『武満徹:フォー・アウェイ、遮られない休息、他』
高橋悠治(pf)
Takemitsu: For Away / Uninterrupted Rests / Piano Distance / Corona
Yuji Takahashi
CD:Deutsche Grammophon/ポリドール株式会社
POCG-3358 (1994年)
¥2,200(税込)(税抜価格¥2,136)
Made in Japan
帯裏文:
「武満徹が作曲を始めたときからの精神的支柱でありつづけた瀧口修造の詩「遮られない休息」による同名の作品のほか、高橋悠治のリサイタルのために書かれた多重録音による四台のピアノのための《ピアニストのためのコロナ》、ガムラン音楽のあり方に深い印象を受けて作曲した《フォー・アウェイ》、初演者・高橋悠治に捧げられた《ピアノ・ディスタンス》の、ピアノのための作品五曲を収録。」
1.フォー・アウェイ(1973) 6:33
For Away
2.遮られない休息Ⅰ(1950) 3:05
Uninterrupted Rest I
3.遮られない休息Ⅱ(1959) 2:46
Uninterrupted Rest II
4.遮られない休息Ⅲ(1959) 1:37
Uninterrupted Rest III
5.ピアノ・ディスタンス(1961) 4:44
Piano Distance
6.ピアニストのためのコロナ(1962) 23:08
Corona for Pianist(s)
高橋悠治(ピアノ)
Yuji Takahashi, Piano
録音:1973年4月、1972年11月 東京
Recording: Tokyo, Polydor Studio No. 1, 4/1973 ([1]-[5]), 11/1972 ([6])
Recording Producer: Shosuke AKino
Tonmeister (Balance Engineer): Nobuo Sugita
◆高橋悠治によるライナーノーツより◆
「フォー・アウェイ(For Away)」
「1973年、ロジャー・ウッドワードにささげる。かれは1973年5月ロンドンでこの曲の初演をおこなった。」
「この曲でのピアノのあつかいは、全体としては1968年のピアノとオーケストラのための「アステリズム」の線上にある。おわりちかくに、ガムランのペログ音階によるパッセージが一瞬ひらめく。かれは、この曲を構想中に、2週間ほどバリ島をおとずれ、そこでの音楽のありかたにふかい印象をうけた。」
「遮られない休息Ⅰ(1950年)、Ⅱ・Ⅲ(1959年)」
「題名は瀧口修造が1937年に発表した詩画集『妖精の距離』のなかの詩による。このシュール・レアリスムの詩人は、武満徹が作曲をはじめたときからの、ながい困難な時期をとおして、いつもかれの精神的支柱でありつづけた。」
「第1曲は「ゆっくりと悲しく、語りかけるように」、第2曲は「静かに残酷なひびきで」と指定され、アルバン・ベルクにささげられた第3曲は〈愛のうた〉と題されている。」
「ピアノ・ディスタンスは1961年、初演者・高橋悠治にささげられる。
ここでは、《遮られない休息Ⅱ》にすでにあらわれた、半呼吸のながさ約3秒にもとづく無拍節リズムのゆるやかな周期の波にのって、さまざまな音事象が記譜されている。題名は、ピアノからとりだされるそれらのひびきのあいだの、音色・音程・音量(きき手からの「ちかさ」の概念としての)・和音の密度など、多様な意味での「距離」にかかわっているのだろうか。」
「ピアニストのためのコロナ(1962)」
「これは、グラフィック・デザイナー杉浦康平との共同作業による作品。青・赤・黄・灰・白の5枚の正方形の紙は、それぞれ振動・イントネーション・アーティキュレーション・表現・会話のための研究である。中心にえがかれた円周にそって、曲線や放射線上の点がしるされている、これらの紙は、中心軸へのきれこみによって、たがいにくみあわせることができる。
この演奏は、多重録音による4台のピアノのためのものである。」
「この曲は、1962年のぼくのリサイタルへの、かれのおくりものだった。そのときは、作曲家・一柳慧とふたりで演奏した。
10年後のこの演奏は、当時とまったくちがう方法でなされる。おそらく作曲者も予知しなかったような可能性の発見であり、したがって演奏者から作曲者へのおくりものである。」
◆本CDについて◆
ブックレット(三つ折り)にトラックリスト&クレジット、高橋悠治によるライナーノーツ(1973年)、モノクロ図版(「武満徹とレコーディング・スタッフ」)1点。
オリジナルLPは1973年10月に『ミニアチュール 第3集 高橋悠治/武満徹の芸術』(MG 2408)としてリリースされました。
武満徹のピアノ曲は水(水滴・雨・流れ・海)っぽいイメージですが、本作は硬質で鉱物的な音になっています。
★★★★★