幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『ネーデルラント楽派の音楽』 ロンドン古楽コンソート/ディヴィッド・マンロウ

ネーデルラント楽派の音楽』
The Art of the Netherlands
ディヴィッド・マンロウ(指揮)ロンドン古楽コンソート 
Early Music Consort of London
directed by David Munrow


CD: ワーナーミュージック・ジャパン 
WPCS-16259/61 (2016年) 3CD
定価¥3,100(本体)+税

 

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帯文: 

古楽演奏の革命児マンロウがロンドン古楽コンソートを率いて遺した数多くの優れた録音の中でも、この3枚分の録音はとりわけ評価の高いもの。16世紀最大の音楽的潮流であったジョスカンを始めとするネーデルラント楽派の音楽を、世俗歌曲、器楽曲、宗教曲の三面からバラエティに富んだ演奏スタイルで紹介しており、この楽派の音楽を探求した名盤。」


ネーデルラント楽派の音楽 
The Art of the Netherlands 

CD 1 61:19 

世俗歌曲集 
Seclular Songs

1.スカラメッラは戦(いくさ)に行く (ジョスカン・デ・プレ) 2:09 
Scaramella va alla guerra (Josquin des Prés)
2-3.私を慰めておくれ、優しい栗色髪の女(ひと)よ  
Allegez moy, doulce plaisant brunette
 (a) 6声のシャンソン(原曲) (ジョスカン・デ・プレ) 2:06
    original six-part chanson (Josquin des Pres)
 (b) リュート二重奏(作曲者不明・16世紀初) 2:13 
    lute duet (Anon. 16th century)
4.コオロギはいい歌い手で (ジョスカン・デ・プレ) 1:46 
El grillo è buon cantore (Josquin des Prés)
5.女(ひと)よ、貴女の家には (ハインリヒ・イザーク) 1:39 
Donna di dentro di tua casa (Heinrich Isaac)
6-9.私の恋人はいいところばかり 
Detous biens plaine 
 (a) 4声のシャンソン(3声の原曲にペトルッチの〈オデカトンA〉に含まれる任意の付加声部を加えたもの) (ハイネ・ヴァン・ヒゼヘム) 6:45 
    original three-part chanson (Hayne van Ghizeghem)
 (b) 4声の器楽曲(内2声はカノン) (ジョスカン・デ・プレ) 1:39 
    four-part instrumental version (Josquin des Prés)
 (c) 3声の器楽曲Ⅰ (アレクサンダー・アグリーコラ) 1:15 
    three-part instrumental version I (Alexander Agricola)
 (d) 3声の器楽曲Ⅱ (アレクサンダー・アグリーコラ) 1:27 
    three-part instrumental version II (Alexander Agricola)
10.絶望の淵に身を投げて ― 死を待ち望むほかに (アントワーヌ・ブリュメル) 10:32 
Du tout plongiet - Fors seulement l'attente (Antoine Brumel)
11.母は私に若い妻を与えてくれた (作曲者不明・1500年ごろ) 1:40 
Mijn morken gaf mij een jonck wijff (Anon. c. 1500)
12.貴女はもっともすばらしい女(ひと) (ヨハネス・ヒゼリン〔ヴェルボネ〕) 2:08 
Ghy syt die wertste boven al (Johannes Ghiselin [Verbonnet])
13-15.私は楽しい人生を選んで 
Ein fröhlich wesen 
 (a) 3声のシャンソン(原曲) (ヤコブス・バルビロ) 2:33 
    original three-part chanson (Jacobus Barbireau)
 (b) 鍵盤楽器独奏 (パウル・ホフハイマー?) 1:35 
    keyboard solo (ascribed to Paul Hofhaimer)
 (c) 4声のシャンソン (ヤーコプ・オブレヒト) 3:42 
    four-part chanson (jacob Obrecht)
16.私を手本にしなさい (ヨハネス・オケヘム) 1:56 
Prenez sur moi (Johannes Ockeghem)
17.口許は笑っていても (ヨハネス・オケヘム) 5:49 
Ma bouche rit (Johannes Ockegem)
18.ギヨームは暖まりに行く (ジョスカン・デ・プレ) 1:05 
Guillaume se va (Josquin des Prés)
19-20.さようなら、いとしい女(ひと)よ 
Adieu mes amours
 (a) 4声のシャンソン(原曲) (ジョスカン・デ・プレ) 2:03 
    original four-part chanson (Josquin des Prés)
 (b) 鍵盤楽器独奏 (作曲者不明・16世紀) 2:19 
    keyboard solo (Anon. 16th century)
21-23.やけになった運命の女神よ 
 (a) 3声のシャンソン(原曲) (アントワーヌ・ビュノワ) 1:38 
    original three-part chanson (Antoine Busnois)
 (b) 声と楽器による6声の合奏(原曲に器楽3声を加えたもの) (アレクサンダー・アグリーコラ) 1:50 
    six-part version (Alexander Agricola)
 (c) 3声の器楽曲 (ジョスカン・デ・プレ) 1:14 
    three-part instrumental version (Josquin des Prés)


