Michael Maier: Atalanta Fugiens
Music, alchemy and Rosicrucianism in the early 17th century
Ensemble Plus Ultra / Michael Noone
CD: Glossa Platinum
GCD P31407 (2011)
Made in the EU
Michael Maier (1569-1622)
Atalanta Fugiens (1617)
1-50
Fugas I-L
total playing time 71:33
Ensemble Plus Ultra
Michael Noone
Grace Davidson, soprano
Clare Wilkinson, alto
Warren Trevelyan-Jones, tenor
Giles Underwood, bass
Stephen Jones, erhu
Sue Addison, sackbut
Marie Bournisien, Renaissance harp
Recorded in St Andrew's Church, Toddington (Gloucerstershire, England), in August 2008
Engineered and produced by Adrian Hunter
Executive producer: Carlos Céster
Booklet essay by Josemi Lorenzo
Photography: Beatriz Moreno & Valentin Iglesias
Design & art direction: valentiniglesias.com
◆本CDについて◆
EU盤。3面デジパック仕様。貼付ブックレット(全63頁)にクレジット、Josemi Lorenzoによる解説(スペイン語原文&英・仏・独訳)、歌詞(ラテン語原文&独・英訳)、「Also on Glossa Platinum...」(CDリスト)、モノクロ図版54点。
マイケル・ヌーン率いるアンサンブル・プラス・ウルトラによる『ミヒャエル・マイアー:逃げるアタランテ~17世紀初頭の音楽、錬金術と薔薇十字団』。
1566年にレンツブルクで生まれ、バーゼルで医学博士号を取得、プラハで皇帝ルドルフ2世の庇護を受けたミヒャエル・マイアーは、薔薇十字団とも関わりがあった錬金術師で、1617年に初版が、翌年に第2版が出版された、50点の寓意画(エンブレム)と寓意的な短詩(エピグラム)と楽譜から成る錬金術文書『逃げる(遁走する)アタランテ(Atalanta Fugiens)』は、1618年版の表題頁の説明文によると、「自然の秘密についての新しい化学的(=錬金術的)寓意画集(エンブレマタ)。(中略)銅版画の図像と付言、警句(エピグラム)、註釈によって眼と知性を娯しませ、(中略)3声部フーガ(=遁走曲)によって耳と魂の回復に適うところのもの。3声部フーガのうち2声は、重唱に適わしい単純な旋律に対応している」(スタニスラス・クロソウスキー・ド・ローラ編/磯田富夫・松本夏樹訳『錬金術図像大全』より)というもので、『禅金術図像大全』の解説によると、「謎めいたヘスペリデス、すなわちアイグレとヘスペラレトゥサとアレトゥサ(ときには4番目のエリュテイアが加えられる)の三姉妹は、ある伝説によればゼウスとテミスの娘たちである。彼女らの園は、意味深長にも(深紅色の砂と太陽神ヘリオスが沐浴する燦く水のある)紅海を越え、世界の西の涯をも越えたところで、黄金の雲に隠されている。そこに至る道は、神の導きなしには発見できない秘密であった。(中略)園内には、神々の女王ヘラへの大地からの贈り物、黄金の林檎が実る樹が生えており、1匹の眼を閉じることのない龍によって守られていた。ヘラクレスはこの守り役を殺害して林檎を得た。ある重要な秘密伝承によれば、この林檎はウェヌス〔アプロディテ〕に与えられたという。」「アタランテの物語はウェヌスによってアドニスに対して語られる(オウィディウス『転身物語』X、560)。その駿足にふさわしいほどに美しかったアタランテは、自分の本性を失うのではないかと惧れ、求婚者には誰であれなびかないと警告していた。彼女は求婚者たちに、自分と競争して勝たなければ殺すと釘を刺したのである。海神ネプトゥヌス〔ポセイドン〕の孫たる若きヒッポメネスは、ウェヌスから3個の林檎を貰った。ウェヌスは彼に、競争中のここぞという時にこの林檎を投げるよう教えた。アタランテが追いつきそうになるたびに、ヒッポメネスは林檎を1個ずつ落とし、それを拾うために彼女は立ち止まった。こうして、ヒッポメネスは競争に勝ったのである。彼は自分の勝利に酔い痴れた後、アタランテへの愛欲に駆られ、神殿の中へ入って思いを遂げた。神々の母は怒りに燃えて、そのとき彼ら二人を二頭の獅子に変えてしまった。」「錬金術の用語によるこの物語の説明はこうである。つまり男性と女性の、硫黄と水銀の相剋、女性の当初の優勢、男性の勝利、そして両原理の固定化(赤き獅子)への変換である。〈賢者の水銀〉の活性は、それゆえ水銀それ自身の硫黄、同一の性質と起源を有するこの硫黄の活動によって固定されるのである(アタランテとヒッポメネスはともに高貴で神聖な家系の出である)。」
本CDは声(ソプラノ、アルト、テノール、バス)と楽器(ハープ、サックバット、二胡)の様々な組み合わせによって、謎めいた錬金術的フーガの迷宮を堪能できるのでよいです。ブックレットには50点の寓意画の図版(かなり小さめですが、画像自体はネットで閲覧可能です)と「エピグラム」のラテン語原文と独・英訳が掲載されています。
★★★★★
Fuga VIII. Accipe ovum & igneo percute gladio. (Take the egg and pierce it with a sword of fire.)
Category:Atalanta Fugiens - Wikimedia Commons
「Est avis in mundo sublimior omnibus, Ovum
Cujus ut inquiras, cura sit una tibi.
Albumen luteum circumdat molle vitellum,
Ignito (ceu mos) cautus id ense petas:
Vulcano Mars addat opem: pullaster et inde
Exortus, ferri victor et ignis erit.
(In this world there exists a bird more sublime than all the rest,
And your sole preoccupation will be to go in search of its egg.
The soft albumen surrounds the golden yolk.
With care, hit it with a glowing sword (as is the practice).
Mars must go in help of Vulcan;
A chicken will be born, vanquisher of iron and fire.)」