幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

Vashti Bunyan 『Some Things Just Stick In Your Mind (Singles and Demos 1964 to 1967)』

Vashti Bunyan 『Some Things Just Stick In Your Mind (Singles and Demos 1964 to 1967)』 

ヴァシュティ・バニヤン 
サムシングス・ジャスト・スティック・イン・ユア・マインド


CD: FatCat Records / Spinney 
FATCD-59 (2007) [2CD] 
Made & Printed in England 

Hostess 
FATCD59J 
定価2,615円(税抜価格2,490円)

 


帯文:

「37年前、一枚だけアルバムを残し、姿を消した孤高のシンガー・ソングライター、ヴァシュテイ・バニヤンが1964年から1967年までに録音した幻の作品がリマスターされ奇跡的にリリースされる!未発表音源や最近発見されたばかりのデモ、そして今では入手困難な初期作品がギッシリと詰まった2枚組。」
「日本流通盤のみボーナストラック4曲、ライナーノーツ付」


帯裏文:

「今作には未発表であるヴァシュティの初レコーディング曲(1964年)、さらにはRolling Stonesのミック・ジャガーキース・リチャーズによって作曲された「Some Thing Just Stick In Your Mind」が収録されている事も興味深い。05年に『Lookaftering』で35年ぶりの奇跡のカムバックを果たすと各国のメディアが彼女の作品を大絶賛した事は記憶に新しい。」

 

DISC ONE

1. SOME THINGS JUST STICK IN YOUR MIND (Jagger/Richards) 
[Decca single, 1965]
2. I WANT TO BE ALONE (Bunyan) 
[Decca single, 1965] 
Produced by Andrew Loog Oldham for Andesound 
Arranged by David Whitaker, Session musicians included Big Jim Sullivan, Nicky Hopkins, Jimmy Page, John McLaughlin 
Single released on Decca May 1965 (F.12157)

3. TRAIN SONG (Bunyan-Clayre) 
[Columbia single, 1966] 
4. LOVE SONG (Bunyan) 
[Columbia single, 1966] 
Produced by Peter Snell 
Single released on Columbia June 1966 (DB 7917) 

5. WINTER IS BLUE (Bunyan) 
[Unreleased single for Immediate, 1966] 
Produced by Andrew Oldham 
Arranged by Art Greenslade 
Became part of soundtrack to Peter Whitehead's film 'Tonite Let's All Make Love In London' 

6. COLDEST NIGHT OF THE YEAR (Mann/Weill) 
[Unreleased single as "Twice As Much and Vashti", 1966] 
Twice As Much were Andrew Rose and David Skinner 
Produced by Andrew Oldham for Immediate 
Arranged by Art Greenslade 

7. I'D LIKE TO WALK AROUND IN YOUR MIND (Bunyan) 
[Unreleased single for Immediate, 1967] 
Unreleased single 
Produced by Mike Hurst for Immediate 1967 

8. WINTER IS BLUE (Bunyan) 
[Restored acetate demo, 1966] 
Acetate demo belonging to Jenny Lewis 
With Mike Crowther on guitar 1966

9. GIRL'S SONG IN WINTER (Bunyan-Clayre) 
[John Bunyan's tape, 1966] 
10. IF IN WINTER (100 LOVERS) (Bunyan-Clayre) 
[John Bunyan's tape 1966] 
with Mike Crowther on guitar

11. WISHWANDERER (Bunyan) 
[Restored acetate demo 1967] 
with Mike Crowther on guitar

12. DON'T BELIEVE (Bunyan) 
[John Bunyan's tape 1966]
with Mike Crowther on guitar

13. 17 PINK SUGAR ELEPHANTS (Bunyan-Jenny Lewis) 
[John Bunyan's tape 1966 - written in 1963] 

日本盤ボーナストラック
14. I WON'T SAY 
[John Bunyan's tape 1966, with Mike Crowther on guitar] 
15. GIRL'S SONG IN WINTER 
[John Bunyan's tape 1966, with Mike Crowther on guitar] 
16. IF IN WINTER (100 LOVERS) 
[John Bunyan's tape 1966] 
17. I'D LIKE TO WALK AROUND IN YOUR MIND 
[John Bunyan's tape 1966] 


DISC TWO 
1. AUTUMN LEAVES (Bunyan) 
[1966 Tape] 
2. LEAVE ME (Bunyan) 
[1964 Tape] 
3. IF IN WINTER (100 LOVERS) (Bunyan-Clayre) 
[1964 Tape] 
4. HOW DO I KNOW (Bunyan) 
[1964 Tape] 
5. FIND MY HEART AGAIN (Bunyan) 
[1964 Tape] 
6. GO BEFORE DAWN (Bunyan) 
[1964 Tape] 
7. GIRL'S SONG IN WINTER (Bunyan-Clayre) 
[1964 Tape] 
8. I DON'T KNOW WHAT LOVE IS (Bunyan) 
[1964 Tape] 
9. DON'T BELIEVE WHAT THEY SAY (Bunyan) 
[1964 Tape] 
10. LOVE YOU NOW (Bunyan) 
[1964 Tape] 
11. I KNOW (Tony Maude) 
[1964 Tape] 
12. SOMEDAY (Bunyan) 
[1964 Tape] 
Newly discovered songs on a demo tape recorded in a London studio October 1964 

