フィッシャー=ディースカウ
シューベルト 歌曲集《白鳥の歌》
7つの歌曲:音楽に寄せて/野薔薇、他
ジェラルド・ムーア(ピアノ)
DIETRICH FISCHER-DIESKAU
Schubert: Schwanengesang / 7 Lieder
GERALD MOORE
CD: Deutsche Grammophon
発売:ポリドール株式会社
POCG-1168 (1990年)
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427)
Made in Japan

帯裏文:
「F=ディースカウにとって3度目の録音にあたるこのディスクは、以前のものに見うけられた過度の文学的傾斜も是正され、声の状態もかなり良いという点で他の録音に比べ抜きんでている。特に後半のハイネの詩による6曲における理解の深さは驚嘆すべきものがあり、豊かな音楽性と円熟味を感じさせてくれる《白鳥の歌》と言えよう。」
フランツ・シューベルト
FRANZ SCHUBERT (1797-1828)
歌曲集《白鳥の歌》 D957
Schwanengesang D 957
14 Lieder nach Gedichten von Ludwig Rellstab / Heinrich Heine / Johann Gabriel Seidl
1.1.愛の使い(レルシュターブ) 2:43
Liebersbotschaft (Rellstab)
2.2.戦士の予感(レルシュターブ) 4:30
Kriegers Ahnung (Rellstab)
3.3.春の憧れ(レルシュターブ) 3:14
Frühlingssehnsucht (Rellstab)
4.4.セレナーデ(レルシュターブ) 3:40
Ständchen (Rellstab)
5.5.すみか(レルシュターブ) 3:19
Aufenthalt (Rellstab)
6.6.遠い地にて(レルシュターブ) 5:30
In der Ferne (Rellstab)
7.7.別れ(レルシュターブ) 4:20
Abschied (Rellstab)
8.8.アトラス(ハイネ) 2:11
Das Atlas (Heine)
9.9.彼女の肖像(ハイネ) 2:51
Ihr Bild (Heine)
10.10.漁師の娘(ハイネ) 2:00
Das Fischermädchen (Heine)
11.11.都会(ハイネ) 2:54
Die Stadt (Heine)
12.12.海辺にて(ハイネ) 4:31
Am Meer (Heine)
13.13.影法師(ハイネ) 4:23
Der Doppelgänger (Heine)
14.14.鳩の便り(ザイドル) 3:32
Die Taubenpost (Seidl)
7つの歌曲
7 Lieder
15.1.音楽に寄せて(ショーバー) 2:33
An die Musik D 574 (Schober)
16.2.シルヴィアに(シェイクスピア) 2:41
An Silvia D 891 (Shakespeare)
17.3.野薔薇(ゲーテ) 1:42
Heidenröslein D 257 (Goethe)
18.4.夕映えのなかで(ラッペ) 4:09
Im Abendrot D 799 (Lappe)
19.5.ミューズの子(ゲーテ) 2:04
Der Musensohn D 764 (Goethe)
20.6.ます(シューバルト) 1:57
Die Forelle D 550 (Schubart)
21.7.死と乙女(クラウディウス) 2:29
Der Tod und das Mädchen D 531 (Claudius)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
Dietrich Fischer-Dieskau, Bariton
ジェラルド・ムーア(ピアノ)
Gerald Moore, Piano
プロデューサー:Dr. エレン・ヒックマン(D957)、オットー・ゲルデス
ディレクター:コード・ガーベン(D957)、ライナー・ブロック
レコーディング・エンジニア:ハンス=ペーター・シュヴァイクマン
データ:1966年12月、1967年1、6月、1969年2、3月(7つの歌曲)/1972年3月(D957)、ベルリン、Ufaスタジオ
解説書表:水彩画「川」、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ画
◆石井不二雄による解説より◆
「歌曲集《白鳥の歌》のこと
