幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

武満徹 『雅楽 秋庭歌 一具』 (演奏:東京楽所)

武満徹雅楽 秋庭歌 一具』 (演奏:東京楽所)
Toru Takemitsu 
In an autumn garden 


CD:Victor 
発売元:ビクター音楽産業株式会社 
VDC-1192 (1987年) 
¥3,200 
Made in Japan 

 


帯文:

「磨きぬかれた響きと沈黙の世界!CDならではの醍醐味!!」


武満徹 雅楽 秋庭歌 一具 
Toru Takemitsu In an Autumn Garden 

1.参音声(マイリ オン ジョウ) Strophe 7:16 
2.吹渡(フキ ワタシ) Echo I 4:16 
3.塩梅(エン バイ) Melisma 5:57 
4.秋庭歌(シュウ テイ ガ) In an Autumn Garden 14:20 
5.吹渡二段(フキ ワタシ ニ ダン) Echo II 5:47 
6.退出音声(マカ デ オン ジョウ) Antistrophe 5:42 


演奏:東京楽所(とうきょうがくそ) Tokyo Gakuso 
〔東京楽所メンバー〕
〔指導〕総合・笙/多忠麿 篳篥/東儀兼彦 笛/芝祐靖 
〔秋庭〕笙/岩波滋 篳篥/東儀良夫 龍笛/芝祐靖 狛笛/上明彦 琵琶/山田清彦 箏/東儀俊美 鞨鼓/福田一 大鼓/林廣一 鉦鼓/吉川和夫 
〔木魂一〕笙/薗廣育、薗廣晴、薗隆博、西塔義睦 篳篥/東儀兼彦、安倍季昌 龍笛/東儀勝、安斎省吾 
〔木魂二〕笙/豊英秋、樹谷淳宣 篳篥/大窪永夫、小野貴嗣 龍笛/赤尾三千子 鞨鼓/菅原淳 
〔木魂三〕笙/多忠麿、宮田まゆみ 篳篥/池辺五郎、東儀博昭 龍笛/岩亀裕子 鞨鼓/佐藤迪

supervisor: Toru Takemitsu 
cooperators: Toshirô Kido/Tokyo Concerts/Sumitomo 3M, Inc. 
producer: Issaku Hata 
director: Shigeru Kurokoji/Naohiko Kumoshita 
jacket designer: Ikko Tanaka 
photographer: Takashi Kijima 
Recorded at Victor Studio No. 1 (1980.5.3-4) 

(DIGITAL RECORDING)
●Recorded in May 3~4, 1980 Victor Studio. 


武満徹秋庭歌一具のこと」より◆

「1973年の秋、雅楽管弦のために、秋庭歌(一具全曲中の第四曲)を作曲して、この魅惑的な素材に再び創作の意欲をもったのは、先年の試みにおいて意に充たなかったいくつかの事柄、例えば音色彩と密接な時間(引用者注:「時間」に傍点)――テンポや持続の問題、さらに色彩の空間的変容等について考察するのに、雅楽ほど適(ふさわ)しい媒体は他にあるまいと思ったからである。」
「この雅楽のように特殊な形態のオーケストラは世に類例を見ない。それはかならずしも特殊な生を永らえたと謂うことに由来するばかりではない。純粋に物理的な見地において特殊であり、寧ろそれは奇異ですらある。だがそれがあの非現実的な魅惑に満ちた音響世界を創出しているのだ。凡そ高音に偏った楽器群、その極度に制限された機能、異質の音色の集合。雅楽は、西洋の調和(アンサンブル)の概念からは遠く隔たっている。だが、あの永遠や無限と謂うものを暗示する形而上的な笙の持続--それが人間(ひと)の呼吸と結びついていることの偉大さ――に対して、楔のように打ちこまれる箏や琵琶の乾いた響き――それは笙や篳篥等とは全く異なる時間圏を形成する―。そして、管楽器の、殊に篳篥の浮游するようなメリスマ、それらの総てが醸成する異質性(ヘテロジェニティ)は、私たち(人類)にとってはけっして古びた問題ではない。」


秋山邦晴による解説より◆

国立劇場はこれまでに現代の雅楽をうみだすために、何人かの作曲家に作曲を委嘱してきた。こうして黛敏郎〈昭和天平楽〉(1970)やシュトックハウゼン〈Hikari〉(1976)などがすでに登場している。
 1973年、国立劇場武満徹に新作雅楽の作曲を委嘱した。かれは雅楽〈秋庭歌〉を作曲、1973年10月30日、国立劇場第15回雅楽公演で、宮内庁式部職楽部によって初演された。
 1979年夏、武満はこの曲の前後に新たに5曲を作曲、一部に舞をくわえて、同年9月28日、国立劇場第26回雅楽公演で東京楽所の演奏によって全曲が初演された。これがこのディスクに収められた〈秋庭歌・一具〉と名づける雅楽曲である。全曲50分に及ぶ長大な作品である。」


◆本CDについて◆

ブックレット(全20頁)にトラックリスト&クレジット、武満徹秋庭歌一具のこと」、Toru Takemitsu「Thoughts about "In an autumn garden"」(Translated by Richard Emmert)、秋山邦晴による解説「武満徹雅楽〈秋庭歌・一具〉」、Kuniharu Akiyama「Toru Takemitsu: Gagaku - In An Autumn Garden」(Translated by Richard Emmert)。

1980年録音。オリジナルLPは1980年リリース。1984年にCD化、本CDは1987年の再発CDです。

★★★★★