幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

クリスチャン・ヴァンデール  『トリスタンとイゾルデ』 

クリスチャン・ヴァンデール 
トリスタンとイゾルデ』 
Christian Vander 
Tristan et Iseult 


LP: EGG エッグレコード 
発売元:キングレコード株式会社 
シリーズ:ユーロピアン・ロック・コレクション・パートⅣ 
GXH 2025 (1980年) 
超特別価格2000円 

 

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帯文: 

「’80年ヨーロッパからの美しき衝撃!
EUROPEAN 
4 
ROCK 
COLLECTION 2000」
「★オリジナル・ジャケット仕様★」
「●プログレ・ファン待望の特別企画厳選に厳選されて実現!●」
「クリスチャン・ヴァンデールは、フランスで最も個性的かつ、ユニークな音楽集団として知られるマグマの中心人物である。彼の豊かなイマジネーションは、このアルバムの隅々で聴けるが、彼のピアノとドラムは、一種独特の妖しげな雰囲気、一言でいえば悪魔的な世界を思わせる。例のマグマでお馴染みのコバイア語のコーラスも効果的に使われているし、サントラ盤とは思えない完成されたアルバムだ。」


Side 1 
1.呪文 3:38 
MALA WÈLEKAAHM (Incantation) 
2.伝受者は語る 2:18 
BRADÏA DA ZIMEHN IËGAH (L'initie a parle) 
3.メートルのためのアンサンブル 1:39 
MANEH FUR DA ZËSS (Ensemble pour le Maitre) 
4.永遠の生命のために 4:55 
FUR DI MEL KOBAÏA (Pour la vie eternelle) 
5.人民の魂 3:28 
BLÜM TENDIWA (L'Âme du peuple) 
6.虚空からのメッセージ 3:31 
ẀOHLDÜNT MË M DËẀELËSS (Message dans l'Etendue) 

Side 2 
1.前進!! 2:30 
ẀAÏNSAHT !!! (En avant) 
2.神に召されて 2:47 
ẀLASÏK STEUHN KOBAÏA (Ascension vers l'Eternel) 
3.死は空虚 3:26 
SËHNNTËHT DROS ẀURDAH SÜMS (La mort n'est rien) 
4.生命の導き 2:08 
C'EST LA VIE QUI LES A MENÉS LÀ ! 
5.メートルは誰 2:56 
ËK SÜN DA ZËSS ? (Qui est le maitre ?) 
6.天上の音楽のヴィジョン 5:54 
DË 《ZEUHL》 UNDAZÏR (Vision de la Musique Celeste) 

Tristan et Iseult 
musique originale de Christian Vander 

ẀURDAH ÏTAH 
2e Mouvement de THEUSZ HAMTAAHK 
Paroles et musique de : CHRISTIAN VANDER 
Personnel : 4 membres de la "ZEUHL WORTZ" 
KLÖTSZ ZASPÏAAHK  UNIẀERIA ZEKT 
Chant, Percussions. 
TAUHD ZAÏA  UNIẀERIA ZEKT 
Chant. 
ẀAHRĞENUHR REUĞEHLEM ΛëSTEH 
Basse 
ZÉBËHN STRAÏN DË ĞEUŠTAAH  UNIẀERIA ZEKT 
Piano, piano électrique, batterie, chant. 

Avec la divine approbation du KREUHN KÖHRMAHN 
et de L' UZMK / UZ 

Enregistré et mixé les 4, 5 et 8 avril 1974 à Paris, 
Studio de Milan. 
Ingénieur : Jean-Pierre BAMEULLE. 
Sigle : Marie-Joseph PETIT. 
Réalisé par Laurent THIBAULT (NAU EKTILAH). 
Editions THELEME / BARCLAY. 
(P) 1974 BARCLAY 


