幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

藤井郷子  『ベル・ザ・キャット!』 

藤井郷子 
『ベル・ザ・キャット!』 

SATOKO FUJII 
BELL THE CAT ! 


CD: ONOFF/Tokuma Japan Communications Co. Ltd. 
TKCB-72369 (2002年) 
¥2,520(定価)(税抜価格¥2,400) 
Made in Japan 

 


帯文:

「「ピアニストに鈴をつけろ!」
世界を舞台にめざましい活動を続ける藤井郷子の最強のニューヨーク・トリオによる最強のピアノ・トリオ・アルバム。
藤井郷子ロング・インタヴュー収録ブックレット付」


1.サイレンス 15:09 
Silence 
2.ゲット・アロング・ウェル・ウィズ 4:25 
Get Along Well With... 
3.スロウリー・アンド・スロウリー 11:42 
Slowly And Slowly 
4.コンフリューエンス 9:06 
Confluence 
5.フット・ステップ 5:39 
Foot Step 
6.ベル・ザ・キャット! 5:22 
Bell The Cat ! 
7.チャンプルー 4:53 
Champloo 


All compositions by Satoko Fujii 


藤井郷子(ピアノ) 
Satoko Fujii (Piano) 
マーク・ドレッサー(ベース) 
Mark Dresser (Bass) 
ジム・ブラック(ドラムス)
Jim Black (Drums) 


2001年9月24日/ニューヨーク録音

録音:マイク・マルシアーノ 
マスタリング:スコット・ハル 

Produced by Satoko Fujii 
Directed by Ryoji Fukui 
Recorded at Systems Two, Brooklyn, NY 
by Mike Marciano on Sep. 24, 2001. 
Mastered at Classic Sound, NY 
by Scott Hull on March 8, 2002. 
Post production associated by Kazunori Sugiyama 

Illustrated by Tamie J.-Hirokawa 
Designed by Junko Ishino 


◆本CDブックレット掲載「藤井郷子インタビュー」より◆

「ジャズに限らずアヴァンギャルドな、一見ワケのわからないものが好きなんです。」
「私はジャズというのは、その歴史はどうであれ、無国籍でインターナショナルな音楽だと考えています。そしてジャズでは即興が大きく重要な要素になるので、その行為の主体である音楽家が持っている文化的背景は自ずからその表現の中に現れることもあるのではないでしょうか。日本人であることは音楽家としての私のアイデンティティの一部だとは思いますが、形式やスタイルとしていわゆる日本的なものを表現しているつもりはありません。ですから、自分の中の日本といったことをいつも意識しているわけではないのですが、民謡を教わっていた頃は、歌っていると血が騒ぐというか、脳の違う部分が刺激を受けるような快感がありました。民謡というのは楽譜で伝えるものではなくて、先生が歌ってその後弟子が歌う、という口承ですね。すると、弟子が歌ったその瞬間からもう弟子の表現になっている部分があるんです。西洋音楽的な「作品を再現する」のとは違った形で音楽が成り立っていくのがとても面白かった。」
「一言で言うとバークリーは「他の誰かみたいに演奏できるように」教えるのに対して、ニューイングランドは「他の誰でもないように演奏できるために」教える、ということでしょうか。実際ニューイングランド音楽院で過ごすうちに、音楽表現に関する意識はずいぶん変わっていきました。以前は自分の中にないものを目指していた(つまり、絶対に不可能なこと)のだな、と気づかされたり、自分のやりたいことが次第に見えてきて…。」
「自分の演奏の録音を聴いていると、うまくいったところや失敗したところ、自分の意図が十分表現できた部分、できなかった部分、また演奏している時に意識していたものを超えて見えてくる自分とか、いろいろなことがわかってきたり考えさせられたりします。その過程は「自分」を聴いて、もっと「自分」になる、とでもいうか。音楽の批評で、誰それの影響を受けて云々という言い方がありますが、不遜に聞こえるかもしれないけれど、私は「私」の影響を受けて今の「私」になった、というふうに思っています。」


◆本CDについて◆

デジパック仕様。ブックレット(全8頁)にトラックリスト&クレジット、「Round About "MUSIC"/藤井郷子インタビュー」(インタビュー・構成:柳浩爾)、「藤井郷子ディスコグラフィ」。

『Looking Out of the Window』(1997年リリース)、『Kitsune-Bi』(1999年リリース)、『Toward, "TO WEST"(どんひゃら)』(2000年リリース)、『Junction』(2001年リリース)に続く、藤井郷子トリオ第5作。

9・11テロ事件直後のニューヨークで録音された本作ですが、「政治的なことと音楽とは直接的な関係はないでしょう。」(藤井郷子インタビューより)とはいうものの、沈み込むような弓弾きベース&ピアノが印象的な#5「フット・ステップ」とプリペアド・ピアノによる和やかな琉球音階が印象的な#7「チャンプルー」が「鎮魂と祈り」のようにきこえてしまうのはやむをえないです。

★★★★★

 

Bell The Cat !