幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『Robin Hood: Elizabethan Ballad Settings』 Paul O'Dette 

Robin Hood 
Elizabethan Ballad Settings 
ロビン・フッド~エリザベスⅠ世時代のバラードによるリュート、オルファリオン、シターンのための作品集
Paul O'Dette 
lute, orpharion and cittern 
ポール・オデット(リュート、オルファリオン、シターン) 


CD: harmonia mundi usa 
HMU 907265 (2001) 
Made in Germany 

発売元:株式会社 キングインターナショナル 
KKCC-457 (2001年) 
定価¥2,800(税抜価格¥2,667) 

 


帯文:

「イギリス黄金時代のヒット・ソング」
「今年10月に待望の初来日公演が予定されているアメリカのリュート奏者ポール・オデット。ダウランドの全作品を深い研究の末録音したものは高い評価を受けました。そうした学究的な顔以外に、リュートでジャズやビートルズを弾いてしまうエンターテナーでもあります。最新盤の当ディスクは16世紀後半から17世紀初頭の、いわゆる「イギリス黄金時代」に流行した歌を、同時代のリュート作曲家たちが独奏用に仕上げたものを集めたアルバム。癒しの世界が静かに広がります。」


Robin Hood 
Elizabethan Ballad Settingss for Lute, Orpharion and Cittern 
ロビン・フッド
~エリザベスⅠ世時代のバラードによるリュート、オルファリオン、シターンのための作品集~ 

1. I Cannot keepe my wyfe at howme [Anon.]  1:09 
作曲者不詳:女房を家に閉じ込めたいが 
2. Up tails all [Anon.]  2:05 
作曲者不詳:アップ・テイルズ・オール 
3. The Spanish Pavane [Anon.]  2:39 
作曲者不詳:スペインのパヴァン 
4. Robin Hoode [Mr. Ascue]  4:05 
アスキュー氏:ロビン・フッド 
5. John com Kiss me Now [Anon.]  3:47 
作曲者不詳:ジョンが来て私にキスを 
6. Chromatica Pavana [Peter Philips (1560‐1628)]  7:26 
ピーター・フィリップス(1560-1628):半音階的パヴァナ(パヴァン) 
7. Galliard [Philips]  2:00 
ピーター・フィリップス:ガリアード 
8. Sueit smyling Katie loves me [Anon. (Scottish)]  2:40 
作曲者不詳(スコットランド):可愛いケイティは俺が好き 
9. Put on your sark on Monenday [Anon.]  1:25 
作曲者不詳:月曜日にはお前のシャツを着て 
10. Buckinghames branle [Anon.]  1:41 
作曲者不詳:バッキンガムのブランル 
11. The Laydie Louthians lilte [Anon.]  3:34 
作曲者不詳:ルーシアン夫人のリルト 
12. La Volta [William Byrd (1543-1623]  2:24 
ウィリアム・バード(1543‐1623):ラ・ヴォルタ 
13. Wolsey's Wilde [Byrd]  1:38 
ウィリアム・バード:ウルジーズ・ワイルド 
14. Pavana Bray, set by Fr[ancis]. Cutting [Byrd]  5:23 
ウィリアム・バード/フランシス・カッティングによるタブラチュア編曲:にぎやかなパヴァナ(パヴァン) 
15. Galiarda [Byrd]  1:25 
ウィリアム・バード:ガリアルダ(ガリアード) 
16. Will yow walke the woods soe wylde [Byrd]  4:39 
ウィリアム・バード:森をかき分け歩こう 
17. My lord willoughbies welcom home [Byrd]  1:52 
ウィリアム・バード:我が主人ウィロビー卿のご帰館 
18. Pavin [Philip Rosseter (c.1567-1623)]  6:00 
フィリップ・ロセター(1567頃‐1623):パヴァン 
19. Galliard [Rosseter]  3:38 
フィリップ・ロセター:ガリアード 
20. Lusty Gallant [Anon.]  1:16 
作曲者不詳:陽気な色男 
21. [A Ground] [Anon.]  4:00 
作曲者不詳:[グラウンド] 
22. Home again, market is done [Anon.]  1:41 
作曲者不詳:さあ市だ、故郷に帰ろう 
23. Trenchmore [Anon.]  2:56 
作曲者不詳:トレンチモア 
24. Mall Symes [Anon.]  6:35 
作曲者不詳:モール・シムス 

Total Time 77:00 


Paul O'Dette 
ポール・オデット 
8-course lute [#1-7, 12-19, 24], orpharion [#20-23], 4-course cittern [#8-11] 
(8 コース・リュート、オルファリオン、4 コース・シターン)

Recorded September 26-29, 1999, at Florence Gould Auditorium, Seiji Ozawa Hall, Tanglewood 
録音:1999年9月26~29日/セイジ・オザワ・ホール〈デジタル〉 
Executive Producer: Robina G. Young 
Sessions Producer and Plot Editor: Christel Thielman 
Recording Engineer: Brad Michel 
Editor: Paul F. Witt 
Design: Karin Elsener 

Front cover (detail): *Hunting Scene* fromBook of *King Modus and Queen Ration*, French, 14th C., Bibliothèque Nationale, Paris, France 
Woodcuts: Dover Publications. 

