『Guillaume de Machauat: Ballades』
Ensemble Musica Nova / Lucien Kandel
ギョーム・ド・マショー、至芸のバラード
~中世詩人が恋をするとき~
リュシアン・カンデル指揮
アンサンブル・ムジカ・ノーヴァ(中世声楽集団)
CD: Aeon
AECD 0982 (2009)
輸入販売:株式会社 マーキュリー
MAECD 0982
2,800円(税込 2,940円)
Guillaume de Machaut (c. 1300 - 1377)
ギョーム・ド・マショー (1300頃~77)
1. De Fortune me doi plaindre et loer (B 23) 7:57
運気の女神(フォルトゥーナ)ゆえ、わたしは嘆き、かつ喜ぶ
2. Dame se vous mestes lointeinne (B37) 3:55
貴き婦人、あなたがわたしから遠ざかるなら
3. Esperance qui masseure (B13) 6:39
希望こそ、わたしを安心させるもの
4. Phyton le mervilleus serpent (B38) 8:00
ピュトン、この恐ろしき大蛇
5. Se quanque amours puet donner a amy (B21) 7:39
恋神のあらゆる贈りものも
6. De triste cuer faire joyeusement / Quant vrais amans aimme amoureusement / Certes je di et sen quier jugement (B29) 6:10
悲しき心で、喜ばしき歌をつくることについて/真の恋する男というのは、恋心から愛するとき/いかにも、わたしは心底こう申し上げたい
7. Il mest avis quil nest dons de nature (B22) 6:10
わたしは思う、生まれつき立派な者などいない
8. Sans cuer men vois dolens et esplourez / Amis dolens maz et desconfortez / Dame par vous me sens reconfortez (B17) 4:46
わたしの心はここにない、悲しみにくれ/友よ、あなたはわたしを悲しみに取り乱させ/わが貴婦人、あなたのおかげで慰められました
9. Hocquetus David (instrumental) 3:15
ダヴィデのホケトゥス(器楽合奏)
10. Amours me fait desirer (B19) 7:26
恋神が、わたしの欲望をかきたてる
11. Quant theseus hercules et jason / Ne quier veoir la biaute dabsalon (B34) 7:31
テーセウスが、ヘルクレスが、イアソーンが/アプサロムの美などに用はない
12. Je ne cuit pas quonques a creature (B14) 5:58
わたしにはとても思えない、ほかの誰かが
Anonyme
作者不詳
13. Pour vous revoir (instrumental) / Sois tard tempre 3:06
あなたに再びまみえるため/それはいつでも、朝も、夕も
Ensemble Musica Nova / Lucien Kandel
Christel Boiron & Marie-Claude Vallin, cantus
クリステル・ボワロン、マリー=クロード・ヴァラン(ソプラノ)
Thierry Peteau, ténor
ティアリー・ペトー(テノール)
Marc Busnel, bassus
マルク・ビュネル(バス)
Lucien Kandel, ténor & direction
リュシアン・カンデル(テノール)
Pau Marcos, vièle à archet
パウ・マルコス(弓奏ヴィエル)
Birgit Goris, vièle à archet
ビルギット・ゴーリス(弓奏ヴィエル)
Julien Martin, flûtes à bec (alto en sol & ténor)
ジュリアン・マルタン(リコーダー)
Marie Bournisien, harpe gothique
マリー・ブルニジアン(ゴシック・ハープ)
Recording supervisor/direction artistique: Blaise Favre & Christel Boiron, Marie Bournisien, Marc Busnel, Lucien Kandel
Sound engineer/prise de son, editing/montage et mixage: Blaise Favre
Recording/enregistrement: 18-22/11/2008, Eglise de Labeaume, Ardèche, France
aeon Artistic supervision/direction artistique: Damien Pousset
Producer/production: Kaisa Pousset
Photos: Dolorès Marat
録音:2008年11月18日~22日、アルデーシュ(南仏ローヌ=アルプ地方)、ラボーム教会
録音・編集:ブレーズ・フェーヴル
監修:ブレーズ・フェーヴル、クリステル・ボワロン、マリー・ブルニジアン、マルク・ビュネル、リュシアン・カンデル
写真:ドロレス・マラ
制作:カイサ・プセ
制作総指揮:ダミアン・プセ
◆リュシアン・カンデルによる解説より(訳:白沢達生)◆
「私たちアンサンブル・ムジカ・ノーヴァはまず、マショーのモテトゥスの世界にふれあうところから始めました(中略)。そうしたモテトゥス研究の日々の後、今度は彼のバラードに取り組んでみよう、との思いを抱き、その末に今回の録音計画が形をとりはじめたのでした。」
「こうして私たちが深くかかわることとなった彼のバラードの数々は、無辺のイマジネーションと実験的なまでの革新的技法に彩られた、驚くばかりに豊穣な音楽世界だったのです。」
「マショーが残したバラードは全部で230篇あり、この詩人の全作品のなかで非常に大きな割合を占めています。そのうち音楽がつけられたバラードは42篇あって、それらもまた、彼の音楽作品のなかでも特に完成度の高い部類に属するものとなっています(中略)。」
「たとえばバラード第34番[11]は「テーセウスが、ヘルクレスが、イアソーンが…」と始まる詩を、「アプサロムの美などに用はない…」と始まる詩と同時に歌う二重バラードになっていますし、バラード第17番[8]や第38番[4]にいたっては、三つもの詩が同時に歌われる三重バラードです。これらの多重バラードでは、最後の繰返し句(ルフラン)のところにくるまで、各パートの詩はマショーの精密な設計のうちに共存しながら、ずっと別々の言葉として歌われてゆくのです。
同じように、マショーの楽譜ではもともと四重唱として書かれている作品(第21・22・34番[5、7、11])にも興味をそそられました――こうした事例から、当時は第4のメロディラインまで加わる多声音楽が生み出され始めていたという理解のもと、「わたしにはとても思えない、ほかの誰かが」[12]を歌うにあたっては、私たちの側で、ささやかならが第4の声部を創ってみました(これは高音部(カントゥス)で、メロディラインを細かく歌い替えてゆくようなかたちになっています)。」
◆本CDについて◆
輸入盤(仏盤)国内仕様。3面デジパック。ブックレット(デジパックに貼付/全51頁)にトラックリスト&クレジット、Lucien Kandel/Agathe Sultan/Thierry Peteauによる解説(仏文&英訳)、演奏者紹介(仏・英)、歌詞(古フランス語原文&仏・英訳)、アーティスト写真(モノクロ)3点。国内インサート(十字折り/2枚)にトラックリスト&クレジット、リュシアン・カンデル/アガート・シュルタン/ティアリー・ペトーによる解説の邦訳(訳・注:白沢達生)、歌詞試訳(訳・注:白沢達生)、演奏者紹介。
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De triste cuer faire joyeusement / Quant vrais amans aimme amoureusement / Certes je di et sen quier jugement