幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『ラス・ウエルガスの写本(13世紀スペインの音楽)』  パウル・ファン・ネーヴェル指揮 ウエルガス・アンサンブル

『ラス・ウエルガスの写本(13世紀スペインの音楽)』 
パウル・ファン・ネーヴェル指揮 ウエルガス・アンサンブル 

Codex Las Huelgas 
Music from 13th Century Spain 

Huelgas Ensemble 
Paul Van Nevel 


CD: Sony Classical/Sony Records 
SRCR 9150 (1993年) 
¥2,800(税込)/税抜価格¥2,718 
Manufactured by Sony Music Entertainment (Japan) Inc. 

 

 

帯文:
「スペインに伝わる古写本、その神秘を解き明かす」


帯裏:
「スペインのラス・ウエルガスの修道院に伝わる古写本は、中世音楽史上欠くことのできない重要なレパートリーだが、これにちなんで命名された「ウエルガス・アンサンブル」とネーヴェルが長年の研究を踏まえて満を持して取り組んだ。神秘的な響きの中に潜む中世の営みを感じさせる美しい演奏。」


ラス・ウエルガスの写本 CODEX LAS HUELGAS (early 14th century) 

13世紀スペインの音楽 
Music from 13th Century Spain 

1.輝かしき血統より生まれし 5:34 
Ex illustri nata prosapia (Conductus Motet) 
Folio 119 verso - 120 recto 

2.誰しも皆、十字架にかからむ 3:09 
Crucifigat omnes (Conductus) 
Folio 97 recto - 97 verso 

3.おお、マリア、海の星 4:16 
O Maria maris stella (Motet) 
Folio 102 verso - 103 recto - 124 recto - 124 verso - 125 recto 
Tenor: In veritate 
Duplum: O Maria maris stella 
Triplum: O Maria Dei cella 
Quadruplum: O Maria virgo davitica 

4.臨終の血より 2:22 
Ex agone sanguinis (Conductus) 
Folio 61 verso - 62 recto - 62 verso 

5.あまねく知られたるベリアル 5:38 
Belial vocatur (Conductus Motet) 
Folio 82 recto - 82 verso - 83 recto 
Duplum, triplum. quadruplum: Belial voatur 
Tenor: Tenura 

6.サンクトゥス(聖なるかな) 5:01 
Sasnctus 
Folio 16 verso - 17 recto 
Tropus: Divinum misterium 

7.アニュス・デイ(神の小羊) 4:01 
Agnus Dei 
Folio 21 recto 
Tropus: Exultet hec concio 

8.ベネディカムス・ドミノ(われら主を祝福せん) 2:01 
Benedicamus Domino 
Folio 25 verso - 26 recto 

9.南風は穏やかに吹く 4:19 
Flavit auster 
Folio 45 recto - 45 verso - 46 recto - 46 verso 

10.いざ、信徒らの御母よ 7:16 
Eya mater (Prosa) 
Folio 46 verso - 47 recto - 47 verso - 48 recto 

11.誰がわが頭に 3:37 
Quis dabit capiti (Prosa) 
Folio 159 recto 

12.けがれなきカトリック教徒よ 4:36 
Casta catholica (Conductus Motet) 
Folio 121 verso - 122 recto 
Duplum: Casta catholica 
Tenor: Da dulcis domina 

13.哀れなる人よ 3:27 
Homo miserabilis (Motet) 
Folio 127 verso - 128 recto 
Tenor: Brumas (Text: Ms. Darmstadt No.21) 
Duplum: Homo miserabilis 
Triplum: Homo luge (Ms. Darmstadt No.21) 


パウル・ファン・ネーヴェル指揮 
ウエルガス・アンサンブル 

カトリーヌ・ジュスラン(歌唱)
Catherine Joussellin: Cantus 
クリスティーヌ・ガブリエル・マダール(歌唱)
Christine Gabrielle Madar: Cantus 
ネレ・ミンテン(歌唱)
Nele Minten: Cantus 
マリー=クロード・ヴァラン(歌唱)
Marie-Claude Vallin: Cantus 
カテライネ・ファン・ラエテム(歌唱)
Katelijne Van Laethem: Cantus 

