幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

ジューダス・プリースト  『運命の翼』 

ジューダス・プリースト 
『運命の翼』 

Judas Priest 
Sad Wings of  Destiny 


CD: ビクターエンタテインメント株式会社 
VICP-61651 (2002年) 
定価¥2,100(税抜価格¥2,000) 

 

f:id:nekonomorinekotaro:20211028012618p:plain


帯文: 

「英国的叙情センスと劇的な展開が手を結び生れたセカンド・アルバムにして初期の名作。いまだ色褪せぬ名曲“生け贄”“独裁者”“切り裂きジャック”、強烈な泣きを発散するバラード“夢想家―”他、捨て曲無しの必聴盤。」
「リニューアル・ブックレット仕様」
「1976年作品」
「解説・歌詞・対訳付」


帯裏文: 

「このCDは、ビクターの最新技術「20bit K2」の採用により、オリジナル・サウンドに限りなく忠実な音を再現しています。」


1.VICTIM OF CHANGES (Downing - Halford - Tipton - Atkins) 7:53 
生け贄 
2.THE RIPPER (Tipton) 2:49 
切り裂きジャック 
3.DREAMER DECEIVER (Downing - Halford - Tipton) 5:53 
夢想家Ⅰ 
4.DECEIVER (Downing - Halford - Tipton) 2:44 
裏切り者の歌(夢想家Ⅱ) 
5.PRELUDE (Tipton) 2:02 
プレリュード 
6.TYRANT (Tipton - Halford - Downing) 5:46 
虐殺 
8.EPITAPH (Tipton) 3:20 
墓碑銘(エピタフ) 
9.ISLAND OF DOMINATION (Downing - Halford - Tipton) 4:15 
暴虐の島 


JUDAS PRIEST are: 
Rob Halford: vocals, harmonica 
Glenn Tipton: guitars, keybaords 
K.K. Downing: guitars 
Ian Hill: bass 
Alan Moore: drums 

Produced by Jeffrey Calvert, Max West and Judas Priest 
Engineered by Jeffrey Calvert, Dave Charles and Chris Tsangerides 
Recorded at Rockfield and Morgan Studios 
Cover concept: Neil French 
Sleeve painting: Patrick Woodroffe 
Original art direction: John Pasche / Gull Graphics 
Group photographs by Lorentz Gullachsen 
except Ian Hill photo by Alan Johnson 
Released in 1976 by Gull Records 

Re-mastered by Kotaro Kojima / Flair in 2002 
Re-issued booklet design by Takafumi Yamanishi 


◆「墓碑銘(エピタフ)」歌詞より(対訳: Hatsumi Sakoda)◆ 

「The old man's sitting there, his head bowed down 
Every now and then he'll take a look around 
And his eyes reflect the memory-pain of years gone by」

「年老いた男がうなだれてそこに座っている 
たまに辺りに目をやっている 
その目に映るのは過ぎ去った日々の辛い思いで」


◆本CDについて◆ 

ジューダス・プリースト2ndアルバム(Gull Records 1976)。

透明プラケース。ブックレット(全8頁)に歌詞とクレジット(英文)。別冊ブックレット(全12頁)にトラックリスト、伊藤政則による解説(2002年および1978年LPライナー・ノーツ再録)、訳詞(Hatsumi Sakoda)。

これもかつてLPでさんざん聴き倒しましたが、こうして高音質CDで聴き直すと感慨もまた一入です。まだグラサンスキンヘッドのメタルゴッドになる前の繊細そうなハルフォードがよいです。気分的にはメタルというより世紀末象徴主義芸術です。

左右からひっかくようなツインギターと高音シャウトがとりわけ効果的な「切り裂きジャック」ですが、イギリスにはシャーロック・ホームズの熱狂的なファン(シャーロキアン)がいる一方で、切り裂きジャック研究家(リッパロロジスト、さすがに「ファン」とはいわない)がいて興味深いです。ジキル&ハイドの国民性なので、アメリカ人(パトリシア・コーンウェル)のように犯罪者を他者として糾弾するよりはブラックユーモアとして自ら悪人を演じてみせるのを好むのかもしれないです。それが単なる悪趣味に堕さないで芸術に昇華されてしまうのがシェークスピア(「マクベス」「リチャード三世」)やバイロン(「カイン」)を生んだお国柄であります。
その「切り裂きジャック」と「虐殺」、「夢想家」「裏切者の歌」のメドレーが本作の圧巻です。
ギターのアルペジオで始まる「夢想家Ⅰ」は「天国への階段」(レッド・ツェッペリン)を彷彿とさせます(「And if we could grip and hold on to the note / We would see our minds were free」などは「天国への階段」の「And if you listen very hard / The tune will com to you at last」云々を連想させます)。
「プレリュード」から「虐殺」の流れはマウンテンの「タウンタ」~「ナンタケット・スレイライド」を彷彿とさせます。
先人が残した業績を伝統として摂取した上にこそ個性的な才能の花が開く、そういうことだと思います。

★★★★★ 


Judas Priest - Dreamer Deceiver / Deceiver (BBC Performance)