幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『グリーグ:歌曲集』  フォン・オッター

グリーグ:歌曲集』 
フォン・オッター 
Grieg: Songs - Lieder 
Anne Sofie von Otter 
Bengt Forsberg 


CD: Deutsche Grammophon 
制作:ユニバーサル クラシックス&ジャズ 
発売・販売元:ユニバーサル ミュージック株式会社 
シリーズ:グリーグ没後100年記念 Grieg 100 Anniversary 
UCCG-4230 (2007年) 
定価¥1,800(税抜価格¥1,714) 
Made in Japan 

 

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帯文: 

「天才のひらめきを感じさせる珠玉の歌曲をオッターの共感溢れる歌唱で。
1993年英グラモフォン賞レコード・オブ・ザ・イヤー/1994年独エジソン
グリーグ:歌曲集(全25曲) 
アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ) 
ベンクト・フォシュベリ(ピアノ)」


エドヴァルド・グリーグ
Edvard Grieg (1843-1907) 

歌曲集 
Songs 


歌曲集《山の娘》 作品67 
Haugtussa, op. 67 
アーネ・ガルボルグの詩による歌曲集
〔ニューノシュク歌唱〕 
Song-Cyclus af Arne Garborg 
1.第1曲:それは歌う(誘惑) 3:52 
I. Det syng 
2.第2曲:ヴェスレモイ 2:30 
II. Veslemøy 
3.第3曲:ブルーベリーの丘の斜面 2:44 
III. Blåbӕr-Li 
4.第4曲:逢引き 3:54 
IV. Møte 
5.第5曲:愛 2:16 
V. Elsk 
6.第6曲:小山羊のダンス 1:41 
VI. Killingdans 
7.第7曲:悪い日 2:30 
VII. Vond Dag 
8.第8曲:イェットレの小川で 6:17 
VIII. Ved Gjӕtle-Bekken 

6つの歌 作品48〔ドイツ語歌唱〕 
Seks sange, op. 48 
9.第1曲:挨拶 1:09 
I. Gruß 
10.第2曲:いつの日か わが思いよ 3:38 
II. Dereinst, Gedanke mein 
11.第3曲:世のならい 1:37 
II. Lauf der Welt 
12.第4曲:秘密を守る夜うぐいす 3:22 
IV. Die verschwiegene Nachtigall 
13.第5曲:薔薇の季節に 2:36 
V. Zur Rosenzeit 
14.第6曲:夢 2:08 
VI. Ein Traum 

ヘンリク・イプセンの6つの詩による歌曲 作品25から〔ブークモール歌唱〕 
Seks Digte af Henrik Ibsen, op. 25 
15.第2曲:白鳥 1:41 
II. En svane 
16.第4曲:睡蓮に寄せて 2:03 
IV. Med en vandlilje 

ヨン・パウルセンの5つの詩による歌曲 作品26から〔ブークモール歌唱〕 
Fem Digte af John Paulsen, op. 26 
17.第1曲:希望 1:54 
I. Et Håb 

オムスン・オラヴソン・ヴィニエの詩による12の旋律集 作品33から〔ブークモール歌唱〕 
Tolv Melodier til Digte af Aasmund Olavsson Vinje, op. 33 
18.第2曲:春 5:21 
II. Våren 

ヴィルヘルム・クラーグの5つの詩による歌曲 作品60から〔ブークモール歌唱〕 
Digte af Vilhelm Krag, op. 60 
19.第3曲:待ちながら 2:08 
III. Mens jeg venter 

7つの子供の歌 作品61から〔ブークモール歌唱〕 
Barnlige Sange, op. 61 
20.第3曲:呼び声(農場の歌) 0:46 
III. Lok 

オムスン・オラヴソン・ヴィニエの詩による12の旋律集 作品33〔ニューノシュク歌唱〕 
Tolv Melodier til Digte af Aasmund Olavsson Vinje, op. 33 
21.第5曲:流れに沿って 2:05 
V. Langs ei Å 

ロマンス集 作品39から〔ブークモール歌唱〕 
Romancer, op. 39 
22.第1曲:モンテ・ピンチョから 5:52 
I. Fra Monte Pincio 

アンデルセンの詩による《心の旋律集》 作品5から〔デンマーク語歌唱〕 
Hjertets Melodier af H. C. Andersen, op. 5 
23.第1曲:ふたつの茶色の眼 1:05 
I. To brune Øjne 
24.第3曲:きみを愛す 1:39 
III. Jeg elsker Dig 

ホルガー・ドラックマンの6つの詩による歌曲 作品49から〔デンマーク語歌唱〕 
Seks Digte af Holger Drachmann, op. 49 
25.第6曲:春の雨 2:44 
VI. Forårsregn 


アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ) 
Anne Sofie von Otter, mezzo-soprano 
ベンクト・フォシュベリ(ピアノ) 
Bengt Forsberg, piano 

録音:1992年3月 ストックホルム 

Cover Illustration: "Inger on the Beach" (1889) by Edvard Munch 

「訳注:ノルウェー公用語としてブークモールとニューノシュクがあり、前者はデンマーク語にノルウェー的要素を取り入れたリクスモールが1929年に改称され、後者は西ノルウェー諸方言をもとに創造されたランスモールが1929年に改称されたもの。」


