幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『マーラー:交響曲第10番~アダージョ/嘆きの歌&リュッケルト歌曲集』  ピエール・ブーレーズ

マーラー交響曲第10番~アダージョ/嘆きの歌&リュッケルト歌曲集』 
ピエール・ブーレーズ 

Boulez conducts Mahler 


CD: Sony Classical/Sony Music Japan International Inc. 
SICC 1435~6 (2010年)[2枚組] 
特別価格¥1,890(税込)〔¥1,800(税抜)〕 
STEREO ADD 

 

ブックレット(表)。

ブックレット(裏)。


帯文:

ブーレーズが初めて録音したマーラー。」


帯裏文:

ブーレーズが1970年代にソニー・クラシカルに残した全マーラー録音を集成した2枚組。ブーレーズマーラー初録音はマーラーがウィーン音楽院時代に作曲し、ベートヴェン賞に応募した意欲作「嘆きの歌」で、当初マーラーが改訂した2部構成で録音・発売されたが、初稿が発見されたことで第1部を収録、交響曲第10番のアダージョと組み合わせて発売された。その精緻で知性的な解釈がマーラーの音楽に新しい光を当てたことで、大きな話題になった。」


グスタフ・マーラー GUSTAV MAHLER (1860-1911) 


DISC 1 (70:47) 

嘆きの歌 
Das klagende Lied 
1.第1部 森のメルヒェン 30:08 
Part I: Waldmärchen 
2.第2部 吟遊詩人 19:37 
Part II: Der Spielmann 
3.第3部 婚礼の出来事 20:48 
Part III: Hochzeitsstück 


DISC 2 (39:24) 

リュッケルトによる5つの歌曲 (18:12) 
Rückert-Lieder 
1.I. わたしが美しいから 2:27 
I. Liebst du um Shönheit 
2.II. 真夜中 5:34 
II. Um Mitternacht 
3.III. わたしはリンデンの香りに 2:17 
III. Ich atmer' einen linden Duft 
4.IV. わたしの歌を盗み見ないで 1:17 
IV. Blicke mir nicht in die Lieder! 
5.V. わたしはこの世から姿を消した 6:25 
V. Ich bin der Welt abhanden gekommen 

6.交響曲 第10番 嬰ヘ長調 21:03 
アダージョ [クルシェネク版] 
Adagio from Symphony No. 10 in F-sharp Major 


(「嘆きの歌」第1部) 
エリザベート・ゼーダーシュトレーム(ソプラノ) 
Elisabeth Söderström, Soprano 
グレース・ホフマン(メッゾ・ソプラノ) 
Grace Hoffman, Mezzo Soprano 
エルンスト・ヘフリガー(テノール) 
Ernst Häfliger, Tenor 
ゲルト・ニーンシュテット(バリトン) 
Gerd Nienstedt, Baritone 

(「嘆きの歌」第2部、第3部) 
イヴリン・リアー(ソプラノ) 
Evelyn Lear, Soprano 
スチュアート・バローズ(テノール) 
Stuart Burrows, Tenor 
ゲルト・ニーンシュテット(バリトン) 
Gerd Nienstedt, Baritone 

(リュッケルトによる5つの歌曲) 
イヴォンヌ・ミントン(メッゾ・ソプラノ) 
Yvonne Minton, Mezzo Soprano 

ロンドン交響楽団合唱団(合唱指揮:アーサー・オールダム) 
London Symphony Chorus (Chorus Master: Arthur Oldham) 
ロンドン交響楽団 
London Symphony Orchestra 
指揮:ピエール・ブーレーズ 
Pierre Boulez, Conductor 

[録音] 
1969年5月26日&27日、ロンドン、ウォルサムストウ・タウン・ホール(「嘆きの歌」第2部、第3部、交響曲第10番) 
1970年4月22日、ロンドン、ワトフォード・タウン・ホール(「嘆きの歌」第1部) 
1979年5月、ロンドン、EMIスタジオ(リュッケルトによる5つの歌曲) 

Recording: 
May 26 & 27, 1969, Walthamstow Town Hall, London (Das klagende Lied II & III, Symphony No. 10) 
April 22, 1970, Watford Town Hall, London (Das klagende Lied Part I) 
May 1979, EMI Studios, London (Rückert-Lieder) 

