フィッシャー=ディースカウ
シューマン《詩人の恋》
リーダークライス作品39
《ミルテの花》より
クリストフ・エッシェンバッハ(ピアノ)
DIETRICH FISCHER-DIESKAU
Schumann: Dichterliebe / Liederkreis op. 39
≫Myrten≪: 7 Lieder
CHRISTOPH ESCHENBACH
CD: Deutsche Grammophon
発売:ポリドール株式会社
POCG-1132 (1990年)
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427)
Made in Japan
帯裏文:
「F・ディースカウはオペラ、リート、その他声楽作品に彼の声域で歌唱可能なものすべてを、的確ですばらしい表現と強い説得力を持って聞かせてくれる今世紀最大の名バリトンです。このCDにおける彼はすばらしい声のコントロールによって、陰りを帯びたシューマン独特の世界と詩人ハイネの奥深い世界まで入りこみ、鋭い心理描写を実現させています。また、エッシェンバッハの伴奏も充実し、このCDを際立たせています。レコード・アカデミー賞受賞盤。」
ロベルト・シューマン
ROBERT SCHUMANN (1810-1856)
詩人の恋 作品48
Dichterliebe op. 48
作詩:ハインリヒ・ハイネ
Liederzyklos aus dem Buch der Lieder von Heinrich Heine
1.1.うるわしくも美しい5月に 1:32
Im wunderschönen Monat Mai
2.2.ぼくの涙はあふれ出て 0:57
Aus meinen Tränen sprießen
3.3.ばらや、百合や、鳩 0:31
Die Rose, die Lilie, die Taube, die Sonne
4.4.ぼくがきみの瞳を見つめると 1:43
Wenn ich in deine Augen seh
5.5.ぼくの心をひそめてみたい 0:54
Ich will meine Seele tauchen
6.6.ラインの聖なる流れの 2:28
Im Rhein, im heiligen Strome
7.7.ぼくは恨みはしない 1:31
Ich grolle nicht
8.8.花が、小さな花がわかってくれるなら 1:17
Und wüßten's die Blumen, die kleinen
9.9.あれはフルートとヴァイオリンのひびきだ 1:28
Das ist ein Flöten und Geigen
10.10.かつて愛する人のうたってくれた 1:47
Hör' ich das Liedchen klingen
11.11.ある若ものが娘に恋をした 1:00
Ein Jüngling liebt ein Mädchen
12.12.まばゆく明るい夏の朝に 2:31
Am leuchtenden Sommermorgen
13.13.ぼくは夢のなかで泣きぬれた 2:12
Ich hab im Traum geweinet
14.14.夜ごとにぼくはきみを夢にみる 1:26
Allnächtlich im Traume seh ich dich
15.15.むかしむかしの童話のなかから 2:27
Aus alten Märchen winkt es
16.16.むかしの、よこしまな歌草を 4:32
Die alten bösen Lieder
リーダークライス 作品39
Liederkreis op. 39
作詩:ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ
nach Gedichten von Joseph von Eichendorff
17.1.異国で 1:56
In der Fremde
18.2.間奏曲 1:32
Intermezzo
19.3.森の語らい 2:06
Waldesgespräch
20.4.しずけさ 1:24
Die Stille
21.5.月夜 3:39
Mondnacht
22.6.美しい異国 1:14
Schöne Fremde
23.7.古城から 3:05
Auf einer Burg
24.8.異国で 1:23
In der Fremde
25.9.悲しみ 2:16
Wehmut
26.10.たそがれどき 3:04
Zwielicht
27.11.森のなかで 1:21
Im Walde
28.12.春の夜 1:06
Frühlingsnacht
ミルテの花 作品25より
Myrten op. 25
(Auswahl)
29.1.献呈(リュッカート) 2:09
Widmung (Rückert)
30.2.自由な心(ゲーテ) 1:11
Freisinn (Goethe)
31.3.くるみの木(モーゼン) 3:07
Der Nußbaum (Mosen)
32.4.はすの花(ハイネ) 1:35
Die Lotosblume (Heine)
33.5.護符(ゲーテ) 2:12
Talismane (Goethe)
34.6.やまびとの離郷(バーンズ) 1:26
Hochländers Abschied (Burns)
35.7.きみは花のよう(ハイネ) 1:48
Du bist wie eine Blume (Heine)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
Dietrich Fischer-Dieskau, Bariton
クリストフ・エッシェンバッハ(ピアノ)
Christoph Eschenbach, Piano
プロデューサー、ディレクター:コード・ガーベン
レコーディング・エンジニア:カール=アウグスト・ネーグラー、ハンス=ペーター・シュヴァイクマン
データ:1974年1、4月、1975年4月、1976年4月 ベルリン、ランクヴィッツ・スタジオ
解説書表紙:水彩画「モミの木」、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ画
◆本CDについて◆
ジュエルケース(黒トレイ)。インレイにカラー写真(フィッシャー=ディースカウ)1点。ブックレット(全32頁)にトラックリスト&クレジット、「音楽のロマン性」(フィッシャー=ディースカウの言葉より)、解説(喜多尾道冬)、フィッシャー=ディースカウについて、歌詞(ドイツ語)&対訳(喜多尾道冬)、モノクロ図版(ロベルト・シューマン)1点、アーティスト写真(モノクロ)2点。
1985年にフィッシャー=ディースカウの還暦を記念して企画された、ジャケットにフィッシャー=ディースカウ自筆の水彩画をあしらったCDシリーズの再発盤です。
「詩人の恋」はハイネ、リーダークライス作品39はアイヒェンドルフの詩に基いています。この2つの歌曲集は1979年にLPとしてリリースされています。
「ミルテの花」は全26曲中18曲がリーダークライス作品24(詩:ハイネ)と共に1975年にLPリリースされていますが、本CDにはそこから7曲が収録されています。
アイヒェンドルフ『愉しき放浪児』(関泰祐訳)より:
「月は皎々と照り、山々からは静かな夜のなかを樹立のざわめくのが聞え、樹々と月光とに埋もれたような向うの谷間の村ではときおり犬が吠えている。空を仰ぐと雲の片(きれ)が二つ三つゆるやかに月光のなかを流れ、ときおり遠いかなたで星が落ちる。この同じ月が、とぼくは考えた、おやじの水車小屋のうえにも、伯爵の白い邸宅のうえにも、このように照っているであろう。あのお邸ではいまごろはもう何もかもひっそりとして、令嬢は眠り、庭の噴水も樹々もあのころと同じようにさやさやと音をたてつづけているであろう。そしてぼくがそこに居ようと他国に居ようと、或は死んでしまおうと、みなにとってはけっきょく何のかかわりもないのだ。――そう思うと、世界は急におそろしく広く大きなものに思われ、そのなかに自分はまったく独りぼっちなのだという気がして、胸の底から泣きたくなった。」
★★★★★
異国で In der Fremde
Aus der Heimat hinter den Blitzen rot
Da kommen die Wolken her,
Aber Vater und Mutter sind lange tot,
Es kennt mich dort keiner mehr.
Wie bald, ach wie bald kommt die stille Zeit,
Da ruhe ich auch, und über mir
Rauscht die schöne Waldeinsamkeit,
Und keiner kennt mich mehr hier.
喜多尾道冬による訳:
「稲妻が赤く明滅する山際のむこうの故郷から
雲が流れてくる。
しかし父も母も世を去って久しい、
故郷ではぼくを知る人はもういない。
すぐにも、ああすぐにもしずかなときがくる、
そのときにはぼくにも安らぎが訪れる。
あたりの森の樹々が美しく、孤独にざわめいている、
ここにぼくがいるのを知るものはもういない。」