 


◆日本語解説より◆

ミック・ジャガーキース・リチャーズが提供したヴァシュティのデビュー・シングルよりタイトルがつけられたこの2枚組アルバムは過去の遍歴にスポットを当てると同時に、ヴァシュティが捉えていた自身の音楽と、リスナーが持っているイメージの溝をはっきりと示している。「フォークシンガー」として広く理解されているヴァシュティだが、実際は彼女はその呼び方には根本的に同意していない。」
「ヴァシュティが今作のライナーノーツでも説明しているとおり、「アンドリュー・オールダムが繊細なフォークシンガーを本人の意思に反してポップシンガーにしたてようとした、という噂を聞いたことがある。でも彼はそんなことはしなかったわ。彼の世界にとって、私は繊細すぎたのかもしれない。でもそれは彼のせいではないわ…私はメインストリームのポップスにシンプルでアコースティックな音楽を持ち込みたかったの」。」
「彼女が音楽業界から突然姿を消し、2年間におよぶ馬車の旅に出る前、そして『Just Another Diamond Day』をリリースし「フォークシンガー」のレッテルを貼られる以前にレコーディングされた今作は、(中略)どの曲も尺が短く(その多くは2分にも満たない)、数少ない彼女の楽曲のテーマ(独立し、ほかの土地へ移り住む自由について。愛は気まぐれなことについて、など)を極端なまでに煮詰めた内容になっている。」
「このアルバムはヴァシュティの現存する初期音源、計25曲を2枚のディスクに分けて収録した作品である。そのほとんどが当時のレコーディング用テープや、ヴァシュティの兄弟であるジョンの屋根裏部屋から2、3年前に発見されたものだ。」


◆本CDについて◆

輸入盤国内仕様。2枚組。ハードカバーの本型の紙ジャケット仕様で、見返し部分にCDを入れるポケットが貼付されています。貼付ブックレット(全24頁)にヴァシュティによるライナーノーツ(英文)、Andy "Wipe-Out" Wickhamによる詩。歌詞、クレジット、当時の記事の切り抜き図版19点、写真図版8点。見返し部分に写真図版9点。裏表紙にAndrew Loog Oldhamによるコメント(英文)&トラックリスト。投げ込み(十字折り/片面印刷)に日本語解説(無記名)。

将来どのようにして生計を立てるのかを家族に問われたヴァシュティは「ポップ・シンガーになりたい(I want to be a pop-singer!)」と答えたと自筆ライナーノーツにありますが、「フォーク・シンガー」と「ポップ・シンガー」の違いは何か? どちらも民衆(大衆)のための歌ですが、「フォーク」が民俗伝承あるいは社会問題に関わるものであるのに対して、「ポップ」は個人の生活感情に関わるものであるといえるかもしれないです。ヴァシュティの自伝『Wayward』(2022年)によると、お兄さんの友人の伝手でフォーク界の大物イワン・マッコール&ペギー・シーガー夫妻からアドヴァイスを得ようと家を訪れて自作曲を歌ったところ何の反応もなく、ペギーから「そんなんじゃ長続きしないわよ(beware of the ephemeral)」とだけ言われたということで、しかしヴァシュティがポップ・ソングを好きな理由はまさにそれが「ephemeral(刹那的)」に瞬間瞬間を生きるものだから(「That's exactly what I like about pop songs, that they capture a moment and then you move on to the next one.」)ということです。「女ボブ・ディラン(female Bob Dylan)」などとレッテルを貼られたこともあったようですが、音楽的にはむしろ交友もあったドノヴァンに近いです。オールダムはヴァシュティを第2のマリアンヌ・フェイスフルにしたがっていたようですが、ヴァシュティには「自分はマリアンヌとは違ってソングライターでありミュージシャンである」という自負があり、デビュー・シングルに関してもA面のジャガー/リチャーズ作品よりB面の自作曲の方が気に入っていて、ラジオで「私の曲の方がミックジャガーより良いと思う」と発言してトラブルになったそうです。実際のところ、オーヴァー・プロデュースなタイトル曲(ギターでジミー・ペイジジョン・マクラフリンが参加)より、ディスク2での朴訥な弾き語りの方が興趣は深いです。

★★★★☆


Some Things Just Stick In Your Mind


17 Pink Sugar Elephants


Leave Me