『鬢多々良|伊福部昭作品集』
BINTATARA/Selected Works of AKIRA IFUKUBE
[日本現代音楽の新たな展望―15]
"A New Aspect Of Japanese Contemporary Music - 15"
CD: カメラータ・トウキョウ
Camerata 28CM-290 (1998年)
¥2,800(税抜)
Made in Japan
伊福部昭 Akira Ifukube (born 1914)
1.二十絃箏曲「物云舞」(1979) 14:20
MONO IU MAI
Monodie chorégraphique pour KOTO à vingt cordes (1979)
ヴァイオリン・ソナタ(1985)
VIOLIN SONATA (1985)
2.I. Allegro 7:56
3.II. Cantilena, Andante 5:46
4.III. Allegro vivace 6:08
サハリン島土民の三つの揺籃歌(1949)[*伝承詩]
THREE LULLABIES AMONG THE NATIVE TRIBES ON THE ISLAND OF SAKHALIN (1949)
5.I. ブールー ブールー bu: lu: bu: lu: 5:25
6.II. ブップン ルー buppun lu: 4:00
7.III. ウムプリ ヤーヤー umpri ja: ja: 2:13
8.郢曲「鬢多々良」(1973) 21:50
BINTATARA per 16 strumenti di Giappone (1973)
Total time 68:13
野坂恵子(二十絃箏)[1]
Keiko Nosaka, twenty-string koto
小林武史(ヴァイオリン)[2]‐[4]
Takeshi Kobayashi, violin
梅村祐子(ピアノ)[2]‐[4]
Yuko Umemura, piano
平田恭子(ソプラノ)[5]‐[7]
Kyoko Hirata, soprano
井上直幸(ピアノ)[5]‐[7]
Naoyuki Inoue, piano
田村拓男(指揮)[8]、日本音楽集団[8]
Takuo Tamura, conductor, PRO MUSICA NIPPONIA
録音:1980、81年&88年/入間市市民会館
Recorded: 1980, 81 & 88 / Iruma-shi Shimin Kaikan
Producer
HIROSHI ISAKA
Recording Engineer
YASUHISA TAKASHIMA [1]-[4]
MASAKI OHNO [5]-[7], IWAO KOJIMA [8]
Editing Engineer:
MOTOKI MIYATA
Recording Date
October 27, 1980 [1] (A.D.D)
July 7, 1988 [2]-[4] (D.D.D)
March 9 & 10, 1974 [5]-[7] (A.A.D)
February 23, 1981 [8] (D.D.D)
Recording Place
Iruma-shi Shimin Kaikan
Cover Design
KEISUKE IMAO
題字
伊福部昭
◆本CD「作品解説」より◆
「二十絃箏曲「物云舞」」
「物云舞(ものいうまい)とは、平安朝中期に興った歌舞の一様式で、歌いながら舞うのがその特徴とされている。現在、その舞は伝わっていないが、歌詞は「群書類従」などに十数首書き残されており、一般に見られる七・五調ではなく、一句の終わりが四と言うかなり不揃いな語数から成り立つ。この不揃いな部分が舞の仕草で補われたと考えられ、歌いながらその心情を舞うという様式がもつ典雅さへの思いが、この作品を書く動機となった。」(伊福部昭)
「ヴァイオリン・ソナタ」
「このヴァイオリン・ソナタは1985年に小林武史のために書かれたもので、そのときの初演に際して作曲者は次のようなコメントを寄せている。
「この作品では、ヴァイオリンとピアノの為のソナタというかなり窮屈な制約のもとで、自己の語法や、伝統的な感性が、これに、どのように対応し得るものであるかが一番の問題であった。
3楽章から成っているが、第1楽章は変形されたソナタ・アレグロ、第2楽章は旋律性を重視したカンティレーナ、終楽章は三部形式のアレグロ・ヴィヴァーチェとなっています。」」(近藤滋郎)
「サハリン島土民の三つの揺籃歌」
「サハリン島には、どのような保護を与えても、何の故か、唯、衰退の一途をたどる土着の種族がある。
キーリン、サンダー、オロッコ、ギリヤーク、ヤクートの古代アジア諸族がこれである。
しかし、かれらは、自分達種族が負うこの暗い運命に抗しながら、それぞれの古い伝承の子守唄を唄って、いとけない次の世代を育んでいる。
この近隣種族の侘しい唄声への共感が、この作品の動機である。
ここには、キーリン、ギリヤーク、オロッコの三族のものをとりあげたが、歌詞は、それぞれ、その種族の言葉によった。
子守唄とは、いずれもその内容は「静かに眠れ」と云う程のことで、むしろ、その言葉の響きそのものに、性格が偲ばれると考えたからである。
しかし、いずれの種族にも文字がなく、従来の版では、ヘボン式ローマ字を用いたが、かれらの言葉の中には、この記法では充分に写し得ない音があるので、音標文字(歌詞対訳参照)による記法に改めた。」(伊福部昭)
「郢曲「鬢多々良」」
「郢曲(えいきょく)とは、平安中期にわが国に興った音楽の一形態であるが、様式としては、宮廷社寺楽と庶民の俗楽との中間に位していた。
したがって、旋法なども、わが国と唐・天竺などの混淆にあったと考えられている。
鬢多々良(びんたたら)とは、比牟多々良などとも記されるが、詠唱を伴ったかなりくつろいだ舞い楽で、あまり厳格に定まった振りはなかったらしく、各自が自由に舞い、やがて乱舞に至るのが常であったとされる。」(伊福部昭)
◆本CDについて◆
ブックレット(全14頁)にトラックリスト&クレジット、解説「真摯な出会いの誠実なモニュメント―伊福部昭の音楽について―」(小村公次)、「作品解説」(伊福部昭/近藤滋郎)、「伊福部昭」「AKIRA IFUKUBE」(作曲者紹介)、「主要作品:Major works」(作品リスト)、「サハリン島土民の三つの揺籃歌」歌詞対訳、「プロデューサー・ノート」(井阪紘)、「RECORDING DATA」。ブックレット裏表紙に写真図版(カラー)1点。
オリジナルリリースは1994年(32CM-290)、本CDはその再発盤です。
収録曲に統一がないですが、「プロデューサー・ノート」によると、「サハリン島土民の三つの揺籃歌」を収録する歌曲集、「物云舞」「鬢多々良」を収録する邦楽器による作品集を出す予定だったのが頓挫して、作曲者と相談した結果、それらに「ヴァイオリン・ソナタ」を加えて一枚に編むことにした、ということです。
★★★★★
鬢多々良