幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『ミュージングゾーンⅢ|武満徹作品集』 

『ミュージングゾーンⅢ|武満徹作品集』 

MUSING ZONE III 
WORKS BY TORU TAKEMITSU 


CD: 株式会社フォンテック 
FOCD3109 
税込定価¥3,100(税抜価格¥3,010) 
Made in Japan 

 

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帯文: 

「鍵盤作品1950-89を集成 
「リタニ」(「二つのレント」改作)から「閉じた眼Ⅱ」までのピアノ曲を中心に、
唯一のハープシコード作品「夢みる雨」も収録。」


LITANY for piano (1950/89) 
リタニ 
1.Ⅰ. Adagio 4:42 
2.Ⅱ. Lento misterioso 5:19 

UNINTERRUPTED RESTS for piano (1952-59) 
3.Ⅰ. Slowly, sadly as if to converse with 2:42 
4.Ⅱ. Quietly and with a cruel reverberation 2:54 
5.Ⅲ. A song of love 1:51 

6.PIANO DISTANCE for piano (1961) 3:55 
ピアノ・ディスタンス 

7.FOR AWAY for piano (1973) 7:06 
フォー・アウェイ 

8.RAIN TREE SKETCH for piano (1982) 2:58 
雨の樹素描 

9.LES YEUX CLOS for piano (1979) 5:54 
閉じた眼 

10.LES YEUX CLOS II for piano (1989) 6:54 
閉じた眼Ⅱ 

11.RAIN DREAMING for harpsichord (1986) 6:29 
夢みる雨 


Kazuoki FUJII 
藤井一興――piano, harpsichord ([11]) 


Director 
Akira MATSUDA 

Engineer 
Takao OHMURA 

Tuner 
Tsutomu SAITOH (piano) 
Shigeyuki IKEGUCHI (harpsichord) 

Instruments 
Steinway & sons 
Zuckermann, Louis XVI model (Kinebuchi piano) 

Art Director 
Tsunemi MORIMOTO 

Cover Photographer 
Hikaru SASAKI 

Photo of Toru TAKEMITSU 
Akira KINOSHITA 

Recording Date 
11, 12 May 1990 

Location 
Denen Hall Ellora 


◆本CD「楽曲解説」(白石美雪)より◆ 

「●リタニ(1950/89)」
「友人マイケル・ヴァイナーの訃報に接して、武満は自分が病床にあった若いころの思いを呼びさますデビュー作、《二つのレント》のスケッチに手を入れた。(中略)(82年に録音された〈武満徹ピアノ作品集〉(FOCD 3202)でも藤井一興が《二つのレント〉を弾いているが、これは残されていたスケッチに基づいている)。」

「●遮られない休息(1952-59)」
「シュール・レアリスムの詩人、瀧口修造の詩画集「妖精の距離」(1937)の中の詩に触れて、その印象を音にした作品。はじめの曲とあとの2曲の間に7年ほどの隔たりがあることから、語法に少し変化が見られる。第1曲「ゆっくりと悲しく、話しかけるように」は《リタニ》と同じく、最初のテーマが最後に戻ってくるアーチ型の構成。第2曲「静かに残酷なひびきで」は、3秒を単位として流れる沈黙の中に、強音と弱音のいちじるしい対比で濃淡をつけながら、和音と単音が堆積していく。第3曲「愛のうた」はベルクへのオマージュ。音の残像が干渉しあう、静かな時間である。」

「●ピアノ・ディスタンス(1961)」
「《遮られない休息》の第2曲と同じく、3秒をひと区画として表示される楽譜に音符を埋めこんでいく方法をとっている。「真に生き生きとした音の生起を希んで」(武満)とのことである。」

「●フォー・アウェイ(1973)」
「この作品を構想しているころ、武満はクセナキスらとともに2週間ほどインドネシアに滞在した。そのときに聴いたガムランの印象が、たとえば最初の打楽器風の同音連打や、終わり近くで一瞬、耳をつくペロッグ音階に、さらにペダルの使用を部分的に演奏者の自由に任せているあたりによく現れている。」

「●雨の樹素描(1982)」
「三人の打楽器奏者のための《雨の樹》(1981)とともに、大江健三郎の短編「頭のいい雨の樹」で描かれている不思議な樹をイメージした作品である。小さな葉をいっぱいつけている雨の樹は、夜中に降った雨露をたっぷりためこんで、晴れ上がった翌日の昼過ぎまでしずくをしたたらせている。」

「●閉じた眼(1979)」
瀧口修造の追悼のために作曲された。(中略)「終わることのない夢を夢みつづける」詩人への絶えざる思いを、フランスの画家オディロン・ルドンの絵「閉じた眼」の雰囲気と織りあわせたのがこの作品である。」

「●閉じた眼Ⅱ(1989)」
「《フォー・アウェイ》に似た同音の反復から始まるこの曲でも、やはり上行する音の動きに永遠の世界への憧れが感じられる。」

「●夢みる雨(1986)」
「オーストラリアの原住民の絵画に含まれている微妙なニュアンスを表現しようとしたもので、5連符で刻まれる雨音が続く中、すっきりと整った音型が連なっていく。後半に冒頭のパッセージがもどってくるアーチ型である。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全12頁)にトラックリスト&クレジット、「沈黙再考」(三浦雅士)、「楽曲解説」(白石美雪)およびその英訳、演奏者紹介、写真図版(モノクロ)1点。裏表紙に写真図版1点。

「ミュージングゾーン」全三巻のうちの『Ⅲ』。2005年リリースの『鍵盤作品集成』(FOCD9228)は、本作に1995年録音の「雨の樹素描Ⅱ」(1992)を追加したものです。

★★★★★