幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『デュファイ:ス・ラ・ファセ・パル』 デイヴィッド・マンロウ

デュファイ:スラ・ラ・ファセ・パル 
デイヴィッド・マンロウ(指揮) 
ロンドン古楽コンソート 

Guillaume Dufay 
Mass: Se la face ay pale 

Early Music Consort of London 
Conductor: David Munrow 


CD: Erato/Warner Classics 
ワーナーミュージック・ジャパン 
シリーズ:Originale: Period Instrumental Series 
WPCS-16258 (2016年) 
定価¥1,400(本体)+税 
Made in Japan 

 


帯文:

「「もし、わたしの顔が青いなら」というシャンソンの旋律を借用して創られた作品を集めたもの。様々な形態で演奏されているのも特徴で、曲それぞれに響きを変え、マンロウ独自の解釈が冴えた名盤。」


ギヨーム・デュファイ 
Guillaume Dufay (1400?-1474) 

1.チューバの調子によるグローリア 2:40 
Gloria ad modum tubae (2 counter tenors / 2 tenor sackbuts) 

2.シャンソン「ス・ラ・ファセ・パル」(もし、わたしの顔が青いなら) 7:24 
Chanson "Se la face ay pale" 
a)3声部のオリジナル版 
original three part version 
counter tenor, tenor, bass viol, lute, harp 
b)&c)〈ブクスハイマー・オルガン曲集〉からの2つの鍵盤楽器用編曲版 
two keyboard versions from the *Buxheimer Organ Book* 
organ solo 
d)4声部の器楽合奏用版 
four part instrumental version attributed to Dufay 
alto cornett, alto shawm, alto and tenor sackbuts 

ミサ曲「ス・ラ・ファセ・パル」(もし、わたしの顔が青いなら) 
Mass "Se la face ay pale" 
3.キリエ 5:02 
Kyrie 
4.グローリア 8:31 
Gloria 
5.クレド 7:50 
Credo 
6.サンクトゥス/ベネディクトゥス 7:31 
Sanctus / Benedictus 
7.アニュス・デイ 6:00 
Agnus Dei 

Total Time 45:03 


ジェイムズ・ボウマン(カウンター・テナー) 
James Bowman, counter tenor 
チャールズ・ブレット(カウンター・テナー) 
Charles Brett, counter tenor 
マーティン・ヒルテノール) 
Martyn Hill, tenor 
ロジャーズ・カーヴィー=クランプ(テノール) 
Rogers Covey-Crump, tenor 
ポール・エリオット(テノール) 
Paul Elliott, tenor 
イアン・トンプソン(テノール) 
Ian Thompson, tenor 
ジェフリー・ショウ(バリトン) 
Geoffrey Shaw, baritone 
モーリス・ベヴァン(バリトン) 
Maurice Bevan, baritone 
オリヴァー・ブルックス(バス・ヴィオール) 
Oliver Brooks, bass viol 
ジェイムズ・タイラー(リュートテノールヴィオール) 
James Tyler, lute, tenor viol 
クリストファー・ホグウッド(オルガン、ハープ) 
Christopher Hogwood, organ, harp 
マイケル・レアード(アルト・ツィンク) 
Michael Laird, alto cornett 
アラン・ラムスデン(テノール・サックバット、テノール・ツィンク) 
Alan Lumsden, tenor sackbut, tenor cornett 
ロジャー・ブレンナー(アルト&テノール・サックバット) 
Roger Brenner, alto and tenor sackbuts 
マーティン・ニコルス(バス・サックバット) 
Martin Nicholls, bass sackbut 
デイヴィッド・マンロウ(アルト・ポンマー) 
David Munrow, alto shawm 

ロンドン古楽コンソート 
The Early Music Consort of London 
デイヴィッド・マンロウ(指揮) 
David Munrow, conductor 


演奏における編成 
Forces Employed 
重唱部分:重唱及びグローリア、クレドにおけるテノール&バス・ヴィオール 
solo sections: solo voices, accompanied in the Gloria and Credo by tenor and bass viols 
合唱部分:8人の合唱及びそれを重複するアルト&テノール・ツィンク、テノール&バス・サックバット 
full sections: a choir of eight voices, doubled by alto and tenor cornett, tenor and bass sackbuts 

The solo singers are as follows 
counter tenors: James Bowman (1), Charles Brett (2) 
tenor I: Martyn Hill 
tenor II: Rogers Covey-Crump (3) 
baritone: Geoffrey Shaw 
cantor: Martyn Hill 
 (1) Kyrie, Gloria, Credo, Benedictus 
 (2) Pleni, Agnus Dei 
 (3) Gloria, Credo 


録音:1973年9月 

Cover picture: Music by Justus of Ghent 
Reproduced by courtesy of the Trustees, The National Gallery, London. 

Recording Producer: John Willan 
Balance Engineer: Christopher Parker 

「Originale」シリーズ・マスター制作:杉本一家(JVCマスタリングセンター)


◆永田仁による解説より◆

「このレコードは、ギヨーム・デュファイのシャンソン〈Se la face ay pale (もし、わたしの顔が青いなら)〉と、このシャンソンテノール旋律にもとづく労作を、デュファイ自身の作品のみならず、ほぼ同世代の他の作曲家による作品をもふくめて収録したものである。」
「循環ミサ曲とは、ミサ通常文 Missa ordinarium の5章、すなわちキリエ Kyrie、グローリア Gloria、クレド Credo、サンクトゥス Sanctus、アニュス・デイ Agnus Dei をポリフォニー楽曲として通作し、かつ各章に共通した音楽的素材や手法を用いることによって、全曲の有機的統一をはかった楽曲をいう。この音楽的統一を与える手段としては、全5章に共通な定旋律 Cantus firmus を使用したり、各章の冒頭を同一の旋律型で開始する冒頭動機を使用したり、またしばしばそれら両者の併用がおこなわれる。」
「〈Mass "Se la face ay pale"〉は、デュファイ自身の作になる3声部のバラードのテノールを定旋律として使用した循環ミサ曲であり、(中略)この定旋律は、5章各章の、また各章を再区分した各部分で "Proportio (比率変化)" という白符定量記譜法に特有の方法を用いて、全体の音符(休符をふくむ)の音価を任意に倍加することにより、他の3声部に対位するようにしてある。この比率変化は、当時の数理論における大小2つの正の整数の組合せによる数比系列を原理とするものであり、さらに2つの数の逆順対比も可能なために、実際にはありとあらゆる総ての数比、つまり近代数学的にいうところの正・負総ての倍加が可能なのである。」
「このミサ曲には、さらに、最上声部にきわめて特徴的な冒頭動機が置かれていて、全曲の有機的統一をさらに緊密なものとしている。」


◆本CDについて◆

ジュエルケース(黒トレイ)。ブックレット(全24頁)にトラックリスト&クレジット、永田仁による解説(1976年/「※初出時の解説を一部改訂の上転載いたしました。」/譜例4点を含む)、斉藤基史による解説補遺「チューバの調子によるグローリア」(2016年)、歌詞&対訳(#1、3~7:日本司教団典礼委員会 ミサ通常文より/#2:永田仁)、モノクロ図版2点。

オリジナルLPは英EMIより1974年にリリースされました。本CDはオリジナルLPのジャケットデザインを再現していますが、左上のロゴは「Erato」に差し替えられています。

デイヴィッド・マンロウはすぐれた音楽家であると同時にすぐれた教育者でもあるので、一つのメロディがさまざまに使い回されて変形される実例を、見事な演奏によって示してくれているので、これを繰り返しきけば古楽を楽しみながら耳の訓練になるかもしれないです。

★★★★★