◆本LP解説(北村昌士)より◆ 

「フランスのロックのレヴェルの高さは、我国でもアルバムが発売され、一躍英米のトップ・グループの地位すら脅かす人気を博したアトールの作品や、本国で不動の支持を得ているアンジュのアルバム、更にはパルサー、オニリスといった中堅どころのバンドの作品などにより日本でも一応の認識が得られたかと思われる。ヨーロッパのロック・シーンの中でもきわめてロマンティシズム的色合いが強く、かつ自由奔放な幻想性を秘めたファンタスティックなロック・ミュージックがフランスの持ち味なのだという印象が、彼らの生み出す音楽性の中から感じ取れたのではないだろうか。
 実際にフランス人は、夢や幻想を情緒的に捉えた芸術作品が非常に得意だ。ガストン・バシュラールのように“夢”をひとつの主題にもつ哲学者や、アンリ・ミショーのような“幻覚”を純粋に研究テーマとした文学者も彼らの国の誇るべきところだろう。現代のフランス知性は、ロック・ミュージックの世界にもその多くを捧げて彼ら独自の音楽論たるヴィジョンを持っている。70年代の初頭、フランスのロック・シーンの祖としてこうした動きの先駆者となった2つのロック・グループがある。そのひとつはいうまでもなく前述したアンジュである。クリスチャン・デカンという強力なリーダーに率いられたこのグループは、70年代から現代まで9枚のアルバムを発表し、そのシンフォニックで豪快なプログレッシヴ・サウンドは、フランス人の潜在的な感受性に訴えるオリジナルなロック・ミュージックとして爆発的な人気を得、後のフランスのシーンに大きな影響を及ぼしている。アトールモナリザ、パルサーなどはアンジュの系譜から生まれた典型的なフレンチ・シンフォニック・バンドといえるだろう。
 そしてこのアンジュとは対照的に、やはり60年代の末期から活動を続けて現在まで孤高のスーパー・プログレッシヴ・ミュージックとして不動の地位を持つ凄まじいスケールのロック・グループがMAGMAである。このアルバムは、マグマのリーダーであり、フランスの進歩的ロック・シーンのカリスマ的存在である“もうひとりのクリスチャン”即ちクリスチャン・ヴァンデールによるソロ・アルバムなのだ。
 今まで国内盤として発売されてきたフランスのロックのアルバムが、ことごとくファンタジックで内面的、かつ詩的幻想性を持ったアーティストたちによる作品であったのに較べ(中にはエッグから発売されたHeldonのような超例外もあるが)、マグマの音楽は、かつて誰も体験したことのない巨大なイデオロギーと超越的な創造力を秘める、真にプログレッシヴでアヴァンギャルド、そして音楽の持つ最大級のスケールと質量を内包した恐るべきものだ。
 ひとつの集合体として、究極の創造のためのオーガナイゼイションとして、マグマの存在は今日までの幾多のロック・グループとは全く趣きを異にしている。マグマは《国家》であり、ひとつの確固とした《思想》であり、そして永遠にパフォーミングされ続ける《物語》なのである。マグマの存在領域に限界はなく、マグマの意識は地球人的認識の外側に位置している。こんな説明では、何のことかさっぱりわかりかねる人もいるだろう。しかしマグマは今もヨーロッパで真実として運動を続ける、史上まれに見る解放された創造的環境そのものなのである。汚染と崩壊へとまっしぐらに疾走する地球に対し、マグマのメッセージは、限りない混沌から理知的宇宙までを全て表現することによって、人々に真の目的意識と未来展望の改革を促そうとする。マグマはコバイア星から帰還した高次元の宇宙意識を持つ知的生命体である。コバイアは元地球の植民星であったが、地球の弾圧から独立した後、更に地球の危機的状況を救うためにこの星へ降り立ったのである。(このSF的未来設定によるコバイアのストーリーは、すべてのマグマの作品の中で展開される終わりのない物語である。ここでその全てを語ることは到底不可能なので、より詳細を知りたい方はフールズ・メイトVol.14、「完全MAGMAヒストリー」を読むことをお推めします。) 

 圧倒的なコンセプトと、その壮大なストーリーを完全にサウンド化したマグマが、フランスのロック・シーンの頂点に立つのに、そう多くの時間はかからなかった。まるで火山の大爆発を思わせるような莫大なエネルギーにみなぎった彼らの音楽は、またたくまにフランスの聴衆を熱狂と興奮に陥れてしまったのである。創造集団マグマはメンバーが全てがコバイア語を話し、コバイア人としての名前を持っている。そんな奇妙さも奇怪さも、また進歩性の極致を体現したサウンドも、フランスにおいて過去に全く有り得なかった大成功を博したのである。マグマの超越的なサウンド・ポリシーの前には、メジャー、マイナーという一般的な図式すら何の役にも立たなかったのだ。」

「かつてマグマのアルバムは、サード・アルバム「MEKANIK DESTRUKTIW KOMMANDOH」が「呪われし地球人たち」というタイトルで発売されたことがあった(やはりこれもキングだった)以外、日本では全く相手にされなかった。しかしマグマは現在もなおヨーロッパのロック・シーンに絶大な猛威をふるい、特にフランスのアヴァンギャルド・ロックの領域では巨大な一本の幹として君臨している。そしてマグマは、PILのヴォーカリスト、ジョニー・ライドンが最も影響を受けたグループでもあるといい、英国の革新的なムーヴメントにも何らかの重要性を投げかけていたようだ。

 本アルバム「トリスタンとイゾルデ」は、1974年に同タイトルのフィルムのオリジナル・サウンド・トラックとして発表されたもので、(中略)参加メンバーはクラウス・ブラスクィッツ、ステラ・ヴァンデール他、サード・アルバムとほぼ同じ顔 れによって録音されている。壮大な曲展開とコーラスによる強迫的なイメージは、あのマグマの世界そのものである。イヴァン・ラグランジュ監督による、この有名な伝説でワーグナーの楽劇としても名高い作品は、マグマの音楽とラグランジュの映像で、非常に荒涼としたシュールリアリスティックなムードに貫ぬかれた観念的な旅物語として独自の体験性を開示している。
 もしこのアルバムでクリスチャン・ヴァンデールの世界に強く打たれたなら、マグマはあなたに大きく接近することだろう。僕はそれをとても楽しみにしている。

     〔北村 昌士/Masashi Kitamura〕 
                  & Fool's Mate」


◆本LPについて◆ 

E式シングルジャケット。インサートに北村昌士による解説、インサート裏面に「ユーロピアン・ロック・コレクション・パートⅠ」「パートⅡ」「パートⅢ」(レコードリスト/モノクロ画像24点)。

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