幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『サティ: 星の息子 《カマラータ・プレイズ・サティ》』

『サティ: 星の息子 《カマラータ・プレイズ・サティ》』 

Satie (1866-1925) 
Le fils des étoiles 
(Camarata Plays Satie) 


LP: London/ポリドール株式会社 
シリーズ: ロンドン・ニュー・スタンダード 1500 
L15C 2216 (1986年)
¥1,500 

 

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帯文: 

「今、最も人気のある作曲家と言えば、エリック・サティ! 
ひとあじ(引用者注:「ひとあじ」に傍点)違ったアレンジで贈る、「家具の音楽」の真骨頂!」


サティ/星の息子 
《カマラータ・プレイズ・サティ》 
Satie (1866-1925) / Le fils des étoiles (Camarata Plays Satie) 


[1] 
1) ジムノペディ 第1番-2つの遺作の前奏曲(ノルマンディの騎士たちによって催された祝宴-ナザレ人の第1前奏曲) 5:45 
Gymnopédie No. 1 - Deux préludes posthumes (Fête donnée par les chevaliers normands - Premier prélude du Nazaréen) 
2) 第4グノシエンヌ-第5グノシエンヌ-第6グノシエンヌ(3つの新グノシエンヌ) 
Quatrième Gnossienne - Cinquième Gnossienne - Sixième Gnossienne 
3) 星の息子(第1幕への前奏曲: 天職)-天国の英雄的な門への前奏曲 5:17 
Le fils des étoiles (Prélude à premier acte: La vocation) - Prélude de la porte héroïque du ciel 
4) 第2サラバンド-第3サラバンド 4:47 
Deuxième Sarabande - Troisième Sarabande 

[2] 
5) スルー・ア・ルッキング・グラス 5:30 
Through a Looking Glass 
6) パラード 13:50 
Parade 


カマラータ・コンテンポラリー・チェンバー・グループ 
Camarata Contemporary Chamber Group 
ウィリアム・ベネット(フルート) 
William Bennett (Flute) 
デレク・ウィッケンス(オーボエ) 
Derek Wickens (Oboe) 
ローランド・マーカー(ギター) 
Roland Marker (Guitar) 
トム・ケリー(クラリネット) 
Tom Kelly (Clarinet) 

Recording: 
Producer: Tony D'Amato 
Engineer: Arthur Lilley 

Cover: Rideau de Parade - Pablo Picasso, 1917. 


◆本LP解説(松山明人)より◆ 

ジムノペディ第1番-2つの遺作の前奏曲
「《3つのジムノペディ》はサティのピアノ曲の中で最も知られた曲だろう。(中略)第1番(中略)と第3番は後にドビュッシー管弦楽に編曲しているが、ウィンド・チャイムの音をちりばめたこの編曲も良い。ギターの音などは地中海的雰囲気を醸し出している。
 ウィンド・チャイムの音を残したまま、曲は〈ノルマンディの騎士たちによって催された祝宴〉へと進む。(中略)作曲者20歳の作品だが、早くも小節線が取り払われ、中世旋法による和音が繰りかえされる神秘的な音楽である。ここでは木管、弦、コラール風の金管ファゴットと弦のピチカートなど、様々な音色によって繰りかえされる。
 ファゴットがなだらかな動きの旋律を奏で始めると、次の前奏曲〈ナザレ人の第1前奏曲〉となる。」

「スルー・ア・ルッキング・グラス」 
「この曲はサティ自身の手によるものではなく、すでにこのレコードに登場している《ジムノペディ第1番》と《星の息子》前奏曲の旋律をもとに、カマラータが編曲したものである。」
「まずギター・ソロが《ジムノペディ第1番》のモティーフを自由な動きをつけて弾き出す。その音型をもとにした短い経過の後、ピアノが幻想的に登場する。その後、一時テンポを速めるなどして盛りあげ、最高潮になると《星の息子》の前奏曲のメロディーが感動的に登場する。再びギターのつまびきが《ジムノペディ第1番》を導くと、《星の息子》のメロディーが対旋律となり、美しい展開を見せ、ウィンド・チャイムが花を添えながら余韻を残して曲を閉じる。」

「パラード」 
「カマラータのアレンジは、基本的には原曲通りに場面を追って行くが、ところどころかなり凝った趣向がなされている。
 金管による荘重なコラールにつづいて、木管と弦がこれに対応した後、赤い幕の前奏曲が始まる。まず弦によるフーガ風の展開があり、その後、テンポを変え、クラリネットが風変わりな主題を奏でる。これはマネージャーの主題で、実際の上演ではここで幕が開く。街角のざわめきの効果音を用いたこのレコードの演奏は、臨場感があって良い。盛りあがったところでは、太鼓が自由なリズムを打つ。つづいて中国人の手品師が登場する。2拍子の単調なリズムに乗って不思議なメロディーが次々に現われるが、このアレンジでは笙やドラの音を効果的に使い、さらに中国的な雰囲気を盛りあげている。また後半では突然大砲が打ち鳴らされる。次に登場するのはアメリカの少女。ここは原曲とかなり異っている。デキシー、8ビートのロックンロール、ラグタイムなどが次々に現われ(デキシーやロックンロールなどは当然原曲にはない)、タイプライター、ピストル、機関銃、サイレンなどの音がやかましく鳴り出す。さらに蒸気船のラグタイムでは、原曲にないホンキー・トンク・ピアノを用いて、気分を盛りあげる。しかしここでも赤ん坊の鳴き声など、騒音がけたたましい。穏やかなワルツのリズムになり、アクロバットが登場するが、しばらくすると飛行機の騒音などが登場する。再びワルツが戻り、盛りあがりかけるが中断され、フィナーレに流れこむ(この演奏ではその前にかなり長いカットがある)。この休止では、何故か突然ヒットラーの声が聴こえる…。フィナーレはマネージャーの主題を中心とし、バレエの中の様々なメロディーを回想しながら盛りあがりを見せ、最後には赤い幕の前奏曲のフーガ主題が再び登場し、意外にも静かに全曲を閉じる。」


◆本LPについて◆ 

厚紙シングルジャケ。裏ジャケにトラックリスト&クレジット、日本語解説(松山明人)。

本作は1971年に『The Music of Erik Satie: Through a Looking Glass』(Deram/London)としてリリースされ、1976年にデラム/キングレコードから日本盤が出、1986年にジャケットデザインを変更してロンドン/ポリドールから本LP(廉価盤)が出ました。カマラータは本作以前にも『The Music of Erik Satie: The Velvet Gentleman』(1970年)を、本作以後も『The Electric Spirit of Erik Satie』(1972年)をリリースしています。
なお、本LPと同じジャケ絵のCD『3つのジムノペディ/星の息子』は、1970年の『The Velvet Gentleman』から「3つのジムノペディ」「最後から2番目の思想」「3つの夜想曲」「乾からびた胎児」「3つのグノシエンヌ」「パッサカリア」「冷たい小品集」を、本作から「星の息子-天国の英雄的な門への前奏曲」「3つの新グノシエンヌ」「パラード」を収録したコンピレーション盤です。

★★★★☆