レルシュターブ歌曲7曲とハイネ歌曲6曲は同じ楽譜帖に続けて書かれており、しかも作曲時期の記入がレルシュターブによる第1曲《愛の使い》の冒頭に一ヵ所あるだけなので、この13曲はシューベルト自身がひとつの歌曲集にまとめるつもりでいたとも考えられ、それを友人たちに献呈する予定であったとも言われている。しかし、レルシュターブ歌曲とハイネ歌曲との間には大きな、対照的とも言える性格の相違があり、またシューベルト自身が(中略)ハイネ歌曲だけを切り離して出版交渉を行っていることから、別々の歌曲集にするつもりであったという考え方も否定できない。しかしいずれにしても、一曲一曲は独立した内容を持っており、(中略)一貫した筋ないしは内容的まとまりを持つ「連作歌曲集」の範疇には入らない。
シューベルトの死後レルシュターブ歌曲とハイネ歌曲の原稿は、ウィーンの出版商トビーアス・ハースリンガーによって買い取られ、白鳥は死に際に最も美しく啼くという俗説に因む《白鳥の歌》の題名を付けて1829年5月に出版されたが、その際にハースリンガーは文字通りシューベルトの最後の作品である〈鳩の便り〉を第14曲として付け加えたのであった。」
◆佐々木節夫による解説より◆
「7つの歌曲
ここに聴かれる7曲は、この《白鳥の歌》のディスクの余白の充実のために、シューベルトの歌曲のなかから厳選されたもので、シューベルトの歌曲中に「7つの歌曲」と名づけられた集成がある訳でないことは言うまでもない。いずれも彼の歌曲のうちでもきわめて広く親しまれた作品である。」
◆本CDについて◆
ジュエルケース(黒トレイ)。インレイにカラー写真(フィッシャー=ディースカウ)1点。ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、「レパートリーの多様性(スペクトル)」(フィッシャー=ディースカウの言葉より)、解説(石井不二雄/佐々木節夫)、フィッシャー=ディースカウについて、歌詞(ドイツ語)&対訳(石井不二雄)、モノクロ図版(フランツ・シューベルト)1点、裏表紙にモノクロ写真(フィッシャー=ディースカウ)1点。
1985年にフィッシャー=ディースカウの還暦を記念して企画された、ジャケットにフィッシャー=ディースカウ自筆の水彩画をあしらったCDシリーズの再発盤です。
歌曲「海辺にて」「影法師(ドッペルゲンゲル)」は、梶井基次郎「Kの昇天」で言及されています。
「私は海の方に向き直って口笛を吹きはじめました。それがはじめは無意識にだったのですが、あるいは人影になにかの効果を及ぼすかもしれないと思うようになり、それは意識的になりました。私ははじめシューベルトの「海辺にて」を吹きました。ご存じでしょうが、それはハイネの詩に作曲したもので、私の好きな歌の一つなのです。それからやはりハイネの詩の「ドッペルゲンゲル」。これは「二重人格」というのでしょうか。これも私の好きな歌なのでした。」
「「先刻あなたはシューベルトの『ドッペルゲンゲル』を口笛で吹いてはいなかったですか」」
「「影と『ドッペルゲンゲル』。私はこの二つに、月夜になれば憑かれるんですよ。この世のものでないというような、そんなものを見たときの感じ。――その感じになじんでいると、現実の世界が全く身に合わなく思われて来るのです。だから昼間は阿片喫煙者のように倦怠(けんたい)です」」
★★★★★
影法師 Der Doppelgänger
Still ist die Nacht, es ruhen die Gassen,
In diesem Hause wohnte mein Schatz;
Sie hat schon längst die Stadt verlassen,
Doch steht noch das Haus auf demselben Platz.
Da steht auch ein Mensch und starrt in die Höhe,
Und ringt die Hände vor Schmerzensgewalt;
Mir graust es, wenn ich sein Antlitz sehe, -
Der Mond zeigt mir meine eigne Gestalt.
Du Doppelgänger! du bleicher Geselle!
Was affst du nach mein Liebesleid,
Das mich gequält auf dieser Stelle,
So manche Nacht, in alter Zeit?
石井不二雄による訳:
「物音の絶えた夜、町並は静まっている、
この家に僕の恋人が住んでいた。
彼女はずっと前に町を去ったが、
家は相変らず同じところに立っている。
そこにも人が一人いて、虚空を見つめ、
激しい苦痛に組んだ手をよじる。
僕はその顔を見て、ぞっとする。
月が照らし出したのは僕自身の姿なのだ。
おまえ影法師よ! 青白い顔をした仲間よ!
どうしておまえは真似るのか、
昔、夜毎夜毎この場所で
僕をさいなんだ愛の苦しみを?」