幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『Berio: Sinfonia / Eindrücke』  Pierre Boulez 

『Berio: Sinfonia / Eindrücke』 
Pierre Boulez 


CD: Erato Disques S.A. 
2292-45228-2 (1986) 
Made in Germany 

Warner-Pioneer Corporation 
WPCC-3800 

 


Luciano BERIO (né en 1925) 
ルチアーノ・ベリオ 

SINFONIA 
pour huit voix et orchestre 
for eight voices and orchestra 
für acht Stimmen und Orchester 
シンフォニア 
~8つの声と管弦楽のための 
1. I -  6:15  
2. II - O King  オー・キング 4:58 
3. III - In ruhig fliessender Bewegung  静かに流れるような動きで 12:26 
4. IV -  3:23 
5. V -  7:08 

Regis PASQUIER, violin solo 
レジ・パスキエ(ヴァイオリン独奏) 
NEW SWINGLE SINGERS 
(Conductor: Ward Swingle) 
ニュー・スウィングル・シンガーズ 
(指揮:ワード・スウィングル) 

6. EINDRÜCKE * 
アインドゥリュケ 

ORCHESTRE NATIONAL DE FRANCE 
Direction / Conductor / Dirigent 
Pierre BOULEZ 
ピエール・ブレーズ指揮 
フランス国立管弦楽団 

Enregistrement numérique / Digital recording / Digital-Aufnahme 
Direction artistique de l'enregistrement / Recording supervision / Aufnahmeleitung: Luciano Berio 
Ingénieurs du son / Sound engineers / Tonmeister: Pierre Lavoix & Didier Arditti, Guy Chesnais & Michel Lepage * 
Montage musical / Editing / Schnitt: Ysabelle Van Wersch-Cot & Didier Arditti * 
Enregistrements realises en / Recordings / Aufnahmen: Avril / April 1984 & Juillet / July / Juli 1981 *, IRCAM-Espace de Projection - Studio 103 Radio France * (Paris)  
(録音) 1984年4月(シンフォニア)、1981年7月(アインドゥリュケ) 
COPRODUCTION ERATO / RADIO FRANCE 
(C) Editions Costallat 1986 
recto: Sergio de Castro - 1977 (détail) - photo DOminique Souse 
verso: Pierre Boulez - photo Erato. 


◆川西真理による日本語解説より◆ 

「8人の声とオーケストラのための《シンフォニア》は、もっとも知られた現代音楽のひとつといえるだろう。CDは、ベリオ自身が録音のディレクターとなり、ピエール・ブレーズの指揮、そして《シンフォニア》の初演にあたったスウィングル・シンガーズ(1984年の録音時は再編成された「ニュー・スウィングル・シンガーズ」で)の演奏という、理想的な最高のメンバーによって制作された。」
ニューヨーク・フィルハーモニックの創立125周年記念委嘱作品として、1968年に作曲され、同年の10月18日(中略)に、ベリオ自身の指揮、同オーケストラによっておこなわれ、レオナード・バーンスタインに献呈されている。
 このときの《シンフォニア》は、現行の5部ではなく4部で構成されている。これら4つの部分は、(中略)古典的な交響曲の楽章ではない。タイトルの《シンフォニア》も交響曲(シンフォニー)とは関係がなく、その語義どおりの「響き合い」、つまり8人の声と各楽器から発されるさまざまな音事象やことばの意味が交錯し、影響し合うことである。第5部分は、たがいに異なる第1部分から第4部分のすべてを統合する部分として、翌年の69年にかけて作曲され、ドナウエッシンゲン音楽祭で初演された。
 第1部は、文化人類学クロード・レヴィ=ストロースの『神話学』シリーズの第1巻にあたる「生のものと火にかけたもの」(中略)からのことばの断片をテキストとする。」
「第2部は、黒人指導者マルティン・ルーサー・キング師のオマージュである。」
「つづく第3部は、(中略)マーラーの《第2交響曲「復活」》の第3楽章スケルツォを下敷きにして、(中略)古今のさまざまな音楽作品の断片が引用される。(中略)テキストは、サミュエル・ベケットの『名付けえぬもの』を中心に、ジェイムズ・ジョイスや、68年のパリ5月革命のスローガン、ハーバードの学生たちの会話、ベリオの友人たちとの会話の断片が、ちりばめられている。(中略)《復活》は、川の流れのようにさまざまな引用やテキストの合間を流れ、ときには地下水脈のように姿を隠し、また出現する。」
「もっとも短い部分である第4部では、第1部のテキストの抜粋がもちいられるが、第1部のように、楽器群が次第に活気をおびていくことはない。声による半音程でつみあげられたクラスター、そして楽器群も声と混ざり合い、混沌とし、停止していく。」

「《アインドゥリュケ[複数の痕跡]》。ポスト構造主義の用語をタイトルとする10分ほどのオーケストラ作品は、ポスト構造主義者たちが言及した「反復と差異のプロセス」の音楽ということができるだろう。」
「《アインドゥリュケ》は、1973年から74年にかけて作曲されたオーケストラ作品である。初演は、74年チューリッヒで、エーリッヒ・ラインスドルフの指揮でおこなわれた。」


◆本CDについて◆ 

輸入盤に投げ込み日本語解説付。原盤ブックレット(全12頁)にトラックリスト&クレジット、Luciano Berioによる「Sinfonia」解説(伊・仏・英・独)、David Osmond-Smithによる解説(英・仏・独)、ブックレット裏表紙に写真図版(モノクロ)1点。投げ込み(十字折り)にトラックリスト&クレジット、川西真理による解説(1991年1月)。

現代音楽というと難解そうですが、ベリオはわかりやすいのでよいです。スウィングル・シンガーズは喋ったりスウィングしたりしています。

★★★★★ 


Sinfonia : III In ruhig fliessender Bewegung