幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

Arzachel  『Arzachel』

Arzachel 
『Arzachel』


CD: Drop Out Records / Demon Records Ltd 
DOCD 1983 (1994) 
Manufactured in England 

 


1. Garden of Earthly Delights  2:44
2. Azathoth  4:22 
3. Queen St. Gang  4:26 
4. Leg  5:41 
5. Clean Innocent Fun  10:28 
6. Metempsychosis  16:51 


All songs written and arranged by Steve Hillage/Dave Stewart/Clive Brooks/Mont Campbell. 
Producer: Peter D. Wicker. 
Licenced in the UK and Eire from Gnome Dust Records, London, (P) 1969


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全8頁)にトラックリスト、「The Story Of Arzachel」(Dave Stewart, London, July 1994)、ブックレット裏表紙にオリジナルLPライナー再録。インレイにクレジット。

「アーザケル」(Arzachelは月のクレーターの名前)は「エッグ」(Egg)の前身バンド「ユリエル」(Uriel)の変名で、ユリエルはのちのエッグのメンバーとスティーヴ・ヒレッジ(のちゴング)によって1968年に結成されましたが、ヒレッジが大学進学のため脱退、三人が残ったユリエルは1969年、エッグに改名してデラム(Deram)レーベルと契約、そこにEvolutionレーベル――1970年にロウ・マテリアル(Raw Material)の1stをリリースしています――からサイケ・ロックのレコード制作のアルバイトの話が舞い込んだので、ヒレッジを呼んで9時間でレコーディング、バレないようにバンド名のみならずメンバー名も変名で(ヒレッジ=Simeon Sasparella、デイヴ・スチュワート=Sam Lee-Uff、モント・キャンベル=Njerogi Gategaka、クライヴ・ブルックス=Basil Dowling)1969年にリリースされたのが本作です。
#1、4はモント・キャンベル作で、#1はモントのお祖父さんが作った曲(歌詞はフィリップ・ロセターの『A Book of Aires』所収「And would you see my mistress' face」)が、#3は当時のテレビ・コメディ「Queen Street Gang」のテーマ曲が元になっているようです。
#2はデイヴ・スチュワート作。Azathothはクトゥルークトゥルフ)神話に登場する〈蕃神〉の名前ですが、そういえばキャラヴァンにもクトゥルー神話をテーマにした曲(「C'thlu Thlu」)がありました。#4、5はヒレッジがブルース曲(ロバート・ジョンソンの「ローリン・アンド・タンブリン」等)を元に作った曲。#6は長尺穴埋めインプロヴィゼーション
全体的にキース・エマーソン&ザ・ナイスの影響が大きいですが、#6はシド・バレット期のピンク・フロイドを髣髴させます。本作をきくと、エッグというのはサイケデリックカンタベリー・ロック・バンドだったのだなと納得されます。デイヴ・スチュワートがフェルトペンで描いたというジャケ絵もサイケでよいです。

本作は2007年にEgg Archiveからボーナス・トラック(ユリエルの1968年デモ&ライヴ音源およびモント・キャンベルの両親が1961年に録音したレア音源の計6曲)入りの「Collectors Edition」がリリースされています。

★★★★☆


Metempsychosis