『ドビュッシー歌曲全集』
エリー・アメリンク/ミシェール・コマン/マディ・メスプレ/フレデリカ・フォン・シュターデ/ジェラール・スゼー
Claude Debussy
Mélodies
Elly Ameling
Michèle Command
Mady Mespré
Frederica von Stade
Gérard Souzay
Dalton Baldwin
CD: 東芝EMI株式会社
TOCE-7691~93 (1992年) [3枚組]
税込定価8,400円(税抜価格8,155円)
DISC 1
1.星の輝く夜(テオドール・ド・バンヴィル詩) 3:09
2.麦畑の花(アンドレ・ジロー詩) 2:01
3.美しい夕暮れ(ポール・ブルジェ詩) 2:16
4.マンドリン(ポール・ヴェルレーヌ詩) 1:20
5.眠りの森の美女(ヴァンサン・イスパ詩) 3:48
6.今はもう春(ポール・ブルジェ詩) 2:45
7.感傷的な風景(ポール・ブルジェ詩) 3:40
8.西風(テオドール・ド・バンヴィル詩) 2:00
9.ロンドー(アルフレッド・ド・ミュッセ詩) 2:46
四つの青春の歌
10.No.1: パントマイム(ポール・ヴェルレーヌ詩) 2:09
11.No.2: 月の光(ポール・ヴェルレーヌ詩) 2:44
12.No.3: ピエロ(テオドール・ド・バンヴィル詩) 2:00
13.No.4: 現われ(ステファーヌ・マラルメ詩) 3:33
14.中国風のロンデル(作者不詳) 3:48
15.愛し合いそして眠ろう(テオドール・ド・バンヴィル詩) 2:43
16.ジャヌ(ルコント・ド・リール詩) 2:51
17.声をひそめて(ポール・ヴェルレーヌ詩) 3:06
二つのロマンス(ポール・ブルジェ詩)
18.No.1: ロマンス 2:17
19.No.2: 鐘 2:15
DISC 2
シャルル・ボードレールの五編の詩
1.No.1: バルコニー 7:46
2.No.2: 夕暮れの諧調 4:08
3.No.3: 噴水 5:47
4.No.4: 黙想 4:51
5.No.5: 恋人たちの死 2:55
6.お告げの鐘(グレゴワール・ル・ロワ詩) 2:05
三つの歌曲(ポール・ヴェルレーヌ詩)
7.No.1: 海は美しい 2:06
8.No.2: 角笛の音は 2:50
9.No.3: 羊の群と立ちならぶ生垣は 1:18
艶なる宴~第1集~(ポール・ヴェルレーヌ詩)
10.No.1: 声をひそめて 3:09
11.No.2: 操り人形 1:15
12.No.3: 月の光 2:45
13.庭の中(ポール・グラヴォレ詩) 2:18
抒情的な散文(クロード・ドビュッシー詩)
14.No.1: 夢 5:59
15.No.2: 砂浜 3:18
16.No.3: 死 5:33
17.No.4: 夕暮れ 3:58
DISC 3
忘れられたアリエッタ(ポール・ヴェルレーヌ詩)
1.No.1: やるせなく夢見る思い 3:12
2.No.2: わたしの心に涙がふる 2:38
3.No.3: 霧つつむ河の面の木々の影 2:31
4.No.4: 木馬 3:01
5.No.5: グリーン 2:08
6.No.6: スプリーン 2:27
ビリティスの唄(ピエール・ルイス詩)
7.No.1: パンの笛 2:31
8.No.2: 髪 3:17
9.No.3: 水の精の墓 2:37
艶なる宴~第2集~(ポール・ヴェルレーヌ詩)
10.No.1: 無邪気な人たち 2:19
11.No.2: 半獣神 1:58
12.No.3: 感傷的な対話 3:55
フランスの二つのシャンソン(シャルル・ドルレアン詩)
13.No.1: ロンデル―時はぬいだよそのマント 1:05
14.No.2: ロンデル―「喜び」が死んでしまったから 2:24
二人の恋人の散歩道(トリスタン・レルミット詩)
15.No.1: この暗い洞窟のほとり 2:52
16.No.2: 愛するクリメーヌよ、私の言う通りにしておくれ 1:48
17.No.3: 私は震える 2:14
フランソワ・ヴィヨンの三つのバラード
18.No.1: 恋人に与えるバラード 4:12
19.No.2: 聖母に祈るために母への要請によって作られたヴィヨンのバラード 4:34
20.No.3: パリ女のバラード 2:01
ステファーヌ・マラルメの三篇の詩
21.No.1: 溜息 2:54
