幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『セヴラック:オルガン作品集』 ギヨー 

セヴラック 
オルガン作品集 
ギヨー(オルガン) 


CD: Erato 
ワーナーミュージック・ジャパン 
シリーズ:エラート・アニヴァーサリー50 
WPCS-22091 (2003年) 
定価¥1,575(税抜価格¥1,500) 
Made in Japan 

 


帯裏文:

「南仏ラングドックに生まれた作曲家セヴラックは、パリの都会暮らしが性に合わず、生まれ故郷に帰って、「田舎の作曲家」として生涯を送りました。ドビュッシーが「とても素敵な土の香りがする」と評したその作品群は、21世紀を迎えて急速に再評価が進んでいます。ここに収められた3曲は、世界初録音となったもの。オルガニストであったセヴラックの細やかな詩情を伝えています。初CD化。」


セヴラック 
Déodat de SÉVERAC (1872-1921) 

組曲 ホ短調 
Suite en mi mineur pour orgue 
1.Prélude 3:30 
2.Choral 7:53 
3.Fantaisie pastorale 5:36 
4.Fugue 6:39 

オルガンのためのヴェルセ 
Versets d'orgue pour les Vépres d'un confesseur non pontife 
5.Domine Quinque talenta 1:35 
6.Euge serve bone 1:05 
7.Fidelis servus et prudens 1:13 
8.Beatus ille servus 1:29 
9.Serve bone et fidelis 1:01 

スコラ的小組曲 へ短調 
Petite Suite Scholastique - Cinq Pièces d'après un thème de carillon languedocien 
10.Prélude (ou Entrée) 2:39 
11.Méditation (ou Offertoire) 3:30 
12.Prière-Choral (ou Elévation) 2:14 
13.Cantilène Mélancolique (ou Communion) 2:58 
14.Fanfare Fuguée (ou Sortie) 3:54 

Total timing 45'46" 


ピエール・ギヨー(オルガン) 
PIERRE GUILLOT, orgue 
リヨン声楽・器楽アンサンブルのグレゴリオ聖歌隊のメンバー[5-9] 
L'Ensemble Vocal et Instrumental de Lyon 

録音:1978年9月 リヨン、サン=フランソワ・ド・サール教会(オルガン製作:カヴァイエ=コル)
プロデューサー:ミシェル・ガルサン 

96KHz/24bit remastered by Floating Earth (London) 


◆濱田滋郎による解説より◆

「デオダ・ド・セヴラックは、こんにち不当に忘れられがちな、しかし第一級の個性と魅力とをそなえたフランス近代の作曲家である。1872年(中略)7月20日、南仏ラングドック地方ローラゲー郡のサン=フェリクス・ド・カラマンに生まれた彼は、生涯、故郷の香りを身にまとっていたと言える。落ちぶれた地方貴族の家柄で物持ちとは言えなかったが、彼の父親は絵や音楽が好きであった。デオダは少年時代にその感化を受け、村の教会でオルガンを教わったりした。やがて、父の言いつけにより法学を学ぶためトゥルーズ市へ赴くが、いつか同市の音楽院に入ってしまい、ここで4年間(1893~96)を過した。つづいていったんはパリ音楽院に入学したが、ヴァンサン・ダンディの興したスコラ・カントルムの新風により強く惹かれ、すぐにそちらへ移った。結局、スコラ・カントルムには10年間(1897~1907)にもわたって籍を置き、ダンディ(作曲)、アレクサンドル・ギルマン(オルガン)などのすぐれた教授陣から多くを学び取った。スコラに入り立てのころ、同校の教師だったスペインの天才、イサーク・アルベニスからピアノを習ったこともある。
 しかし、セヴラックは、セザール・フランクの流れを汲むスコラ・カントルムの教育のみに忠実だったわけではなく、フォーレドビュッシーの音楽にも惹かれ、影響を受けた。一方では、ショパンシューマンの世界を深く愛してもいた。そして肝腎なのは、セヴラックが、それら諸々の影響によって揺がされることのない、真の個性の持ち主であったことである。同時代フランスの多くの作曲家たちと異なって、彼はパリ暮しが性に合わなかった。スコラを卒業した後、生まれ故郷のラングドックに帰り、村の教会でオルガンをひきながら彼は過したのである。(中略)こうして彼は、ドビュッシーが「よい匂いのする音楽」と評したように、ひとつの比類ない情趣を湛えた音楽を、南フランスの田園から世に送った。(中略)生来あまり丈夫ではなかった彼は、1919年から病に臥し、1921年3月24日、尿毒症のため世を去った。」

組曲 ホ短調
 セヴラックのオルガン曲中、最も本格的な力作をなすこの組曲は、1902年3月22日、国民音楽協会の演奏会で初演されている。」
「a) 前奏曲
「b) コラール」
「c) 田園風幻想曲」
「d) フーガ」

「オルガンのためのヴェルセ
 〈司教ではないある聴罪司祭の晩課のために〉と添え書きされたこれら五つの小オルガン曲は、1914年、すなわち第一次世界大戦勃発の年に作曲された。ヴェルセ(中略)とは、グレゴリオ聖歌のヴェルスス(ヴァース)にもとづいて作曲されるオルガン用小品のことである。それではヴェルススとは何かといえば、詩篇、カンティクム(賛美歌)を主として聖書の中のある詩句(ないし文章の一節)を、独唱者が短く歌うもののことである。この作品では5曲それぞれの冒頭に、もとになったグレゴリオ聖歌(ヴェルスス)が歌われ、つづいて、それに注釈を加えるような形でオルガンが奏される。5曲は各々、つぎのような歌い出しを持っている――
 1) ドミネ・クィンクェ・タレンタ 
 2) エウジェ・セルヴェ・ボネ 
 3) フィデリス・セルヴス・エト・プルデンス 
 4) ベアトゥス・イッレ・セルヴス 
 5) セルヴェ・ボネ・エト・フィデリス」

「スコラ的小組曲 へ短調
 1912年作になる曲。題名に見る〈Scholastique〉(学校風の)という形容詞は、もちろんセヴラックが学んだスコラ・カントルムの流儀による、の意であろう。ラングドック地方の教会で鳴るカリヨン(連鐘)のメロディを主題にした5篇からなる小品集で、典礼(教会内の儀式)の次第に応じて実用に供することもできるよう、各曲タイトルにつづけてその役割(演奏される時)が書き添えられている。
 a) 前奏曲(入祭のために)」
「b) 瞑想曲(奉献のために)」
「c) 祈り~コラール(聖体奉挙のために)」
「d) 哀愁のカンティレーナ(聖体拝受のために)」
「e) フーガ的ファンファーレ(退出のための)」

「付記:《オルガンのためのヴェルセ》でグレゴリオ聖歌を歌っているのはつぎの5人、(中略)——ジャン=マルク・ブレメル、ファブリス・デュビュ、ミシェル・オレキォーニ、ピエール・タイヤンディエ、ピエール・トレポ。」
 

◆本CDについて◆

ジュエルケース(白トレイ)。ブックレット(全8頁)にトラックリスト&クレジット、濱田滋郎による解説「近代フランス音楽の秀抜な田園詩人、セヴラック」(「レコード発売時(REL-3545)の解説を転載致しました。」)。

オリジナルLPは1979年、日本盤LP(「エラート・フランス近代音楽名盤選」)は1985年リリース。

★★★★★

 

組曲 ホ短調