13
クラリネットとピアノのための4つの小品 作品5 (1913)
Four Pieces for Clarinet and Piano, op.5
4.Mäßig 1:20
5.Sehr langsam 1:56
6.Sehr rasch 1:01
7.Langsam 3:02
ピアノ・ソナタ 作品1 (1908)
Sonata for Piano, op.1
8.Mäßig bewegt 11:30
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
Daniel Barenboim, piano
ピンカス・ズーカーマン(ヴァイオリン)[#1-3]
Pinchas Zukerman, violin
アントニー・ペイ(クラリネット)[#4-7]
Antony Pay, clarinet
アンサンブル・アンテルコンタンポラン
指揮: ピエール・ブレーズ[#1-3]
Ensemble Intercontemporain
Pierre Boulez, Conductor
録音: 1977年6月 パリ
プロデューサー: ギュンター・ブレースト
ディレクター: ヴォルフガング・シュテンゲル
レコーディング・エンジニア: クラウス・シャイベ
データ: 1977年6月 パリ、サル・ド・ラ・ミュテュアリテ
解説書表: H. マッティース
◆本CD解説(ペーター・ペーターゼン/訳: 恩地元子)より◆
「1907年から08年にかけて、ピアノ・ソナタ作品1を作曲したとき、アルバン・ベルクはまだアルノルト・シェーンベルクの弟子であった。シェーンベルクは、未来の作曲家たちに「作曲のトレーニング」だけでなく自由に作曲することに努めるよう勧めていた。このように勧められてベルクは、3楽章になるはずであったピアノ・ソナタの第1楽章を作曲した。そののち、「彼の頭になかなか適当なものが思い浮かばない」ときに、シェーンベルクは「ではあなたは、言われるべきであったことはすべて、言ってしまったのでしょう」と言ったのである。この逸話は、20世紀初めの多くの作曲家の考えを特徴的に表している。(中略)作曲家は、ある作品のあらかじめ作られた構想を、空虚な形式と伝統的な語法で実現するよりは、黙っていることを望むのだ。そのようなわけで、ベルクのソナタは、1楽章のみで終わっている。」
「《室内協奏曲》は、作曲者の私的な部分と明らかに関係がある。そのようなことが確認されたからと言って、音楽が事情に通じた幾人かの人々の私的なものだということにはならない。それどころか、ベルクにおいて(そして他の多くの芸術家においても確かに)特徴的なのは、特異な人生が明らかに、時代全体を表す例となることである。この例とは、従うべき模範のようなものではなく、それによって人間全般について理解するためのものである。したがって、一見私的なものが、公的な意味を獲得し、主観的なものが、客観的明白さへと導かれる。」
◆本CD解説(ピエール・ブレーズ/訳: 恩地元子)より◆
「ベルクの個性はいろいろな意味で魅力的だ。ただ私に最も印象的に思われるのは、直接的表現の力と、類稀な構造力の強さが混ざり合っていることである。ロマン派的であることについては、ベルクは度を超している。彼が聴き手に伝える感情は、しばしば呪いの感情であり、ノスタルジーの感情であり、激動する感情である。(中略)しかしこのようにあふれ出る感情も、とても綿密に組織されているので、楽譜のあらゆるところに多量に散りばめられ、様々に根を張っている彼の意図をとらえるには、探偵のような作業が必要なのである。彼の意図するものは秘教的とも言えるほどで、そのなかのいくつかは、数の関係のもとに隠されたり、最初に鍵を持っていなければ解読するのが難しい暗号法に姿を変えていたりする。」
「《室内協奏曲》の中には、ベルクが偏執的に好んだもの、つまり回文も見いだされる。たとえば2楽章――ヴァイオリンと管楽器群――は、そのように見ると、2分されて、後半は前半の鏡像となっている。」
「音楽的内容については、それはベルクによくみられるあらゆる幻影を思い出させる。たとえばウィンナ・ワルツ、失われたヴァイオリンの楽園のノスタルジー、中心となるシンメトリーを示す真夜中の象徴、沈黙の中に消えて行く最後の数小節のような劇的な身振りを好むこと、である。(中略)計算にまで至る形式的、構造的、そして秘教的な身振り、これらの身振りは彼にとってはすでに劇的な意図であり、音楽のテクスチュアによって表現されることを要請するのである。」
「ピアノ・ソナタは、《クラリネットとピアノのための小品》や《室内協奏曲》がそうであるようには、ベルクの特異性という問題を提しておらず、作曲の世界にその特異性を適応させることはない。いくつかの非常に特徴的な表現においてはすでに、彼は十分にベルクなのであるが、まだ、少なくとも完璧にベルクであるというのではない。(中略)この作品番号つきの最初の作品のもつノスタルジーは若者特有のものである。ソナタから《室内協奏曲》まで、それは、十分に、完全に、取り返しのつかないほど彼そのものになる前に、通り抜けなければならない幾多の迷路なのである。」
◆本CDについて◆
8頁ブックレット(巻き四つ折り)にペーター・ペーターゼン/ピエール・ブレーズ(ブーレーズ)による解説(訳: 恩地元子)、演奏者紹介、クレジット。
インレイには「Made in Japan」とありますが、CDレーベル面の記載は「Made in W.-Germany」、カタログナンバーは「423 237-2」になっています。
オリジナルLPは1978年リリース、「20th Century Classics」版は(本CDには記載がありませんが)1988年頃にリリースされたようです。
★★★★★
Chamber Concerto
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