幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

藤井郷子クァルテット  『アンゲローナ』

藤井郷子クァルテット 
『アンゲローナ』 
Satoko Fujii Quartet 
Angelona 


CD: Libra Records 
Libra 204-014 (2005年) 
¥2,500 (tax in) 

 

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1. An Alligator in Your Wallet  6:48 
2. Collage - in the night  13:25 
3. A Poor Sailor  5:55 
4. A Journey into the West  7:29 
5. Cicada  12:39 
6. A Brick House  10:00 


Satoko Fujii Quartet 
田村夏樹 Natsuki Tamura (tp) 
藤井郷子 Satoko Fujii (p) 
早川岳晴 Takeharu Hayakawa (b) 
吉田達也 Tatsuya Yoshida (ds) 

All compositions by Satoko Fujii 
Executive Producer: Natsuki Tamura 

Recorded and Mixed by Katasumi Shigeta, on Nov, 11, 04, at Epicurus Studio, Tokyo 
Mastered by Scott Hull, on Dec. 2, 04, at Hit Factory, NYC 


◆本CDライナーノーツ(悠雅彦)より◆ 

藤井郷子が話すところによると、現在のメンバーでグループが固定したのは’99年ごろのことで、それまではベースとドラムの座にはさまざまな人々が入れ代わり立ち代わり去来したという。(中略)実際、伝統的なジャズ・ドラムのコンセプトからは遠い異邦人ともいうべき吉田と巡り会ったことで、藤井の体内で秘かに渦を巻きながら誕生のときを待っていたグルーヴが急速に具体化し、彼女の運動論をひとつの手ごたえのあるユニットへと開花させる道が開けたのだろう、と思えてならない。」
「藤井にとってかけがえのないドラマーであるはずの吉田との出会いを、奇妙なことに彼女自身ははっきり記憶していない。(中略)彼女のおぼろげな記憶によれば、’98年ごろ、吉田がニューヨークのライヴハウス「トニック」で演奏していたとき、ジョン・ゾーンから紹介されたときが初の出会いだったらしい。一方、早川岳晴とはやはり’98年ごろに、彼女が渋さ知らズというこれまたジャズの辺境で活躍するグループに加わって演奏したときに初めて知り合った。こうして吉田と早川が加わったクワルテットは、’99年ごろからユニットとしての方向性も定まり、グループ活動を本格化させていったといってよいだろう。」
「クワルテットは過去6年間に『バルカン』、『ミネルバ』、『ゼフィロス』の3作を発表しており、本作『アンゲローナ』は従って第4作となる。収録された6曲はすべて藤井郷子のオリジナルだが、このうち②「コラージュ」、③「ア・プア・セイラー」、④「ア・ジャーニー・イントゥ・ザ・ウェスト」、⑤「シケーダ」の4曲は本吹込のため新たに作曲されたという。『ミネルバ』と前作『ゼフィロス』で確立されたクワルテットの演奏様式がいよいよ佳境に入りつつあることを示すと同時に、ポップ色さえ感じさせる親近感溢れるサウンド展開にこのユニットのさらなる魅力が発揮された会心の新作といってよいだろう。
 作品は6曲すべてが変拍子で構成され、どの曲もリズムは複雑に変化しながらダイナミックに進行する。プログレッシヴ・ロックの要素を大胆に取り入れたアンサンブルでは藤井の作曲の才が遺憾なく発揮されていて、複雑な変拍子を苦もなく叩きだして目をみはらせる疾駆を印象づける吉田のドラミングとともに聴きものである。(中略)⑤「シケーダ」(蝉)でも8分の11拍子、藤井がロヴァ4重奏団のために書いて共演した『Orkestrova』の標題曲ともなった「アン・アリゲーター・イン・ユア・ウォレット」でも13拍子。「何しろありきたりのリズムだと吉田さんがいやがるから」と藤井は笑ったが、実際にロック的なコンセプトに貫かれた吉田のドラミングではありきたりのジャズをやったところで何の妙味も生まれないだろう。その吉田がいるからこそのクワルテットでもあるのだ。」


◆本CDについて◆ 

透明ジュエルケース。ブックレット(全8頁)にトラックリスト&クレジット、「藤井郷子クワルテットについて」(悠雅彦)、写真図版(モノクロ)4点。

★★★★★