幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『Mahler: Das Lied von der Erde - Piano version』  Fassbaender / Moser / Katsaris 

『Mahler: Das Lied von der Erde - Piano version』 
Fassbaender / Moser / Katsaris 

マーラー大地の歌(オリジナル・ピアノ版)
カツァリス 


CD: TELDEC Classics International GmbH 
2292-46276-2 (1990) 
Made in Germany 

Warner-Pioneer Corporation 
WPCC-3179 (1990年) 
税込定価¥2,812(税抜価格¥2,730) 

 


帯文: 

マーラー大地の歌(オリジナル・ピアノ版)世界初録音!」


GUSTAV MAHLER (1860-1911) 
マーラー 

Das Lied von der Erde 
(The Song of the Earth)  
Für eine hohe und eine mittlere Gesangstimme mit Klavier 
(For a high and a middle-range voice with piano accompaniment) 
Fassung des Komponisten 
(Composer's version) 
大地の歌(オリジナル・ピアノ版) 


1. Das Trinklied vom Jammer der Erde  7'49" 
Aus dem Chinesischen des Li-Tai-Po mit teilweiser Benützung der Bethgenschen Übertragung 
(The drinking-song of earth's sorrow 
from a Chinese poem by Li-Tai-Po, making partial use of the translation by Bethge) 
大地の哀愁を歌う酒の歌(李太白の詩による) 

2. Die Einsame im Herbst  9'57" 
Aus dem Chinesischen des Tschang-Tsi (8. Jahrhundert) übertragen von Hans Bethge 
(The lonely woman in autumn 
from a Chinese poem by Chang-Tsi (8th cent.), translated by Hans Bethge) 
秋に寂しきひと(銭起の詩による) 

3. Der Pavillon aus Porzellan  2'58" 
Li-Tai-Po, übertragen von Bethgen 
(The porcelain pavillion 
by Li-Tai-Po, translated by Bethge) 
陶土造りの円亭(李太白の詩による)

4. Am Ufer  6'47" 
Aus dem Chinesischen des Li-Tai-Po mit teilweiser Benützung der Bethgenschen Übertragung 
(By the shore 
from a Chinese poem by Li-Tai-Po, making partial use of the translation by Bethge) 
岸辺にて(李太白の詩による) 

5. Der Trinker im Frühling  4'27" 
Li-Tai-Po mit teilweiser Benützung der Bethgenschen Übertragung 
(The drinker in springtime 
by Li-Tai-Po, making partial use of the translation by Bethge) 
春に酒くらう者(李太白の詩による) 

6. Der Abschied  28'16" 
Mong-Kao-Jen, Wang-Wei mit teilweiser Benützung der Bethgenschen Übertragung 
(The farewell 
by Mong-Kao-Yen and Wang-Wei, making partial use of the translation by Bethge) 
訣別(孟浩然と王維の詩による) 

Von Mahler für die Klavierfassung geschriebene Titelseiten der einzelnen Lieder 
(Title pages of the individual songs written by Mahler for the piano version) 


Brigitte Fassbaender: Mezzosopran 
ブリギッテ・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ)
Thomas Moser: Tenor 
トーマス・モーザー(テノール) 
Cyprien Katsaris: Klavier - piano 
シプリアン・カツァリス(ピアノ)  

Produktion (Production): Wolfgang Mohr 
Aufnahmeleiter (Producer): Jörg Ritter 
Tonmeister (Sound Engineer): Christian Feldgen 
Aufnahmeort (Recording location) Siemensvilla, Berlin - September 1989 

