幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『燦然と神秘のガムラン/バリ島プリアタン村〝ヤマ・サリ〟のゴン・クビャール』

『燦然と神秘のガムラン/バリ島プリアタン村〝ヤマ・サリ〟のゴン・クビャール』 
GAMELAN GONG KEBYAL
"Yama Sari" Ensemble of Peliatan Village
JVCワールド・サウンズ・スペシャ


CD: ビクター エンタテインメント株式会社
VICG-5417 (1996年)
定価2,500円(税抜価格2,427円)

 

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1.ヤマ・サリ(天国に咲く花) Yama Sari 15:31
2.ラトナ・グルニタ(咲きかおる花々の調べ) Ratna Gurnita 10:16
3.プスパ・ラガ(歓迎の舞) Puspa Raga 7:05
4.ギリ・クナカ(金耀の山々) Giri Kenaka 17:48
5.レゴン・ジョボグ(兄弟の葛藤物語をつづった聖女の舞) Legong Jobog 16:08
6.カピ・ラジャ(猿の王) Kapi Raja 3:37


演奏: ヤマ・サリ
作曲: チョコルダ・アリッ・ヘンドラワン
1996年4月 インドネシア共和国バリ州プリアタン村にてデジタル録音


企画・構成: 山城祥二
録音・解説・写真: 大橋力
制作ディレクター: 藤本草
マスタリング・エンジニア: 吉岡恵一郎
ジャケット・デザイン: 田中一光
ジャケット編集: 由井幸男


帯文:

ガムラン音楽の新しい地平を切り拓く……」
「[企画・プロデュース]山城祥二
[監修・解説・写真]大橋力/英文解説付」
「来日記念盤」


◆本CD解説(大橋力)より◆

「新生ガムラングループ "ヤマ・サリ" は、故A.A.グデ・マンダラ翁とともに "ティルタ・サリ" を栄光の座にみちびいたチョコルダ・アリ・ヘンドラワン氏が、プリアタン村の数々のグループからトップ・アーティストを精選し、またみずから手塩にかけた若手のアーティストをくわえて編成した、おそらく現代バリ島ガムラン史上空前の強力グループです。」
「しかも、いわゆるピックアップグループではなく、1988年から若手の育成とオリジナル作品の創作をはじめ、5年にわたりねりにねって人と作品をきたえあげ、1993年にはじめてその演奏を公開しました。」

「Yama Sari(天国に咲く花)」
「ヤマはヒンドゥーの守護神のひとつで、死後の魂を天国に入れるかどうかを決める神といわれています。サリは花芯の意。祭りのときに寺院の庭で演奏されていた古典の大曲をもとに、ヘンドラワン氏が1988年から2年の歳月をかけて、独自の構成とアレンジを施した傑作です。」
「本シリーズの『絢爛と超絶のガムラン』(VICG-5215)でも、"ティルタ・サリ" がこの曲を演奏していますが、同じゴン・クビャールでも別の音階で鋳造された楽器であるため、ちがった音楽といってよいほど、味わいにへだたりがあります。また、ヘンドラワン氏が改作をかさねているので、このCDの曲の後半ではまったくあたらしいバージョンを聴くことができます。」
「Ratna Gurnita(咲きかおる花々の調べ)」
「ラトナは花、グルニタは調べの意。」
「初来日を意識した最新作のこの曲には、途中で日本の童謡「お手てつないで」の調べがバリ風にアレンジされて出てきます。(中略)「お手てつないで」の旋律をモジュール化し、そのモジュールを作品全体にちりばめていくという手のこんだつくりかたをしています。」
「Puspa Raga(歓迎の舞)」
「花々を一杯に盛った銀の皿を手に持って踊る、舞踊の曲。(中略)この踊りは、寺院の本殿前で神々に奉納される宗教的舞踊ワリを源にしています。(中略)今日では、こうした宗教的舞踊をもとに芸術性の強いバリバリアンとよばれる創作された踊りが、プログラムの最初に踊られるのが、一般的なスタイルになっています。」
「Giri Kenaka(金耀の山々)」
「ギリは山の、クナカは黄金の意。ヘンドラワン氏が古い大編成のガムランの曲をもとに、1995年に創作した曲です。」
「Legong Jobog(兄弟の葛藤物語をつづった聖女の舞)」
「このCDにおさめられた唯一の古典曲。バリ島の女性の踊りを代表する舞踊「レゴン」のための音楽です。」
「レゴン・ジョボグは、ラーマーヤナ物語の中の猿の王スバリとスグリワの兄弟にまつわる物語です。」
「Kapi Raja(猿の王)」
「カピは猿、ラジャは王の意。ラーマーヤナに登場する猿の王スグリワをたたえた曲で、1988年にヘンドラワン氏が創作しました。」


◆本CDについて&感想◆

本CDでは英語タイトルはブックレット・ケース・CD全て「GAMELAN GONG KEBYAL」と表記されていますが、2000年の「JVCワールド・サウンズ」シリーズでは「GAMELAN GONG KEBYAR」に訂正されています。

冒頭から涼しげな虫の音がきこえてくるので、アジアンテイストなリゾート感覚に浸れると思ったら大間違い。ヤマ・サリはまるで楽譜に書かれているかのような精密で複雑なアレンジの大曲を一糸乱れず完璧に演奏しています。
そういう態度は「民族音楽」としてはたしてどうなのか、と悩むよりも、むしろ、このCDが録音された1990年代半ば頃といえば、アメリカではコンピューターが生成した複雑怪奇な楽曲をバンドで演奏するドクター・ナーヴ(Doctor Nerve)や、日本ではルインズ(Ruins)の全盛期であり、ヤマ・サリもそうしたアヴァンプログレの一つとして受け取った方が納得行くかもしれないです。

★★★★☆

 

Ratna Gurnita

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