CD 2 59:16 

器楽合奏曲とミサ曲 
Instrumental Music 

1.酒を取りにいった娘 (作曲者不明・15世紀末) 1:43 
Heth sold ein meisken garn om win (Anon. late 15th century)
2.戦(いくさ)に (ハインリヒ・イザーク) 4:06 
A la bataglia (Heinrich Isaac)
3.タンデルナーケン (作曲者不明・1500年ごろ) 3:49 
T'Andernaken (Anon. c. 1500)
4.聴く人たちに (ハイネ・ヴァン・ヒゼヘム) 2:34 
A la audienche (Hayne van Ghizeghem)
5.まことの愛の神 (アントワーヌ・ブリュメル) 1:16 
Vray dieu d'amours (Antoine Brumel)
6.2つのリュート舞曲 (作曲者不明・16世紀初) 2:23 
Two lute dances (Anon. early 16th century)
 (a) ネーデルラントの円舞曲(ロンド) 
    Ain Niederländisch Runden Danz
 (b) ネーデルラントの舞踏曲 
    Ein Niederländisch Tenzlein 
7.やぶにらみ (作曲者不明・15世紀末) 1:49 
La guercia (Anon. late 15th century)
8.絶望した女のように (アレクサンダー・アグリーコラ) 2:38 
Comme femme (Alexander Agricola)
9.王様万歳 (ジョスカン・デ・プレ) 0:53 
Vive le roy (Josquin des Prés)
10.スペイン (ジョスカン・デ・プレ) 3:32 
La Spagna (Josquin des Prés)
11.女の子は坐った (ヤーコプ・オブレヒト) 2:29 
Tsaat een meskin (Jacob Obrecht)
12.恋を捨てる事になったのか (作曲者不明・16世紀) 1:23 
Est-il conclu par un arrêt d'amour? (Anon. 16th century)
13-14.ベルナルディーナ 
La Bernardina
 (a) 器楽三重奏 (ジョスカン・デ・プレ) 1:08 
    instrumental tricinium (Josquin des Prés)
 (b) リュート二重奏 (フランチェスコ・スピナチーノ) 1:19 
    lute duet (Francesco Spinacino)
15.3声のミサ曲から キリエ (ヨハンニス・ティンクトーリス) 4:31 
Kyrie from the Missa 3 vocum (Johannis Tinctoris)
16.ミサ曲《見よ、大地の大きな揺れが》から グローリア (アントワーヌ・ブリュメル) 8:03 
Gloria from the Missa Et ecce terrae motus (Antoine Brumel)
17.ミサ曲《いいところばかり》による クレード (ジョスカン・デ・プレ) 6:38 
Credo super de tous biens (Josquin des Prés)
18.ミサ曲《ああ、かぎりなく聖なるマリーア様》から サンクトゥス (ピエール・ド・ラ=リュー) 4:16 
Sanctus from the Missa Ave sanctissima Maria (Pierre de la Rue)
19.ミサ曲《バス・ダンス》から アニュス・デイ (ハインリヒ・イザーク) 4:34 
Agnus Dei from the Missa La Bassadanza (Heinrich Issac)


CD 3 43:13 

モテット集 
Motets 

1.天と地の神でも主でもある方を (ヤーコプ・オブレヒト) 1:32 
Haec Deum caeli (Jacob Obrecht)
2.ああ善良なイエスよ (ロワゼ・コンペール) 3:16 
O bone Jesu (Loyset Compère) 
3.深い淵から (ジョスカン・デ・プレ) 5:02 
De profundis (Josquin des Prés)
4.貴女は祝福されています、天の女王様 (ジョスカン・デ・プレ) 5:38 
Benedicta es, caelorum Regina (Josquin des Prés)
5.処女である母は男を知らずに (ジャン・ムトン) 4:19 
Nesciens Mater virgo virum (Jean Mouton)
6.貴女は犯されず汚されず純潔です、マリーア様 (ジョスカン・デ・プレ) 3:28 
Inviolata, integra et casta es, Maria (Josquin des Pres)
7.汚れのない神の御母 (ヨハネス・オケヘム) 7:55 
Intemerata Dei mater (Johannes Ockeghem)
8.さあ主を賛えよう (ヤーコプ・オブレヒト) 8:02 
Laudemus nunc Dominum (Jacob Obrecht)
9.ああ、かぎりなく聖なるマリーア様 (フィリップ・ヴェルドロ) 3:55 
Ave sanctissima Maria (Philippe Verdelot)


