『夢の時~武満徹、管弦楽曲集』 岩城宏之
Toru Takemitsu: Dreamtime
Melbourne Symphony Orchestra
Hiroyuki Iwaki
CD:RCA Red Seal
発売元:BMGビクター株式会社
BVCC-634 (1993年)
¥2,800(税込)(税抜価格¥2,718)
帯文:
「武満、永遠のテーマ「夢」「数」「水」。そしてその根底に流れる「自然」。
それらすべてが演奏者の熱い共感により結集された注目作。」
帯裏文:
「武満は多くの点でまさに20世紀ならではの国際的な芸術家である。あらゆるものについて自由に思考し反応する。あらゆるものを吸収し作品化する。このCDの作品群が示すように、彼はなんでも自分の世界に取り込んでいく。オーストラリアのアボリジニの神話も、ソ連の映画監督のイメージも、スペインの画家ミロの人柄も、ジェイムス・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』の魔術も、マルセル・デュシャンの写真の記憶も。そしてすべてを使って彼の「夢」「数」「水」に対する愛を燃え立たせるのだ。
バリー・コニングハムのライナーより」
1.夢の時 (1981) 11:37
Dreamtime (1981)
2.ノスタルジア (1987) 11:07
Nostalghia (1987)
3.虹へ向かって、パルマ (1984年) 14:44
Vers, l'Arc-en-ciel, Palma (1984)
4.ヴァイオリンとオーケストラのための「遠い呼び声の彼方へ」 (1980) 11:39
Far Calls, Coming Far! (1980)
5.鳥は星形の庭に降りる (1977) 11:00
A Flock Descends into the Pentagonal Garden (1977)
岩城宏之 指揮
メルボルン交響楽団
Melbourne Symphony Orchestra
Hiroyuki Iwaki, conductor
マイケル・ダウス(ヴァイオリン)
Michael Dauth, solo violin [2][4]
佐藤紀雄(ギター)
Norio Sato, guitar [3]
ジェフリー・クレリン(オーボエ・ダモーレ)
Jeffrey Crellin, oboe d'amore [3]
Total Time - 59:27
Recorded November 8, 12, 13, 15, 1990, in the Concert Hall of the Victorian Arts Centre, Australia
Produced by Maria Vandamme
Recording Engineer: Jim Atkins
Photo (C) William Huber / PHOTONICA
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◆バリー・コニンハムによる解説より◆
「オーケストラのための《夢の時》(1982年)は、もとは舞踊のための音楽として書かれた。ネーデルランド・ダンス・シアターとそのチェコスロバキアの監督・振り付け師であるイリ・キリアンに委嘱を受けたもので、(中略)初演は1982年6月に岩城指揮の札幌交響楽団で行なわれた。
武満はこう記している。
「作曲に当たって、オーストラリアのアボリジニに伝わる神話〈夢の時(ドリームタイム)〉から強い影響を受けた。」」
「「〈夢〉が、その細部において鮮明でありながら、思いがけない非現実的な全体を示すように、この作品では短いエピソードが、一見とりとめなく浮遊するように連なる。リズムの微妙な増減、テンポの変化が、曲の浮遊感をいっそう強調する。」」
「ヴァイオリン・ソロと弦楽オーケストラのための《ノスタルジア》(1987年)は、ソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキーに対する『追憶』である。イタリア語のタイトルは同監督の映画の題名であるが、ここでは静かな挽歌的な気分を表すものになっている。」
「《虹へ向かって、パルマ》(1984年)は、(中略)武満が1970年に出会ったスペインの画家ホアン・ミロへの「オマージュ」である。作曲家は画家の「無心さ」「気取りのない、無垢な」人柄に魅せられたと回想している。」
「「この数年、私は『夢(ドリーム)と数(ナンバー)』と『水(ウォーター)』の、2つのシリーズで作曲している。…中略…この独奏ヴァイオリンとオーケストラのための《遠い呼び声の彼方へ》は、その2つのシリーズが合流したものだと言えよう。」
この作品のタイトルは、作曲家の大好きなジェイムス・ジョイス小説『フィネガンズ・ウェイク』から借りたものである。ジョイスの文章は、水のイメージに満ちた「夢の言葉」として捉えられている。タイトルは小説に登場するアナ・リヴィアが、海に流れ込むリフィー川を見て歌う部分である。音楽は夢のような川の流れが、蛇行し、成長し、やがては「海なる調性であるC」へと到達するという暗喩を表している。」
「《鳥は星形の庭に降りる》(1977年)は、(中略)まさに武満自身の夢に触発された作品で、彼は夢のなかで鳥の群が旋回しながら星形の庭に降りるのを見たのだ――しかしその形はマルセル・デュシャンの頭部を後ろから写した有名な写真のなかの、星形の剃り込みでもあるのだ。」
◆本CDについて◆
ブックレット(全12頁)にトラックリスト&クレジット、バリー・コニンハム「武満徹について」(訳:木村博江)、演奏者紹介「岩城宏之」「佐藤紀雄」(訳:木村博江)、CDリスト(『ノヴェンバー・ステップス』『水の風景』、カラー図版2点)。
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