Arkham
CD: Cuneiform Records/Arcàngelo
Distributed in Japan by disk union
Rune 160/ARC-2160 (2002年)
税込価格¥2,500
帯文:
「UNIVERS ZEROへと繋がる幻の影が遂に姿を見せる。我々の想像を超えた初期SOFT MACHINEにも酷似したその音楽性こそ、ダニエル・デニスの苦闘の歴史を物語るに相応しい失われた最後のミッシング・ピースである。
【国内初回仕様のみボーナストラック2曲収録】」
1. Upstairs In The Granary 5:11
Recorded July 4th, 1971 at M.J.C., Feluy, Belgium
2. Eve's Eventful Day (part 5 & 6) 3:22
Recorded July 4th, 1971 at M.J.C., Feluy, Belgium
3. Monolithic Progression With Anticipated Rupture 8:00
Recorded June, 1970 at RTB, Brussels, Belgium
4. Brussels Shortly After 8:30
Recorded November, 1970 at "The Recreation", Brussels, Belgium
5. Bleriot: Visibility Poor 8:18
Recorded 1971, Brussels, Belgium
6. With Assays Of Bias 10:21
Recorded June 26th, 1971 at the "Cocoripop Festival", Charleroi, Belgium
7. Eve's Eventful Day (part 3) 4:45
Recorded 1971, Brussels, Belgium
8. Riff 14 8:48
Recorded April 28th, 1972 at M.J.C., Verviers, Belgium
9. Tight Trousers 4:37
Recorded April 28th, 1972 at M.J.C., Verviers, Belgium
10. Brussels Shortly After (part 2) [Bonus Track] 3:07
Recorded November, 1970 at "The Recreation", Brussels, Belgium
11. Exhibition 47 - Penelope [Bonus Track] 4:40
Recorded 1971, Brussels, Blegium
All music composed and arranged by Jean-Luc Manderlier
Jean-Luc Manderlier
Hammond-organ, electric piano, clavioline
Daniel Denis
drums, whistles
Patrick Cogneaux
bass and some strange frequency modulations
Claude "Piccolo" Berkovitch
bass on (3)
Claude Deron
electric flugelhorn on (8) and (9)
Christian #Djoum" Ramon
bass on (8) and (9)
Remastered by Didier de Roos at Fields Studio, Belgium, June 2001
(C) 2002 Daniel Denis and Jean-Luc Manderlier
(P) 2002 Cuneiform Records
◆日本語解説(坂本理)より◆
「1968年にナイヴス・アンド・アクシズ(Knives And Axes)というバンドが結成される。メンバーはアラン・ピエール(vo)、ミシェル・ロヴィーヴ(org)、ディノ・レオナルディ(g)、パトリック・コノー(b)、そして14歳のダニエル・ドゥニ(d)の5人で、ドアーズやピンク・フロイド、ジミ・ヘンドリックスのカヴァーを演奏する。バンドは“Le Tremplin”というコンテストで優勝。1969年にコルシカで、1970年にマルティニック島で演奏した。
しかし、この間にドラマーのドゥニは決定的な音楽との出会いを果していた。
「1969年、私はソフト・マシーンのコンサートを見た。とにかく信じられないほど感動した。そして自分が向かうべき道はこれしかないと心に決めたのだ。」
(『マーキー42号』1992より)