ロンドン古楽コンソート 
The Early Music Consort of London
デイヴィッド・マンロウ(指揮) 
David Munrow, conductor

Singers
Sally Dunkley, Rosemary Hardy: soprano
James Bowman, Charles Brett, David James: counter tenor
Martyn Hill, Paul Elliott, Rogers Covey-Crump, Leigh Nixon, John Potter, Ian Thompson: tenor
Geoffrey Shaw, Maurice Bevan: baritone
Terry Edwards: bass

Instrumentalists
Oliver Brookes, James Tyler, Robert Spencer, Eleanor Sloan, Polly Waterfield, Nigel North, Trevor Jones, Christopher Hogwood, Michael Laird, Roger Brenner, Alan Lumsden, Peter Goodwin, Martin Nicholls, David Munrow, John Turner, Andrew van der Beck, John Donaldson, David Corkhill

録音: 1976年頃 

Advisor for French & Italian pronounciation: Micahel Freeman
Advisor for Flemish & German pronounciation: Marleen Hill-de Maesschalck
Recording Producer: John Willan
Recording Engineer: Stuart Eltham

「Originale」シリーズ・マスター制作: 杉本一家(JVCマスタリングセンター) 


◆本CD日本語解説(高野紀子)より◆ 

「15世紀後半から16世紀初頭にかけて、ヨーロッパには真の意味で最初の国際的な楽派が出現する。この楽派の作曲技法は全ヨーロッパを支配し、宗教音楽にも世俗音楽にも、声楽曲にも器楽曲にも浸透したのである。この楽派は、一般にネーデルラント楽派、あるいはフランコ・フランドル楽派、あるいは単にフランドル楽派と呼ばれている。というのは、この楽派の中心的作曲家の多くがネーデルラント(フランドル)地方の出身者だったからである。」


◆本CD解説(デイヴィッド・マンロウ)より◆ 

「この期の音楽の最も魅力的な側面は、一定の旋律素材がくり返し再利用されていくその方法にある。《武装せる人》や《タンデルナーケン》のような作者不詳の俗謡だけでなく、名の知れた作曲家のシャンソン全体がそうした改作作業の対象となる。著作権法に支配されているわれわれ現代人の眼には、これほど自由に互いに借用、編曲し合えるというのは驚異にうつる。(中略)このディスクにも、そうしたヒット曲が器楽、声楽両面で再加工されていく例を掲げてある。」

 


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全50頁)に解説(高野紀子)、原盤解説日本語訳(デイヴィッド・マンロウ/訳:小林緑、高野紀子)、歌詞対訳(戸口幸策)、図版(モノクロ)19点。ブックレット表紙図版(モノクロ)は「イカロスの墜落のある風景」。

1976年に3枚組LPとしてリリース。1990年代に2枚組CDとして再リリースされていますが、本CD1 #5、11、12、本CD2 #1-5、7、9、11、本CD3 #1がオミットされていました。

★★★★★


Guillaume se va

youtu.be


本CD解説(デイヴィッド・マンロウ)より:

「この短いシャンソンについては、スイスの僧侶グラレアヌスの『ドデカコルドン』(1547)に面白い逸話が載っている。ひどい悪声の持主といわれたフランス王ルイ12世が、ある日ジョスカンに、自分もひとつの声部を受け持って歌えるような数声部の曲を書いてはくれまいかとたずねたところ、音楽に全く無知と思っていた王のそんな申し出に驚いたジョスカンはためらった挙句、承りましたと答えた。翌日の朝食後、宮廷の習慣通り歌で気分一新してから、件(くだん)の曲を4声で書き、王のパートはその貧弱な声がかき消されないようにただひとつの音で仕上げたのだった。この策略を知って王は楽しげに笑い、作曲家をねぎらった、というのである。さてその〈王のパート〉は、このレコードでは、ジョフリー・ショウが受け持っている。」

 

 

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