『十字軍の音楽』
Music of the Crusades
デイヴィッド・マンロウ指揮/ロンドン古楽コンソート
The Early Music Consort of London
Conducted by David Munrow
CD: ポリドール株式会社
ロンドン・ルネッサンス /バロック音楽シリーズ
POCL-2872 (1992年)
税込定価¥2,200(税抜価格¥2,136)
帯文:
「中世ヨーロッパの戦争の歴史〝十字軍〟の聖地遠征時の哀歌、モテット集。」
十字軍の音楽
Music of the Crusades
1.王のエスタンピ(作者不詳) 2:12
La quinte estampie real (anon. French 13th century)
2.神の御名において平安を(マルカブリュ) 3:11
Pax in nomine Domini! (Marcabru)
3.私は禍いを残し(作者不詳) 1:49
Parti de mal (anon. French)
4.騎士たちよ(作者不詳) 2:20
Chevalier, mult estes guariz (anon. French)
5.私は心のなぐさみに(ギォ・ド・ディジョン ) 4:12
Chanterai por mon corage (Guiot de Dijon)
6.王の舞曲(作者不詳) 1:02
Danse real (anon. French 13th century)
7.シオンよ、塵の中に(作者不詳) 3:00
Sede, Syon, in pulvere (anon. French)
8.パレスチナの歌(ワルター・フォン・デル・フォーゲルワイデ) 3:16
Palästinallied (Walther von der Vogelweide)
9.自然の摂理では(作者不詳) 2:12
Condicio - O nacio - Mane prima (anon. French 13th century)
10.おお、全アジアの栄光よ(作者不詳) 2:07
O tocius Asie (anon. French)
11.王のエスタンピ(作者不詳) 2:45
La uitime estampie real (anon. French 13th century)
12.ソロモンには(作者不詳) 3:25
Cum sint difficilia (anon. French)
13.五月、この新しき季節に(ギィ・ド・クゥーシー) 3:07
Li noviaus tens (Le Châtelain de Coucy)
14.較べるものなき(ゴーセルム・フェディット) 4:26
Fortz chausa es (Gaucelm Faidit)
15.私のいとしい人に(作者不詳) 2:30
Je ne puis - Amors me tienent - Veritatem (anon. French 13th century)
16.おお、愛よ!(コノン・ド・ベチューヌ) 2:54
Ahi! Amours (Conon de Béthune)
17.王のエスタンピ(作者不詳) 2:02
La tierche estampie real (anon. French 13th century)
18.囚われ人は(獅子心王リチャード) 2:24
Ja nus hons pris (Richard Coeur-de-Lion)
19.邪悪と不正と(シャンパーニュ伯チボー4世) 2:21
Au tens plain de felonnie (Thibaut de Champagne)
ロンドン古楽コンソート
The Early Music Consort of London
指揮: デイヴィッド・マンロウ
conduceted by David Munrow
クリスティーナ・クラーク(ソプラノ)
Christina Clarke (soprano)
ジェイムズ・ボウマン(カウンター・テノール)
James Bowman (counter tenor)
チャールズ・ブレット(カウンター・テノール)
Charles Brett (counter tenor)
ナイジェル・ロジャース(テノール)
Nigel Rogers (tenor)
ジェオフリー・ショウ(バリトン )
Geoffrey Shaw (baritone)
エレオノール・スローン(トレブル・レベック)
Eleanor Sloan (treble rebec)
オリヴァー・ブルックス(バス・レベック)
Oliver Brookes (bass rebec)
ジェイムズ・テイラー(リュート&シトロ)
James Tyler (lute & citole)
クリストファー・ホグウッド(ハープ、オルガン、ネイカー&タンブラン)
Christopher Hogwood (harp, organ, nakers & tabor)
ギリアン・レイド(ベル)
Gillian Reid (bells)
デイヴィッド・マンロウ(リコーダー、フルート、カラムス、クルムホルン&バグパイプ)
David Munrow (recorder, flute, calamus, crumhorn & bagpipes)
ジェイムズ・ブレイズ(ネイカー&タンブラン)
James Blades (nakers & tabor)
Performing versions by David Munrow
Pronunciation adviser: Norman Clare
Recording
Editor: Ian Bent
Date: 1970
◆本CD解説(伊藤恵子)より◆
「十字軍とは、キリスト教の聖地エルサレムをイスラム教徒の手から奪還するという名目の下に行われた、中世ヨーロッパの戦争の歴史である。「神の御旨(みむね)」によって始められた第1回(1096)以来、約3世紀にわたり、民衆や少年十字軍を除く正式なものだけでも、8回の遠征が記録されている。しかし一応の成功を収めた第1回以後は、西欧諸国の社会的・政治的発達に伴い、諸国の団結は次第に弱まり、士気も衰えていく。そして聖戦という名の狂信的な殺戮がくり返され、1290年、彼らがエルサレムから追放された後は19世紀半ばまで、再び聖地の教会に詣でることはできなくなるのである。ところでこの時期は、フランスのサン・マルシャル楽派やスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラ 楽派等の多声音楽が生まれ、さらにパリのノートルダム楽派で芸術的に開花された時代であり、オルガヌムやクラウズラ、コンドゥクトゥス、モテット等の新しい楽曲形式が生まれた時代であった。また世俗音楽においても、トルバドール(南フランス)やトゥルヴェール(北フランス)、ミンネゼンガー(南ドイツ)といった上流貴族階級出身の詩人たちが、華やかで洗練された歌曲芸術を発達させていた。彼らは恋愛や当時の政治・道徳を歌った数多くの作品を残している。そして、包囲中に勇敢な最期をとげた獅子心王リチャードや、休戦期間に聖地に赴いたため、自作の詩を貴婦人に捧げて日を過ごしたシャンパーニュ伯チボーのように、その多くがこの十字軍遠征に参加し、これをテーマとした作品を作っている。十字軍の兵士には使命感に燃え、聖地へと雄々しく向かった勇敢な騎士たちや、キリストの受難を追体験し、そこから自己救済をと願う敬虔な信徒、庶民的な終末感に怯え、新天地での生活向上を夢みる農民らが混ざっていたように、ここに収められた音楽もモテットス、コンドゥクトゥス等様々であり、その詩も恋の歌から哀歌にまで及んでいる。」
◆本CDについて◆
ブックレット(全16頁)に伊藤恵子による解説(「十字軍」「楽曲解説」)、田所誠子による「アーティスト紹介」、伊藤恵子による「歌詩」(日本語訳のみ)。
これが録音された1970年といえばまさにベトナム戦争まっただ中で、何百年たっても人間がやっていることは変わらないです。明治の日本でも山田美妙が「敵は烏合の勢」で「味方に正しき道理あり」と歌うのと与謝野晶子 が「君死にたもうことなかれ」と歌うのがセットになっていたように、「十字軍の音楽」にも、勇ましいのと切々としたのとが共存しています。
★★★★☆
Anonymous: Cum sint difficilia
「ソロモンには三つの不可思議な奇跡がある。
しかしこの四つめの奇跡を彼らは知らなかった、
人が乙女の胎内で受胎するというこの奇跡を。
かくしてキリストは
乙女マリアの胎に入りたもうた。」
「しかし、彼女こそは大地、
天にして、この海なり。
彼は主なるがゆえに
そこに入る蛇、
小鳥にして、舟なり。」