[D|D|D] Digital recording 
Cover: Karin Hauke 


◆渡辺裕による日本語解説より◆ 

「《大地の歌》は、言うまでもなく、グスタフ・マーラー(中略)の交響曲の一つである。彼がヴィーンを去る直前の1907年の夏にスケッチが始められ、翌1908年夏にトープラッハの作曲小屋で一気に完成されたこの作品は、交響曲と銘打たれてはいるものの、第1から第5までの短い楽章群と長大な第6楽章という6つの楽章からなる変則的な構成をもっており、しかも全楽章が独唱声部を伴うという、ほとんど連作歌曲に近い形態をとっているため、他に例をみない特異な作品となっている。」
マーラーがこの作品の楽譜を、オーケストラではなくピアノ伴奏の形でも残していることは以前から知られていたが、この楽譜は長いこと未亡人のアルマ・マーラーが所有しており、その後も個人の所有物であったため、公にされず、その全貌をつかむことはできなかった。その《大地の歌》のマーラー自身によるピアノ伴奏版楽譜が1989年公にされた。このピアノ伴奏版楽譜をみてみると、それが単なる不完全なスケッチなどではなく、実際のピアノでの演奏を意図して書かれた楽譜であることが明らかになる。そして同時にこの楽譜を作品の創作過程全体のうちにおいて考えるとき、それが彼の目指した作曲理念の本質に関わる問題を呈示しているものであることがわかるのである。」

「他の交響曲とは違い、《大地の歌》はあくまでもピアノ伴奏の形の下書きが構想の原型になっているのだが、その一方で歌曲にはない下書き総譜を作成してかなりじっくりとオーケストレーションの検討を行っている。このことはおそらく、歌曲と交響曲とを融合してこれまでにない新しい音楽の可能性を開拓しようとする彼の野心のあらわれとみることができるだろう。そしてそのような中で、彼は総譜とピアノ版楽譜とを並行して仕上げてゆく。ピアノ版楽譜を作る過程で生じた発想が総譜へとうつされ、また逆に総譜を前にして生じた発想がピアノ版楽譜へとうつされる、そんな両者の対話にも似た行為を通じて、マーラー交響曲にも歌曲にも可能でなかった新しい表現の可能性を求めていったのではないだろうか。
 こうして作られたピアノ版楽譜が、単に総譜作成のための一過程であることをこえて、明らかに実際の演奏を意識したものになっているということは重要である。」
マーラーが、この作品を実際にピアノ伴奏で演奏する可能性を最後まで想定し続けたのかどうかはよくわからない。総譜の浄書の段階で行った改訂には、このピアノ版楽譜に書き写されていないものもかなりあるが、これが単なる時間の不足による「未完成」の結果なのか、それとも並行して探ってきた二つの可能性のうち最終的にオケ伴の方だけを選択したことを意味するのか、両様の可能性が考えられるだろう。」


◆海老澤敏による歌詞日本語訳より◆ 

蒼穹は永遠に、青く、地は
永く揺ぐことなく常春のうちに栄える。
だが、お前、人間よ! 
お前はいくばくの命を生きるのか?! 
百とせにみたぬ歳月を
この世のはかなきことに楽しむにすぎぬ」

「生は暗く、死もまた暗い。」

「私がどこへ行くのかと? 私は行き、山々をさすらう 
おのれの孤独な心のために私はいこいを求めている。
私は故郷を求める! 私の場所を求めてさまよう 
私は遠くへはさまようことはあるまい 
わたしの心は落着き、その時を待っている 
愛する大地に春の来たれば 
いたるところに花は咲き、新緑はふたたび栄える 
いたるところ、永遠に遠き涯の青く輝く 
永遠に、永遠に。」


◆本CDについて◆ 

直輸入盤に邦文解説・歌詞対訳付。原盤ブックレット(全44頁)にトラックリスト&クレジット、Stephen E. Heflingによる解説(英語原文と独・仏訳)、歌詞対訳(独語原文と英・仏訳)、図版(モノクロ)4点。日本語ライナー(投げ込み)は、トラックリスト&クレジット/渡辺裕による解説(「本稿は、1989年5月15日に行われました『マーラー大地の歌 演奏会――オリジナル・ピアノ譜による世界初演』より流用させていただきました」)/演奏者紹介(無記名)を掲載したものと、海老澤敏による歌詞日本語訳を掲載したものの計2点。

印象的なジャケ絵(ややレオノール・フィニふう)を担当しているKarin Haukeは、ドラティの「火の鳥」(デッカ盤)のジャケ絵も手掛けています。

★★★★★