幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

ゴードン・ハスケル  『歳時記』 

ゴードン・ハスケル 
『歳時記』 

Gordon Haskell 
It Is And It Isn't 


CD: Atlantic/MMG Inc. 
販売元: 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン 
AMCY-594 (1993年) 
¥2,800(税込)(税抜価格¥2,718) 

 

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帯文: 

キング・クリムゾン・ファン待望の究極のレア・アイテム、本邦初登場! 
クリムゾンの二代目ヴォーカリストハスケルの叙情性は他の追従を許さない!」
「世界初CD化」 


1.ノー・ミーニング 
No Meanin  3:25 
2.クッド・ビー 
Could Be  3:16 
3.アップサイド・ダウン 
Upside Down  4:28 
4.ジャスト・ア・ラヴリィ・デイ 
Just A Lovely Day  4:56 
5.シッティング・バイ・ザ・ファイア 
Sitting By The Fire  3:41 
6.ホエン・アイ・ルーズ 
When I Lose  0:18 
7.ノー・ニード 
No Need  2:46 
8.ワームス 
Worms  4:40 
9.スパイダー 
Spider  4:15 
10.ラーニング・ノット・トゥ・フィール 
Learning Not To Feel  2:33 
11.ベニー 
Benny  4:46 
12.ホエン・アイ・ラフ 
When I Laugh  0:25 


All the songs were written by Gordon Haskell 

Gordon Haskell, Lead vocals & acoustic guitar 
John Wetton, Bass, organ & harmony vocals 
Dave Kaffinetti, Piano & electric piano 
Bill Atkinson, Drums 
Alan Barry: Electric & acoustic guitar solos & lead guitar 

On *No Need* & *Worms*, Arif Mardin is added on electric piano 

On *Could Be* & *Sitting By The Fire* David Spinoza, rhythm guitar; 
Neal Rosengarden, piano; Eddie Brigati & David Brigati, background vocals, are added. 

The horn & string arrangements are by Arif Mardin. 

All the selections were recorded at Pye Recording Studios, London 
with the exception of *Upside Down*, *No Need* & *Learning Not To Feel* which were recorded at Island Studios, London. 
Additional recording done at Atlantic Recording Studios, New York, N.Y. 
Recording engineers: Dave Hunt, Richard Digby Smith, Richard Dodd & Jimmy Douglass 
Re-mix engineer: Arif Mardin 
Photography: Johnnie Walker 
Album design: Graphreaks 
Produced by Arif Mardin 


◆本CD解説(赤岩和美)より◆ 

「クリムゾン・ファミリーの中でも、ゴードン・ハスケルは比較的地味な存在であり、ロバート・フリップに冷遇されたメンバーのひとりと言えるかもしれない。」
「クリムゾンのアンソロジー・ボックス『紅伝説(Frame By Frame)』で、彼の歌っていた「ケイデンス・アンド・カスケイド」のヴォーカル・パートが、エイドリアン・ブリューのヴォーカルに差し替えられ、更にアルバム『リザード』で彼が歌った作品からは1曲もセレクトされなかったという殆ど嫌がらせのような仕打ちをされてしまったのである。」
「そのフリップや学校の友人たちと60年代初期にザ・レイヴンズ(The Ravens)というバンドを組み活動を始めている。」
「フラー・ダ・リーズ(Fleur De Lys)(中略)解散後に、初のソロ・アルバム “Sail In My Boat” を1969年に英CBSから発表しソロ活動を始めている。しかし、その直後に旧友のロバート・フリップに呼ばれて、キング・クリムゾンの2作目『ポセイドンのめざめ』に収録された「ケイデンス・アンド・カスケイド」でリード・ヴォーカルを取ることになった。」
「結局、フリップとハスケルと『ポセイドン~』に参加していたメル・コリンズの3人は、(中略)キング・クリムゾンの体勢を立て直し、アルバム『リザード』を制作したのであった。しかし、アルバムの録音が終了した2日後にハスケルはクリムゾンからの脱退を決意したのであった。」
「そして、このクリムゾン脱退の直後に、かつてのフラー・ダ・リーズ時代のレーベル、アトランティックからソロ第2作として1971年に発表した作品が本作 “It Is And It Isn't” という訳である。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全24頁)にトラックリスト、赤岩和美による解説、歌詞(英語原文)、歌詞日本語訳(無記名)。ブックレット裏表紙はLP裏ジャケを縮小再現しています。

本作はレア・バードのデイヴ・カフィネッティ、フィールズのアラン・バリー、ファミリーのジョン・ウェットンが参加、元キング・クリムゾンのベース&ヴォーカルと未来のキング・クリムゾンのベース&ヴォーカルの記念すべき出会いですが、音の方はエコロジカルでピースフルな(そしてややメランコリックな)フォークロックです。本作#2の歌詞に「we'll all be moving back to sea」(我々はみな海に戻っていく)とありますが、1st『Sail In My Boat』の#1の歌詞にも「I'll be going / Going back to sea」(私は海に帰っていく)とあって、海に帰るというのは胎内回帰願望/反文明思想ですが、小動物や虫などが登場する歌詞の世界観も音楽性も、1st(クリムゾン体験以前)と2nd(クリムゾン体験以降)でまったく変わっていないところがすごいです。
自分は有名バンドの不遇メンバーに肩入れしがちなので、本作は元ジェネシスアンソニー・フィリップスの『Wise After The Event』(1978年)、アート・ガーファンクルサイモン&ガーファンクルのサイモンじゃない方)の『Watermark』(1977年)とともに長年の愛聴盤です。

本作以降のハスケルは1977年に加藤ヒロシ(リンド&リンダース)のバンド「Joe」に参加し山口百恵のLP『Golden Flight』でバックをつとめ、1979年にはポリドールで3rdアルバムをレコーディングするもののお蔵入り(1997年に日本でCD化)、1990年代からソロ活動を再開して2001年にはシングル「How Wonderful You Are」が全英クリスマス・チャートの2位、40万枚を超えるヒットとなり、2002年には『Harry's Bar』が全英アルバム・チャート2位、自伝も出版して2020年に逝去。人間万事塞翁が馬、棺を蓋いて事定まる、といったところでしょうか。
1974年にはスタックリッジ加入の話もあったようですが辞退、スタックリッジは1975年リリースの『Extravaganza』で本作#8「Worms」を「No One's More Important Than The Earthworm」のタイトルでカバーしています。

★★★★★ 


Could Be


Upside Down


When I Lose


「When I lose I'm convinced I've won 
Black is white burned beneath the sun 
I know this melody is poor 
But I just can't think of anymore」