ベルギーに戻るとダニエル・ドゥニはブリュッセルで出会ったジャン=リュック・マンドゥリエ(kb)と意気投合してバンド結成に動き出し、1970年5月にベーシストのクロード・ベルコヴィッチを迎える。ベルコビッチは、後にアクサク・マブールを結成するキーボード奏者、マルク・オランデルらとヒア・アンド・ナウというバンドで活動していた。これがアーカム(Arkham)のスタートだった。
アーカムの名は、アメリカの作家、ハワード・フィリップ・ラヴクラフトの作り出したクトゥルー(Cthulhu)神話に登場するアメリカ、マサチューセッツ州の地名に由来する。」
「1970年10月にベルコヴィッチが(中略)バンドを離れると、オーディションに参加した元ナイヴス・アンド・アクシズのパトリック・コノーが後任のメンバーとして決定する。
「1971年、アーカムはフェスティヴァルへの出場などを重ね、精力的に活動して行く中、9月4日にフランスのバンド、マグマのベルギー公演のオープニング・アクトを務める。」
「9月末にパトリック・コノーがバンドを離れる。代わって元ヒア・アンド・ナウのギタリスト兼ベーシストのパオロ・ラドーニが迎えられ、バンドはよりインプロヴィゼーションを活かした演奏へと音楽性をシフトして行く。
やがてジェリー・フィッシュ(Jelly Fish)というバンドからトランペット奏者のクロード・ドゥロンとフランス人ギタリストのフランソワ・アルノドーが加わるが、アルノドーはすぐに脱退した。ドゥロンはドイツのフリー・ジャズ・ピアニストのアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハが結成したグローブ・ユニティに参加したミュージシャンで、ヨーロッパ・フリーのメルクマール的作品『Globe Unity』(67)にも参加している。
しかし、ドゥロンが加わってからほどなく、アーカムの運命を左右する出来事が起きる。(中略)マグマがメンバーの大量脱退で転機を迎え、クリスチャン・ヴァンデが(中略)声をかけてきたのだ。1972年3月、ヴァンデはマンドゥリエとドゥニのふたりにパリでマグマに加入してもらうことを約束する。
アーカムの解散コンサートは5月にオランダで2回行なわれた。このコンサートにはマンドゥリエ、ドゥニ、パオロ・ラドーニだけでなく、後にアクサク・マブールに参加するヴァンサン・ケニ(g)も加わっていた。こうしてアーカムは歴史を閉じた。」
「アーカムはアルバムを残していない。ここに収録されているのはおそらくダニエル・ドゥニとジャン=リュック・マンドゥリエが所有していたテープに記録されていたコンサートとリハーサルの模様だ。」
「ダニエル・ドゥニの発言にもあるように、アーカムの音楽は一にも二にもソフト・マシーンの強い影響下にあった。それはここに収められた音を聴けば、明らかだ。」
「マグマに加わったふたりのうち、ドゥニは数回のステージを経てクリスチャン・ヴァンデとのツイン・ドラムでの自己表現の難しさを痛感し脱退。マンドゥリエは1974年3月までマグマで活躍する。」
「マンドゥリエはその後、パトリック・コノーやフランク・ワイツらとアヴェナ・サティヴァ(Avena Sativa)に参加。90年代の活動としては、元コス(Cos)のダニエル・シェルが(中略)結成したニューエイジ・チェンバー・ロック・バンド、カロ(Karo)のメンバーとしてジャン=リュック・プルヴィエの後を受けて加入。アルバム『Gira Girasole』(94)に参加している。」
「一方のダニエル・ドゥニはクロード・ドゥロンと共に1973年にネクロノミコンを結成する。ロジェ・トリゴー(g)、ギ・セガース(b)、パトリック・アナピエ(vln)、ジョン・ヴァン・リーメナン(sax; 元ウォータールー)、ヴァンサン・モトゥーユ(kb)が加わり、1974年にユニヴェル・ゼロへと改名する。」
◆本CDについて◆
透明ジュエルケース。原盤ブックレット(全8頁)にDaniel Denis/Jean-Luc Manderlierによる解説(English translation by Patricia Silver and Ali Rebatchi)、写真図版(モノクロ)8点。別冊ブックレット(全8頁)に坂本理による解説、Daniel Denis/Jean-Luc Manderlierによる解説の日本語訳「アーカム・ヒストリー」、写真図版(モノクロ)7点。
後のユニヴェル・ゼロのダーク&ヘヴィ路線とは異なって、アーカムはソフト・マシーンの3rdあたりの音楽性を踏襲していて、「Eve's Eventful Day」や「Brussels Shortly After」などはノスタルジック&メランコリックなカンタベリー系名曲かもしれないです。
★★★★☆
Brussels Shorty After
Eve's Eventful Day, Pts 5 & 6