◆本CD解説より◆ 

グリーグの《山の娘》曲集は豊かな変化に富んだ詩的な作品であるが、しかし同時に高度の統一性を持っている。それらの詩はノルウェー南西部の荒野の地域の空想的な若い牛飼い娘のヴェスレモイを中心としている。彼女の恋人に捨てられて、彼女は人生の厳しい現実と周囲の無関心から逃れようとする。彼女の空想の中で自然そのものと地下の世界の力に出会う。グリーグがこの曲集の主題としてえらんだのはこれら二つの努力の併置である。恋の歌と自然についての歌が入れ替わり立ち替わり現れるが、その進行は二つの努力の内面的な一貫性に対する芸術家の直観によって統一されている。もろもろの自然の力の音によって山の中へと少女が誘い込まれる最初の歌(それは歌う(誘惑)〉から、シューベルトの《水車小屋の娘》のように少女がさまよい、渦をえがく、小川に慰めと逃避を求める最後の歌〈イエットレの小川で〉に至るまで一貫性が保たれている。グリーグ自身《山の娘》の歌曲は自分が作曲した中で最上のものであると主張していた。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(本文24頁)にトラックリスト&クレジット、フィン・ベーネスタによる解説(訳:大束省三)、アンネ・ソフィー・フォン・オッター紹介文(無記名)、歌詞対訳(大束省三)、ブックレット裏表紙に写真図版(カラー)。

ジャケ絵はエドヴァルド・ムンク「浜辺のインゲル」。グリーグは鄙びていてよいです。それにしてもフォン・オッター(かわうそさん)は歌が上手いです。

★★★★★ 


歌曲集『山の娘』より「イェットレの小川で」(訳:大束省三) 


「Du surlande Bekk, 
お前 せせらぐ小川よ 
du kurlande Bekk, 
お前 つぶやく小川よ 
her ligg du og kosar deg varm og klår. 
お前はここに いとも心地良げに温かく澄んで横たわっている 
Og sprytar deg rein 
お前は 自らをすすいで奇麗にし 
og glid yver Stein, 
石の上を滑ってゆく 
og sullar så godt 
そして とても良くハミングし 
og mullar så smått, 
非常に静かにつぶやく 
og glitrar i Soli med mjuke Bår'. 
お前のさざ波は 日の光の中に穏やかにきらめく 
Å, her vil eg kvila, kvila.
おお小川よ 私はここに憩おう 憩おう 

Du tiklande Bekk, 
お前 歌う小川よ 
du siklande Bekk, 
お前 さざ波を立てる小川よ 
her gjeng du så glad i den ljose Li. 
お前はとても幸せそうに 日なたの斜面を流れる 
Med Klunk og med Klukk, 
くるっく くるっく 音を立て 
med Song og med Sukk, 
歌とため息を響かせて 
med Sus og med Dus 
ひゅー ひゅー 言って 咆えて 
gjenom lauvbygd Hus, 
葉の茂みの家を通って 
med underlegt Svall og med Svæving blid. 
みごとなおしゃべりと安らかなまどろみをもって 
- Å, her vil eg drøyma, drøyma. 
おお小川よ 私はここに夢みたい 夢みたい 

Du hullande Bekk, 
お前 口ずさむ小川よ 
du sullande Bekk, 
お前 つぶやく小川よ 
her fekk du seng under mosen mjuk. 
お前はここ やわらかい苔の下に お前の寝床をつくる 
Her drøymer du kurt 
ここでお前は しばし夢みて 
og gløymer deg burt 
自分を忘れ去る 
og kviskrar og kved 
そしてささやき 歌う 
i den store Fred 大きなやすらぎの中に 
med Svaling for Hugsott og Lengting sjuk. 
悩める心と苦しいあこがれのために 癒しをもたらして 
- Å, her vil eg minnast, minnast. 
おお小川よ ここで私は思い出そう 思い出そう 

Du vildrande Bekk, 
お前 さすらう小川よ 
du sildrande Bekk, 
お前 さざめく小川よ 
kva tenkte du alt på din lange Veg? 
お前はお前の長い旅の間に何を考えたのか? 
Gjenom aude Rom? 
淋しい土地を通り 
millom Busk og Blom? 
茂みや花の間で… 
Når i Jord du smatt, 
お前が地面に消えて 
når du fann deg att? 
また出て来たときに… 
Tru nokon du såg so eismal som eg? 
お前は私のように こんなにも淋しい人を見たことがありますか? 
Å, her vil eg gløyma, gløyma. 
おお小川よ 私はここで忘れよう 忘れよう 

Du tislande Bekk, 
お前 ささやく小川よ 
du rislande Bekk, 
お前 ざわめく小川よ 
du leikar i Lund, du sullar i Ro. 
お前は茂みに遊び お前は安らぎの中で口ずさむ 
Og smiler mot Sol 
そして太陽に微笑みかけ 
og lær i dit Skjol 
お前の隠れ家で笑う 
og vandrar so langt 
そしてたいへん遠くさ迷い 
og lærer so mangt, 
多くのことを知る 
å syng kje um det, som eg tenkjer no. 
おお 私の思いの中に 今あることを歌わないでおくれ 
- Å, lat meg få blunda, blunda! 
おお小川よ 私を眠らせておくれ 眠らせておくれ!」