幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『武満徹:ウォーター・ドリーミング~フルート作品集』  ガロワ

武満徹:ウォーター・ドリーミング~フルート作品集』 
ガロワ

Takemitsu 
I Hear The Water Dreaming 

Patrick Gallois 
Fabrice Pierre 
Göran Söllscher 
BBC Symphony Orchestra 
Andrew Davis 


CD: Deutsche Grammophon 
制作:ユニバーサル クラシックス&ジャズ 
発売・販売元:ユニバーサル ミュージック合同会社 
シリーズ:スタンダード・コレクション 
UCCG-4706 (2010年) 
税込¥1,600(税抜¥1,524) 
Made in Japan 

 


帯裏文:

「独自の作風を確立し異例ともいえるポピュラリティを獲得した作曲家、武満徹。フルートに愛着を抱いていた彼は、インディアナ・ポリス紙が「フルートという楽器を熟知した武満」と絶賛した《ウォーター・ドリーミング》をはじめ、この楽器のために多くの作品を残しました。これらの作品に魅了された名フルート奏者ガロワの卓越した技巧と豊かな音色を駆使した演奏で、1975年から95年までの20年間に書かれた主要な作品を収録しています。」


武満徹 
Toru Takemitsu (1930-1996) 

[1] ウォーター・ドリーミング 10:50 
I hear the Water Dreaming (1987) 
フルートと管弦楽のための 
for flute and orchestra 

海へⅠ 
Toward the Sea I (1981) 
アルト・フルートとギターのための 
for alto flute and guitar 
[2] 第1曲:夜 3:23 
1.The Night 
[3] 第2曲:白鯨 4:06 
2. Moby Dick 
[4] 第3曲:鱈岬 3:42 
3. Cape Cod 

エリック・サティ 
Erik Satie (1866-1925) 
編曲:武満徹 
arranged by Toru Takemitsu 
[5] 第1幕への前奏曲《天職》 4:15 
Prélude du 1er Acte "La Vocation" 
(劇音楽《星たちの息子》から) 
from "Le Fils des Étoiles" (1918) 
フルートとハープのための 
for flute and harp (1975) 
en blanc et immobile  

武満徹 
Toru Takemitsu 

海へⅡ 
Toward the Sea II (1981) 
アルト・フルート、ハープと弦楽オーケストラのための 
for alto flute, harp and string orchestra 
[6] 第1曲:夜 3:32 
1. The Night 
[7] 第2曲:白鯨 3:56 
2. Moby Dick 
[8] 第3曲:鱈岬 3:40 
3. Cape Cod 

[9] そして、それが風であることを知った 13:10 
And then I knew 'twas wind (1992) 
フルート、ヴィオラとハープのための 
for flute, viola and harp 

海へⅢ 
Toward the Sea III (1989) 
アルト・フルートとハープのための 
for alto flute and harp 
[10] 第1曲:夜 3:29 
1. The Night 
[11] 第2曲:白鯨 3:55 
2. Moby Dick 
[12] 第3曲:鱈岬 3:32 
3. Cape Cod 

[13] エア 5:36 
Air (1995) 
フルートのための 
for flute 


パトリック・ガロワ(フルート) 
Patrick Gallois, flute 
イョラン・セルシェル(ギター)([2]-[4]) 
Göran Söllscher, guitar 
ファブリス・ピエール(ハープ)([5]-[12]) 
Fabrice Pierre, harp 
ピエール=アンリ・ズエレブ(ヴィオラ)([9]) 
Pierre-Henri Xuereb, viola 
BBC交響楽団/指揮:アンドリュー・デイヴィス([1], [6]-[8]) 
BBC Symphony Orchestra / Conducted by Andrew Davis 


録音:1996年9月 ロンドン 
Recording: London, The Warehouse (2-5, 9-13); London, Abbey Road Studios, Studio one (1, 6-8), 9/1996 
Executive Producers: Dr. Marion Thiem / Nigel Boom (2-5, 9-13) 
Recording Producer: Sid McLauchlan 
Tonmeister (Balance Engineer): Gernot von Schultzendorff 
Recording Engineer: Rainer Höpfner 
Editing: Reinhild Schumidt (2-5, 9-13); Mark Buecker (1, 6-8) 


(P) 2000 Deutsche Grammophon GmbH, Hamburg 


◆アンソニー・バートンによる解説(訳:佐藤みどり)より◆

「《海へ》には3つの版がある。第1のものはアルト・フルートとギターのために1981年に書かれ、グリーンピース基金の「鯨を救え」というキャンペーンに貢献した。その3つの楽章のタイトルはハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に着想を得ている。小説では、鯨はついに漁師たちに勝利するが、武満はむしろ「精神領域」としての海に関心を抱いており、それが彼が引用している小説の次の部分にも示されている。
 「放心状態の人には彼のこの上なく深い夢に落ち込ませておけ……そして彼は間違いなく人を水へと導く……そうだ、皆が知るとおり、瞑想と水とは結び付くのだ」。」
「この作品の最初の編曲であるアルト・フルート、ハープと弦楽オーケストラのための《海へⅡ》は同じ1981年の内に作られたが、アルト・フルートとハープのための《海へⅢ》が作られたのは89年になってからである。」
「フルートとオーケストラのための《ウォーター・ドリーミング》は、1987年にアメリカのフルート奏者ポーラ・ロビンソンのために作曲された。この曲においては水の想念が、武満の音楽観におけるもうひとつの中心である「夢」に結びつけられている。しかし、『白鯨』の引用のように、その結び付きには別の芸術形式が介在する。ここではオーストラリア西部の「ウォーター・ドリーミング」と呼ばれる、神話的象徴に満ちたアボリジニの絵である。」
「1992年にフルート、ヴィオラとハープのために書かれた《そして、それが風であることを知った》では、夢の想念は水ではなく空気と結びつけられている。武満はこの作品の題をエミリー・ディキンスンの詩から取っており、「この主題は、自然界における風のしるしでもあり、魂あるいは無意識の記憶(それを「夢」と呼んでもよい)のしるしでもある。後者も人間の意識を通して目に見えない風のようにいつも息づいているのである」と説明している。(中略)この曲はスイスの名フルート奏者オーレル・ニコレのために書かれた。また、1995年の年末にフルート独奏のための《エア》を書いたのは、70歳の誕生日を迎えるニコレをたたえてのことであった。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(三つ折り)にアンソニー・バートン/パトリック・ガロワによる解説(訳:佐藤みどり)、「演奏者について(ドイツ・グラモフォン資料から)」(訳:福田弥)、クレジット。インレイにトラックリスト&クレジット。

1967年の「ノヴェンバー・ステップス」は尺八&琵琶とオーケストラによる東洋と西洋の出会いでしたが、本作収録曲では東洋と西洋の出会いが西洋の楽器のみで実現されています。というか、フルートもハープももとをただせば東洋の楽器なので、楽器の中に眠っている太古の記憶をよみがえらせているといってもよいです。

★★★★★ 


I Hear the Water Dreaming