22.No.2: 取るに足らないお願い 2:02
23.No.3: 扇 2:17
24.もう家のない子供たちのクリスマス(クロード・ドビュッシー詩) 2:31
エリー・アメリンク(ソプラノ)
DISC 1 [1]、[2]/DISC 2 [10]~[17]/DISC 3 [21]~[24]
ミシェール・コマン(ソプラノ)
DISC 1 [5]、[19]/DISC 2 [1]~[6]/DISC 3 [7]~[9]
マディ・メスプレ(ソプラノ)
DISC 1 [6]~[18]
フレデリカ・フォン・シュターデ(ソプラノ)
DISC 3 [1]~[6]
ジェラール・スゼー(バリトン)
DISC 1 [3]、[4]/DISC 2 [7]~[9]/DISC 3 [10]~[20]
Enregistrement realisé à Paris en avril 1971, janvier et décembre 1977, octobre et décembre 1978, janvier et février 1979
Directeur artistique: Eric Macleod
Ingénieur du son: Serge Rémy
◆本CD解説(ステファン・ジャロシンスキ)より◆
「マラルメとの最初の出会いは1883年、詩の運動に大きな関心を抱いていた若いドビュッシーが象徴派の週刊誌『リュテス』(1883年11月24日―30日号)のうちに詩人のごく初期の作品である『現われ』(1863年作)をみつけたときに遡る。ドビュッシーはそこで確かに、ラファエロ前派の人たちがめざしていたものに近い、最初の4行詩の雰囲気にひきつけられている。
月は悲しんでいた。涙にぬれた熾天使たちは
夢みながら、指には絃の弓、おぼろな花々の静けさのなかで
物憂げなヴィオルを奏でつづければ
白色の啜り泣きが、花冠の蒼空の上を滑るように流れていく。
この若い時に作られた歌曲は限りない美しさと多くの工夫を秘めており、音域の広がりすべてを用いながら、ほとんど2オクターヴにわたる音程の跳躍と、レシタティーフにもまがう唱法との対比をみせる。のみならず和声構造の原則は伝統的な用法から離れていく。こうして機能は半音や全音を単純な構造に加えていくことで、あるいは予期しない表現的な転調を行うことで、また非機能的な和声を連続して用いることで全くとらえどころがなく、ホ長調も印しだけにすぎないものとなる。
22歳のときそうした最も高い価値をもつ詩の素材と出会ったことで身につけた経験が、ドビュッシーの意識のうちにずっと刻まれ続けたということ、そしてこの経験が記憶のうちにいつまでも蘇ってきたということの証拠は、『現われ』の旋律的なフレーズ「……花々の静けさのなかで/もやがかかり……」のうちに確かめることができよう。この部分をドビュッシーは10年後、『ペレアスとメリザンド』の第二幕、噴水の場でペレアスがメリザンドに語りかける時、伴奏部分も含めてそっくり、くり返している。
『現われ』では(『マンドリン』でもやはりそうであったが)音楽の強弱の展開がドビュッシー的と呼ばれる新しい傾向を豊かに見せはじめる。音の勢いが強まるのではなく、ピアノからピアニッシモへとだんだん弱くなり、消えていく。
「………軽く握ったその掌から、かぐわしい星屑の白い花束をつねに雪と降らせ…」
のことばのところからは弱音で歌わねばならないのだが、伴奏(ハープに模したピアノ)の方はピアニッシモから、――作曲家が指示するところでは――ずっと消えていくように演奏するのである。
ドビュッシーはこのように音がだんだん消えていくのを好んだ。」
◆本CDについて◆
三方背スリーブケースに三枚組用ジュエルケース(24mm厚)と同サイズのブックレット。ブックレット(全64頁)にトラックリスト&クレジット、「ドビュッシーと詩」(ステファン・ジャロシンスキ/仏訳よりの抄訳: 丸山亮)、「ドビュッシーの歌曲とこのCDの演奏者たち」(高崎保男)、歌詞対訳(窪田般彌)、モノクロ図版(ドビュッシー肖像)1点。
五人の歌手によるドビュッシー歌曲全集。スゼーとアメリンクはよいですが、メスプレはオペラの人なのでコロラトゥーラがうっとうしいです。コマンもオペラの人なので声を張り上げたりするのでちょっとうるさいです。フォン・シュターデはよいです。
★★★★☆
「ステファーヌ・マラルメの三篇の詩」