バルト・カン(ソプラノ・リコーダー、アルト・リコーダー、テノール・リコーダー)
Bart Coen: Soprano Recorder, Alto Recorder, Tenor Recorder 
ペーテル・デ・クレルク(テノール・リコーダー、バス・リコーダー)
Peter de Clercq: Tenor Recorder, Basset Recorder 
アン・ファン・ラエテム(ヴィエール)
An Van Laethem: Fiddle 
レネ・ファン・ラーケン(ヴィエール、レベック)
René Van Laken: Fiddle, Rebec 

パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)
Paul Van Nevel, Conductor 


〈20ビット・レコーダーによるデジタル録音〉
プロデューサー:ヴォルフ・エリクソン 
Producer / Recording Supervisor: Wolf Erichson. 
録音エンジニア:ステファン・シェルマン
Engineer: Stephan Schellmann (TRITONUS). 
Editing: Andreas Lemke (TRITONUS). 
1992年10月9日~11日 ベルギー、シスターシャン・アブディ・マリエンロフ教会にて収録
Recorded at the Chapel of Cistercian Abdij Marienlot, Belgium, October 9-11, 1992 
解説書表紙:"Frontal d'Avia", Museu Nacional d'Art de Catalunya. 
All Transcriptions by Paul Van Nevel. 


パウル・ファン・ネーヴェルによる解説より◆

「この写本は、種々の点からユニークである。まず、〈ラス・ウエルガスの写本〉は、当時のものとして、いまだに編纂されたその場所に所蔵されつづける唯一のものである。すなわち、この写本はラス・ウエルガスで作られ、こんにちなお、ここにあるのだ。更に、この集成は、どのような面からも、アルス・アンティクァ期の音楽に対する万華鏡的な展望を可能にするものである。ここにはパリ・ノートルダム楽派の“エヴァーグリーン”的楽曲が含まれている(中略)が、また一方、スペインで生まれた地方的な作品、とりわけラス・ウエルガスのために特別に書かれた作品もある。(中略)年代は12世紀の末から14世紀初めまでで、とりわけ13世紀後半の作品に重きが置かれている――このことと、賢王アルフォンソの治世下であったこととは、決して偶然の一致とは言えまい。」
「大部分の作品の楽譜には、さまざまな装飾法の記入が見られる。こんにちまで、この面については、あまりにも僅かな注意しか払われてこなかった。この録音において、ウエルガス・アンサンブルは、アルス・アンティクァ期の音楽作品に対する装飾法という、長く忘却されてきた芸術に実体を与えようとつとめている。」
「次に、最も重要な装飾を列記しておこう。」
「a) プリカ(plica)――記入された装飾。理論家たちによる詳しい説明が存在する。
b) フローレス・ロンジ、フローレス・アペルティ、フローレス・スビティ(Flores longi, flores aperti, flores subiti)――ヒエロニムス・デ・モラヴィアが記しているもので、それぞれ「ゆっくりした」「中庸の」「速い」または「漸速の」トリルである。主になる音と装飾する音の関係は半音差、1音差のいずれでもよい(ヴィヴラートのこともある)。
c) レヴェルベラツィオ(Reverberatio)――アポジャトゥーラ、すなわち主な音(装飾を受ける音)に対する倚音。時に、〈カンティネラ・コロナータ cantinella coronata〉すなわち半音階的に動く装飾が共に配合されることもある。」
「d) トレムラ・ヴォクス(Tremula vox)――訳すれば「ふるえる声」。アドモントのエンゲルベルトほかの人びとが述べている。ある1音上に繰り返される振動。」
「e) ヴィンノラ・ヴォクス(Vinnola vox)――装飾を受ける音の周囲にわたって施されるもの。ブドウの蔓が枝にからむような工合なので、このように呼ぶ(ヴィンノラはブドウの木にちなむ言葉)。」


◆本CDについて◆

ジュエルケース(白トレイ)。ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、「〈ラス・ウエルガスの写本〉――後期アルス・アンティクァの手書き譜」(パウル・ファン・ネーヴェル/訳:濱田滋郎)、「演奏者とこのディスクについて」(濱田滋郎)、歌詞&対訳(訳:濱田滋郎)、「ネーヴェル/ウエルガス・アンサンブルのCD」(CDリスト)、アーティスト写真(モノクロ)1点。

女子修道院の写本なので女声合唱です。解説にもあるように、装飾が特徴的です。#13「哀れなる人よ」などほとんどノリはブルガリアン・ヴォイス。

★★★★★


ベネディカムス・ドミノ(われら主を祝福せん)

 

哀れなる人よ