Producers: Paul Myers (Das klagende Lied & Symphony No. 10) & Roy Emerson (Rückert-Lieder) 
Engineers: Helmut Kolbe (Das klagende Lied & Symphony No. 10) & Neville Boyling & Mike Roth-Trever (Rückert-Lieder) 


ブーレーズによる解説「嘆きの歌――作品とその系譜――」より◆

「この作品はグスタフ・マーラーの最初の重要な作品だが、その中には、既に、マーラーの全作品を通じてかわらぬある特質を聴きとることができる。」
マーラーの場合、その最初期の作品から既に、その音楽形式が、叙事詩や小説のまねびといった趣きがある。彼はわたくしたちに音楽で語りかけるのだ。ことに、文芸作品をテキストとして用い、それが彼の音の世界の土台となっている場合には、この事実が瞭らかとなる。とは言うものの、こうした傾向は、彼が文芸作品を土台として用いなかった場合でも同様に顕著である。」
「この曲に用いられているテキストをみてもある親近性が明瞭である。19世紀ももう間もなく終りだというのに、マーラーは開けひろげにドイツ・ロマン主義の真の源泉を再発見しようと試みているのである。彼は、アルニムとブレンターノ以来、ロマン主義的なある種のヴィジョンへの鍵とされてきた物語や、民俗伝説にインスピレーションのもとを求めたのであった。(中略)こうした源にたよるという事実は、失われた楽園に対するやみがたいノスタルジアを示していると同時に、楽園に到る径を再び見出そうと願う、いかにも相応しい単純さをも示しているのである。」
「さらに、この作品には、マーラーの感受性と想像力にユニークなかたちで備わっている特質がみられる。つまり、驚嘆すべきものとなにかしら慄然とさせるような不気味さが結合し、悲劇的なものと嘲笑的なものがひとつになるといった按配である。詩は、しばしば沈鬱な調子に陥ちこみ、あるいは不安なトーンを響かせるが、一貫して内省的な性格を保ち続けるのだけれど、その冒頭は唐突で神経質でさえある。みずから喚起した怖るべきものに強く反撥するのだが、一方では、恐怖をよびさますという行為自体によろこびを感じているのである。(中略)音楽は熱に浮かされたように、時には極限にまで突っ走る感情の揺れをとらえて表現しようとする――ときには、芝居がかった大袈裟な表現に近づく危険さえ敢て犯しているのだ。」
「この最初のマーラー叙事詩を聴くとき、わたくしたちは、その中に将来、マーラーが遂げることになる発展の萌芽と、様々な予兆を聴きとることができる。大小説のスケッチはでき上がったのだ。あとは、第一章と来るべき作品を読み進むばかりである。たったひとつの源からその創作の泉が湧き出し、ある一定の与件に従って、次第に大きくなりまさって行く創造者のタイプがある。わたくしにとっては、マーラーはそうした芸術であるように思えるのだ。」


◆本CDについて◆ 

2枚組用ジュエルケース(10mm厚)。ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、ピエール・ブーレーズ「嘆きの歌――作品とその系譜――」(訳:栗田亮/「(この訳文はフェリックス・アブラハミヤンの英訳から重訳)」「1970年発売のLP初出時のライナーノーツを掲載しています。」)、海老沢敏「マーラーの芸術におけるプロローグとエピローグ――嘆きの歌と第10交響曲――」(「1970年発売のLP初出時のライナーノーツを掲載しています。」)、喜多尾道冬「リュッケルトによる5つの歌曲」、「嘆きの歌」歌詞&対訳(深田甫)、「リュッケルトによる5つの歌曲」歌詞&対訳(喜多尾道冬)、モノクロ写真図版2点(ブーレーズ、ミントン)。ブックレット表紙はLP『Boulez Conducts Mahler』(1970年)、裏表紙はLP『Das Klagende Lied』(1969年)のジャケット・デザインが使用されています。

本CDは、「嘆きの歌」第2部&第3部を収録したLP『Das Klagende Lied』に「嘆きの歌」第1部とアダージョを追補した2枚組LP『Boulez Conducts Mahler』の全曲に、イヴォンヌ・ミントン&ブーレーズ/LSOによるマーラー「リュッケルト歌曲集」&ヴァーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」LP(1982年)から「リュッケルト」を追加収録しています。

★★★★☆ 


Das klagende Lied