サード・イアー・バンド 『マクベス』
Third Ear Band's
music from
Macbeth
CD: 東芝EMI株式会社
シリーズ:Progressive Rock Series
TOCP-7371 (1992年)
税込定価2,300円(税抜価格2,233円)
Made in Japan
帯文:
「夢幻のサウンド・トリップへ誘う幻視の音楽集団サード・イアー・バンドが
シェイクスピアの世界に挑んだ異色の作品。名匠ロマン・ポランスキー監督の
同名映画のサントラとして制作された法悦の世界(72年作品)」
マクベス/サード・イアー・バンド
1.序曲
OVERTURE 4:19
2.浜辺にて
THE BEACH 1:52
3.レディー・マクベス
LADY MACBETH 1:43
4.インヴァネス(マクベスの帰還~準備~ファンファーレ~ダンカンの到着)
INVANES: MACBETH'S RETURN - THE PREPARATION - FANFARE - DUNCAN'S ARRIVAL 4:55
5.宴にて
THE BANQUET 1:17
6.剣と死
DAGGER AND DEATH 2:45
7.泉にて~プリンセス・エスケープ~戴冠式~カム・シーリング・ナイト
AT THE WELL - THE PRINCES' ESCAPE - CORONATION - COME SEALING NIGHT 2:15
8.宮廷の舞踏会
COURT DANCE 3:07
9.フリーンス
FLEANCE 3:57
10.グルームズ・ダンス
GROOMS' DANCE 4:17
11.ベア・ベイティング
BEAR BAITING 1:09
12.待ち伏せ~バンクォーズ・ゴースト
AMBUSH - BANQUO'S GHOST 2:24
13.ゴーイング・トゥ・ベッド~ブラインド・マンズ・パフ~死者への祈り~枯れた黄色い葉
GOING TO BED - BLIND MAN'S PUFF - REQUIESCANT - SERE AND YELLOW LEAF 2:59
14.大釜
THE CAULDRON 2:47
15.予言
PROPHESIES 1:44
16.ウィッカ・ウェイ
WICCA WAY 1:24
All titles composed by Bridges-Sweeney-Minns-Buckmaster
◆本CDについて◆
ジュエルケース(白トレイ)。ブックレット(全8頁)にトラックリスト、大鷹俊一による解説(1992年6月12日)、「FLEANCE」歌詞(聞き取り)、「PROGRESSIVE ROCK SERIES」CDリスト、ブックレット裏表紙にオリジナルLP裏ジャケット。
ちなみに本シリーズのラインナップは『ホークウィンド/ドレミファソラシド』『コックニー・レベル/美しき野獣の群れ』『シド・バレット/帽子が笑う…不気味に』『シド・バレット/その名はバレット』『ピート・ブラウンとバタード・オーナメンツ ウィズ クリス・スペディング』『クリス・スペディング/無言歌』『ルネッサンス/プロローグ』『ビー・バップ・デラックス/プラスティック幻想』『バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト/ワンス・アゲイン』そして本作でした。
1978年代末(パンクの台頭)から1980年代半ば(CDの登場)にかけてはプログレッシヴ・ロックの不遇時代で、多くのプログレバンドが商業ロック化、ディスコ化、フュージョン化、ニューウェーヴ化の末、泡沫のように消えていきましたが、それはまだいいほうで、サード・イアー・バンドなどは名前こそ知られてはいたものの、LPは入手困難、ラジオでも放送されない、そんな中で本作『マクベス』だけはサントラゆえに、テレビの映画番組で放映されて耳にする機会を得たのは勿怪の幸いでした。その点ではドイツのポポル・ヴーなども同様です。
そのポランスキーのマクベスはまさに鬼気迫る名作でしたが、マクベスとはそもそも何なのか。本作のジャケ絵はロジャー・ディーンが手掛けていますが、手前には砂浜で死人の手首を埋めて呪いをかける三人の魔女の姿が大きく描かれ、そしてその背後から馬に乗って近づいてくるマクベスの姿がぼんやりと見えています。マクベスはこのあと魔女たちから「王になる」と予言されて、いずれなるならそれまで大人しく待っていればいいものを、自ら現王を殺して王位につきますが、盛者必衰の理、すぐまた自分も殺されてしまいます。三人の魔女はギリシア神話の運命の三女神の零落した姿でしょう。運命とはすなわち自然のなりゆきであって、マクベスは文明の利器である剣の力で自由意志的に運命の進行を早めたり、運命にあらがおうとして結局は剣によって滅んでしまいます。魔女術(Wiccan way)とは要するに自然崇拝であり、魔法とはエコロジーに他ならないです。それに対して、剣の人であるマクベスは文明人であり、文明から見れば魔女=自然が悪であり「汚い」ものですが、魔女の世界観から見れば文明こそが自然を破壊する悪であり、「きれいはきたない、きたないはきれい(Fair is foul, and foul is fair)」です。『マクベス』の主題は自然と文明の戦いであって、マクベスなどは風前の灯のように消えてゆく文明の塵のひとつにすぎないといってもよいです。
★★★★★
Wicca Way