Editions used in this recording were prepared by Paul O'Dette from existing sources. 


◆ポール・オデットによる解説(佐々木勉訳)より◆

「ここで演奏されるバラード旋律による変奏曲は、1590年から1620年の間に書かれたイギリスの様々な手写楽譜から採られている。それらのいくつかは、リュート学習者のために写された練習用の楽譜であり、またあるものは、熟慮された作品の正確な記録として書かれた楽譜である。したがって、いくつかの手写楽譜には、右手のフィンガリングや装飾についての演奏上の有益な情報が含まれているが、その一方には断片的なものや、誤りだらけのものもあるのである。例えば、〈トレンチモア〉(第23曲)の手写楽譜は、作品の途中で終わっており、私自身が変奏の残りを工夫しなければならなかった。(中略)〈トレンチモア〉は、2音からなるオスティナート・バス(あるいはグラウンド)に基づく作品で、即興演奏の技法に磨きをかけようとする学習者には、人気が高かった。(中略)すなわち、この曲の場合には、繰り返される低音旋律の眠気を催すような性格を損なわずに、リズム、旋律、動機、和音の点で多様なアイディアを駆使しなければ、面白い変奏は生まれないからである。(中略)エリザベスⅠ世時代の変奏曲は、(中略)グラウンドに基づくものが多いが、〈女房を家に閉じ込めたいが〉(第1曲)、〈森を掻き分け歩こう」(第16曲)、〈陽気な色男〉(第20曲。この作品は手写楽譜によっては〈ロビン・フッド〉〈ロビンは緑の森へ〉と記されており、またアスキュー氏による編曲では〈ロビン・フッド〉[第4曲]と呼ばれている)のように、人気歌曲の旋律に基づくものもある。
 リュート奏者と鍵盤音楽作曲家は、しばしばレパートリーを共有していた。ウィリアム・バード、ジョン・ブル、トマス・モーリーといった鍵盤音楽作曲家は、彼らの好みのリュート曲を鍵盤楽器のために編曲し、リュート奏者たちは、(中略)鍵盤音楽をリュートのために書き換えたのである。(中略)こうした編曲の場合、手写楽譜資料には、編曲者の名前は書かれてはいない。フランシス・カッティング(1596頃活躍)によるリュートのためのタブラチュア編曲である〈にぎやかなパヴァナ(パヴァン)〉(第14曲)は、この点で珍しい作品である。」
鍵盤楽器のための変奏曲を文字通りそのままリュートに置き換えるのに対して、編曲者たちは、バードによる〈にぎやかなパヴァナ(パヴァン)〉や〈ガリアルダ(ガリアード)〉(第15曲)のような舞曲に見られるように、原曲をまったく自由に扱うこともあった。(中略)ピーター・フィリップスの〈半音階的パヴァナ(パヴァン)〉(第6曲)と〈ガリアード〉(第7曲)の場合、氏名不詳のエリザベスⅠ世時代のリュート編曲者は、各節ごとに装飾を付した繰り返しは書いていない。そこで私は、演奏に際して、原曲の鍵盤楽器のための作品からアイディアを借りて、そうした繰り返しで装飾的な変奏を行った。」
「オルファリオンは、金属弦を張った楽器(調弦リュートと同じ)で、(中略)1580年から1630年にかけてイギリスで人気を得たが、調弦が狂いやすく、音が極端に柔らかかったために大流行することはなかった。」
「シターンは、15世紀から17世紀にかけて特にイングランドスコットランド、オランダ、フランス、イタリアで広く親しまれた楽器である。(中略)鉄製と銅製の弦が用いられ、各コースごとに2本づつ組み合わせて張られ(最低音のコースはオクターヴの音程で3本の弦が張られていた)、羽軸ではじかれた。」


◆本CDについて◆

輸入盤国内仕様。ジュエルケース(黒トレイ)。ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、Paul O'Detteによる解説(英語原文&仏・独訳)、木版画カット4点、アーティスト写真(カラー)1点、裏表紙に「Paul O'Dette's most recent releases」(CD紹介/カラー図版2点)。別冊解説書(全8頁)に邦文トラックリスト&クレジット、ポール・オデットによる解説(訳:佐々木勉)、演奏者紹介。

★★★★★


Robin Hoode