Takemitsu
November Steps
Requiem for String Orchestra
Seiji Ozawa
CD:RCA Red Seal/Sony Music Japan International Inc.
シリーズ:BEST CLASSICS 100
SICC-30014 (2012年)
定価¥1,890(税抜価格¥1,800)
Blu-spec CD 2
帯文:
「20世紀の巨人・武満徹の最高傑作を極めつけの名演で。これぞまさに音の「世界遺産」。」
帯裏文:
「世界初演のわずか1ヵ月後に録音された『ノヴェンバー・ステップス』をはじめ、武満を語るときに欠かせない小澤の名演奏を収録。ドビュッシー直系の感覚的な手触りを無反省に強調するのではなく、むしろ厳しく屹立する孤高の美を、その生成の瞬間に立ち返って一気にすくい取ったかのような緊張と火照りとが充溢するアルバムです。こうした生気と勢いに満ちた武満作品の演奏は、今日ではなかなか聴くことのできない貴重な価値を持っています。」
武満徹
ノヴェンバー・ステップス 他
Total time 54:58
1.ノヴェンバー・ステップス[作曲者監修による/世界初録音] 20:24
2.アステリズム~ピアノと管弦楽のための[RCAレコードによる委嘱作/世界初録音] 11:45
3.グリーン[世界初録音] 5:41
4.弦楽のためのレクイエム 7:47
5.地平線のドーリア[北米初録音] 9:05
小澤征爾(指揮) トロント交響楽団
鶴田錦史(琵琶)[1]
横山勝也(尺八)[1]
高橋悠治(ピアノ)[2]
Producer: Peter Dellheim
Recording Engineer: Bernard Keville
Recording: December 8, 1967 ([1]), January 16, 1969 ([2][5]), January 17, 1969 ([3][4]) at Massey Hall, Toronto
(P) (C) 1990 Sony Music Entertainment
◆武満徹「《ノヴェンバー・ステップス》について」より◆
「1
オーケストラに対して、日本の伝統楽器をいかにも自然にブレンドするというようなことが、作曲家のメチエであってはならない。むしろ、琵琶と尺八がさししめす異質の音の領土を、オーケストラに対置することで際立たせるべきなのである。」
「2
数多くの異なる聴覚的焦点(フォーカス)を設定すること、これは作曲という行為の(客観的な)側面であり、また、無数の音たちのなかに一つの声を聴こうとするのは、そのもうひとつの側面である。」
「3
洋楽の音は水平に歩行する。
だが、尺八の音は垂直に樹のように起こる。」
「4
尺八の名人が、その演奏のうえで望む至上の音は、風が古びた竹藪を吹きぬけていくときに鳴らす音であるということを、あなたは知っていますか?」
「5
まず、聴くという素朴な行為に徹すること。やがて、音自身がのぞむところを理解することができるだろう。」
「6
イルカの交信がかれらのなき声(引用者注:「なき声」に傍点)によってはなされないで、音と音のあいだにある無音の間の長さによってなされるという生物学者の発表は暗示的だ。」
「7
地球上に時差があるように、オーケストラをいくつかの時間帯として配置する。
時間のスペクトラム。」
「10
特別の旋律的主題をもたない11のステップ。
能楽のようにたえず揺れ動く拍。」
「11
〈ノヴェンバー・ステップス〉はニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団創立125周年記念のための委嘱作品として作曲を依頼され、1967年11月に同交響楽団によって初演された。」
◆船山隆による解説より◆
「アステリズム―ピアノと管弦楽のための」
「〈アステリズム。名詞:1.〔天文学用語〕a.星群。b.星座。2.〔結晶学用語〕光の反射をうけると、星状の光彩をしめすある種の礦物の結晶に見られる固有性。(後略)〉――この作品のスコアの扉には、このような〈アステリズム〉という言葉についての辞書からの引用が掲載されている。」
「グリーン」
「作曲家の言葉によればこの作品は〈子供のための音楽〉で、作曲家の友人の5人の子供に捧げられているという。」
◆武満徹による楽曲コメントより◆
「弦楽のためのレクイエム」
「主題は波紋のように拡がるゆるやかな振幅の内部(うち)に在り、たちあらわれる痙攣的な形態、テンポ・モデレは水泡のように突然あらわれて、たえずゆるやかな振幅に合流しようとします。」
「この曲では、‟拍”に対する観念が西欧のそれとはまったく異なっています。いうなれば、One by Oneのリズムのうえに曲は構成されています。はじまりもおわりもさだかではない。人間とこの世界をつらぬいている音の河の流れの或る部分を偶然にとりだしたものだといったら、この作品の性格を端的にあかしたことになります。」
「地平線のドーリア」
「旋律ではなくハーモニック・ピッチ(Harmonic pitch)という考えかた、リズムではなくプルセーション(Pulsation)という考えかた。新しいポリフォニーを試みる最初のデッサン。以前にこの曲を構想した折りのメモには、以上のようなことが書きつけてあった。」
◆本CDについて◆
ブックレット(全16頁)にトラックリスト&クレジット、武満徹「《ノヴェンバー・ステップス》について」、船山隆による解説(「ドビュッシーから再出発」「ノヴェンバー・ステップス」「アステリズム―ピアノと管弦楽のための」「グリーン」)、秋山邦晴による解説(「弦楽のためのレクイエム」「地平線のドーリア」/武満徹による楽曲コメントを含む)、「小澤征爾」(演奏者紹介)、「ベスト・クラシック100」(CDリスト)、モノクロ写真図版(「1967年12月、トロント、マッセイ・ホールでのレコーディング風景。」)1点。投げ込み(2頁/「Blu-spec CD2」について)。「解説は、2007年発売時のものを転載しております。」。
★★★★★
アステリズム