幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

Phew  『Phew』 

Phew 
Phew』 


CD: PASS RECORDS/P-VINE RECORDS/BLUES INTERACTIONS, INC. 
SSAP-006 (2005年) 
定価2,100(税抜価格¥2,000) 

 


帯文:

「日本のロック史
のみならず、
世界の
ロックの歴史に
刻まれたアルバム! 
けっして
古びることのない
奇跡の
サウンドを!」


帯裏文:

「●なぜあの時、世界の先鋭的なミュージシャンはコニー・プランクのもとで”音”を創りたがっていたのか? クラフトワークやノイ!、DAF、イーノらの傑作群を生み出した伝説のコニーズ・スタジオに、元アーント・サリー、現MOST、Big PictureのPhewを迎えて制作されたアルバム『Phew』(81年発表)。
●テクノやポスト・ロックにも多大な影響を与えるジャーマン・ロック・バンド、カンの元メンバー、ホルガー・シューカイとヤキ・リーベツァイトが参加。
●コニー・プランクの卓越したエンジニアリングと、ホルガー・シューカイがエディティングの妙を駆使したその斬新な音世界は、現在においても未だ色褪せることのない孤高の響き。
●未発表曲「Kodomo」を含む、ドイツ・オリジナル編集によるデジタル・リマスタリング完全盤。」

 

本CDブックレットより。

本CDブックレットより。ハラスメント?



Phew 


1. Closed 
2. Signal 
3. Kodomo 
4. Dream 
5. Mapping 
6. Aqua 
7. P-Adic 
8. Doze 
9. Fragment 
10. Circuit 


Played + Produced by 
Phew, Jaki Liebezeit, Holger Czukay, Conny Plank, Yoshitaka Goto 

Recorded and Mixed at: Conny's Studio, Czukay's Editing Laboratory 
Recording Engineer: Conny Plank 

Cover photo by: Hiroya Kaji 
Designed by: Takanobu Morinaga 

Mastered by: Hiroshi Shiota at Tokyo Recording Co., Ltd. 

Inner Photos by: Yoshitaka Goto 
Package Designed by: Yoshinobu Arima 

Supervised by: Yoshitaka Goto 


◆加藤彰によるライナーノーツより◆ 

「このアルバムは1981年の1月から2月の間、西ドイツ(当時)ケルンのコニーズ・スタジオにおいて制作された。レコーディング・メンバーはフュー、ホルガー・シューカイ、ヤキ・リーベツァイト、そしてコニー・プランクというラインアップ。この4人が作編曲に共同で当たり、また各楽曲はトラック・ダウンの段階に至るまで、その輪郭と構成を描き直される編集的な手法が採用されている。「Played +Produced by」につづくメンバーの連名、および「Recorded and Mixed at: Conny's Studio, Czukay's Editing Laboratory」といったクレジット(脚注:81年のリリース当時は「MUSIC BY: PHEW, HOLGER CZUKAY, JAKI LIEBEZEIT, CONNY PLANK」とされ、また「PRODUCED BY」にはこの4名に加えて後藤美孝の名前がアルファベットでつづられていた(実際には後藤も演奏に参加したとのこと)。)は、そうした事情を知らせるものだ。」
「編集的な手法といえば、前年にPASSレコードで制作されたフューのシングル「終曲 c/w うらはら」も同様だった。これはフューがカセット・テープにアカペラで吹き込んだ歌を坂本龍一が受け取り、ヴォーカルへのイコライジングシンセサイザーなどによるバッキングを加えて楽曲の形にまとめ上げたものだ。さて、このシングルはどういう経路によるものかイギリスのヴァージン・レコードにも送られ、パブリック・イメージ・リミテッドのベーシスト、ジャー・ウォブルが入手する。彼はホルガー・シューカイと共にラジオ番組にゲストとして出演した際、このレコードをオン・エアさせた。その際、シューカイは「うらはら」に強い関心を示したという。」
「アルバムは81年6月、PASSレコードからリリースされた。」
「今回の再発にあたっては、収録を予定しながらオミットされたという「KODOMO」が3曲目に配置され、すなわちこれがオリジナルに戻された形だという(脚注:81年盤では3曲目だった「DOZE」が8曲目に移り、あとは8→9、9→10と1曲ずつズレた格好。なお、「DREAM」「AQUA」は81年盤では日本でヴォーカルを録音し直したものだったが、今回はオリジナル・ミックスが収録された。)。」


◆本CDについて◆ 

紙ジャケット(A式シングル)。ブックレット(全12頁)にトラックリスト&クレジット、加藤彰によるライナーノーツ、写真図版(Conny's Studio/Czukay's Editing Laboratory/track sheet)カラー5点、モノクロ9点。

本作「Phew」のCDは大まかに言うと4通りあって、
①1988年の32WXD-104と1996年のWAX-6はオリジナルLPのCD化(全9曲)。
②2001年のWAX-101(紙ジャケ)はオリジナルLP(「Dream」「Aqua」は田中信一による日本側ミックス)にボーナス・トラックとして「Dream」「Aqua」のコニー・プランクによるミックス(未発表)を追加収録(全11曲)。
③2005年のSSAP-006(本CD)は日本側ミックスの2曲をコニー・プランクによるミックスと差し替え、LP未収録の「Kodomo」を追加して編集し直したもの(全10曲)。
④2014年のCRCD5092と2016年のCRCD5135(紙ジャケ)はオリジナルLP+ボーナス・トラックとしてシングル「終曲/うらはら」を収録(全11曲)。
となっていて、「Kodomo」は本CDでしかきけないですが、コドモ的なものへの悪意を秘めたこの曲と、20年後のBig Pictureでの「子供のように」(2001年)をききくらべてみると、ある種の感慨を覚えずにはいられないです。

ジャケット・デザインからしてそうですが、余白の美というか、何もない匿名の空間に最小限の音と言葉が自然発生的に生成し変化していく本作は、音と言葉それ自体は連句のように寡黙でありながらも、ジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』『ユリシーズ』(歴史という悪夢)あるいは夢野久作の『ドグラ・マグラ』(胎児の夢)のように終わりと始まりがつながって永劫回帰していく(circuit)、そういうサウンド・デザインになっています。

★★★★★ 


Dream


Kodomo


子供のように(Big Picture)