Fantasma/Cantos - Works of Takemitsu
Richard Stolzman
CD: RCA Red Seal
発売元:BMGビクター株式会社
BVCC-676 (1994年)
¥2,800(税込)(税抜価格¥2,718)
Made in Japan
帯文:
「90年代武満芸術の精華、遂に登場。タッシによる名演も待望の初CD化。」
帯裏文:
「同時代の代表的な作曲家として日本のみならず世界にその名をとどろかせている武満徹が、ストルツマンとBBCウェールズ交響楽団のために書いた《ファンタズマ/カントス》の世界初録音と、1978年のタッシによる記念碑的録音をカップリングしたCDです。
《ファンタズマ/カントス》は1994年度のグロマイヤー作曲賞を受賞。ストルツマン自身この作品をモーツァルトのクラリネット協奏曲、ブラームスのクラリネット五重奏曲と並ぶものとして位置づけています。」
武満徹
Tōru Takemitsu (b. 1930)
1.ファンタズマ/カントス* 17:25
Fantasma/Cantos
2.ウォーター・ウェイズ 9:55
Water-Ways
3.ウェイヴズ 10:40
Waves
4.カトレーンⅡ 16:32
Quatrain II
リチャード・ストルツマン(クラリネット)
Richard Stolzman, clarinet
#1
尾高忠明 指揮
BBCウェールズ交響楽団
BBC Welsh Symphony Orchestra
Tadaaki Otaka, conductor
#2、4
タッシ:
Tashi:
ピーター・ゼルキン(ピアノ)
Peter Serkin, piano
リチャード・ストルツマン(クラリネット)
Richard Stolzman, clarinet
アイダ・カヴァフィアン(ヴァイオリン)
Ida Kavafian, violin
フレッド・シェリー(チェロ)
Fred Sherry, cello
#2
バーバラ・アレン、ナンシー・アレン(ハープ)
Barbara Allen, Nancy Allen, harps
デヴィッド・フロスト、リチャード・フィッツ(ヴィブラホン)
David Frost, Richard Fitz, vibraphones
#3
ロバート・ルッチ(フレンチ・ホルン)
Robert Routch, French horn
ロナルド・ボラー、リチャード・シャンバーラン(トロンボーン)
Ronald Borror, Richard Chamberlain, trombones
デヴィッド・フロスト(バス・ドラム)
David Frost, bass drum
* World-premiere Recording
Total Time - 54:54
Recorded June 2, 1992 at Brangwyn Hall, Swansea, Wales (#1)
October 16-20, 1978 at RCA Studio A, NYC (#2-4)
Produced by Max Wilcox
Recording Engineers: Max Wilcox, Simon Rhodes (#1), Max Wilcox, Ray Hall (#2-4)
◆リチャード・ストルツマンによる解説より◆
「このディスクの中で一番最初の作品「カトレーンⅡ」は、「カトレーン」というタイトルでタッシとオーケストラのための交響作品として作曲され、1975年に(中略)初演され、77年に作曲者自身の手によりクヮルテット用に編曲された。短い導入部のあとに提示され、終盤に再び現れる8小節のカトレーン(4行詩)は、メシアンへのオマージュ。」
「「カトレーン」の音楽形式は日本の‘絵巻’に基づいている、と武満氏は言う。個々の主題が独立性を保ちつつ、同時に相互に作用・浸透しあいながら、それぞれの枠組みの中に存在している。」
「77年の作品「ウェイヴズ」には武満作品の代表的な特徴が2つ取り入れられている。自然界の夢幻のようなイメージを、日本古来の楽器(ここでは尺八)を巧みに用いて音で表わし、それを印象派やジャズの作曲家(とりわけデューク・エリントン)たちに固有の、和声感覚に融合させている。一時期、氏はエリントンにオーケストレーションを師事したい、と考えたこともあるという。」
「78年に作られ、ピーター・ゼルキンに献呈された「ウォーター・ウェイズ」も、自然をモティーフにした武満氏独特の作品。我々タッシのメンバーにこの曲の成り行きについて『郊外にある自分の仕事場の周りにある湖にインスパイアされて書いた』と教えてくれた事がある。1つ1つの小さな流れが次第に合流し、…かと思えばまた個々の流れに戻っていく様を見つめる。こうした自然の映像を反映させることによって、武満氏の作品は良き友人でもあったジョン・ケージの特質「偶然性の美学」に加えて、繊細な表現力をも併せ持つのだ。」
「91年に作曲され、今回が初のレコーディングとなった「ファンタズマ/カントス」は、単一楽章形式のクラリネットとオーケストラのための協奏曲で、初演は91年9月14日のカーディフ音楽祭で、(中略)この初演に先立ち、武満氏がスコアに短いイントロダクションを寄せている。
この作品のタイトルに使った2つのラテン語―Fantasma(fantasy‐幻想)とCantos(song‐歌)は、同義語です。
短い導入部のあとに、色彩的なオーケストラの装飾に彩られながら明確な旋律線が、ぼんやりと変容していくのです。
この作品は、日本の回遊式庭園の眺めからヒントを得ています。小道に沿って、あちこちで立ち止まりながら瞑想にふけりつつ歩いているうちに、出発した場所に戻ってきます。しかし、そこは決して出発点とは同じではないのです。」
◆本CDについて◆
ジュエルケース(白トレイ)。ブックレット(全8頁)にトラックリスト&クレジット、リチャード・ストルツマンによる解説(日本語訳)、「演奏者について」「作曲者について」、リチャード・ストルツマンCDリスト(BMG)、武満徹CDリスト(BMG)。
#2~4は1979年にRVCから『カトレーンⅡ~タッシ・プレイズ武満』としてLPリリースされています。
本CD解説でストルツマンさんがいみじくも指摘されているように、武満徹にはメシアン、ケージ、エリントンの影響が顕著です。それはどういうことかというと、メシアンのように音楽を自然の状態に近づけ、ケージのように音楽を固定観念から解放して音それ自体に耳を傾けるように促し、しかもエリントンのように誰がきいても音そのものを(自分も音と一体化することによって)楽しむことができる、そういうエコロジカルな音楽を武満徹は志していたのではないでしょうか。
★★★★
Fantasma/ Cantos