幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『絢爛と超絶のガムラン/バリ島プリアタン村〝ティルタ・サリ〟のゴン・クビャール』

『絢爛と超絶のガムラン/バリ島プリアタン村〝ティルタ・サリ〟のゴン・クビャール』
GAMELAN GONG KEBYAR
"Tirta Sari" Ensemble of Peliatan Village
JVC ワールド・サウンズ


CD: ビクター音楽産業株式会社 
VICG-5215(1992年)
定価2,500円(税抜価格2,427円)

 

f:id:nekonomorinekotaro:20210618111704p:plain

 

1. スカール・ジュプン Sekar Jepun 6:19
2.クビャール・トロンポン Kebyar Trompong 6:28
3.カピ・ラジャ Kapi Raja 3:13
4.ヤマ・サリ Yama Sari 14:38
5.バリス Baris 6:02
6.ウジャン・マス Ujan Mas 5:38
7.タルナ・ジャヤ Tarna Jaya 9:50


演奏: ティルタ・サリ
作曲: チョコルダ・アリッ・ヘンドラワン
1990年10月 スタジオα(東京)にて1/2インチ・76cm/Sアナログ録音


企画・構成: 山城祥二
録音・解説・写真: 大橋力
製作ディレクター: 藤本草
録音エンジニア: 伊藤俊之
ジャケット・デザイン: 田中一光
ジャケット編集: 由井幸男


帯文:

雄大絢爛たるゴングの響き、火をはく熱演……。
他の追随を許さぬ〝ティルタ・サリ〟の迫真の演奏を、
最新最高の録音技術で収録した、ガムランの最高峰。」


◆本CD「解説」(大橋力)より◆

「ティルタ・サリは、1990年10月に3度目の日本公演のために来日しました。このディスクは、その際スタジオ機能をもったホールで録音したものです。」
「本来ティルタ・サリは、スマルプグリガンの演奏グループとして編成されました。ティルタ・サリの前作のディスクはスマルプグリガンを使っています。」
「今回の録音には、(中略)ゴン・クビャールという形式が使われていますが、ティルタ・サリのそれは4年前に鋳造された新しいものです。(中略)この楽器の鋳造にあたっては、ゴン・クビャール本来の大規模でダイナミックな特性を損なわずに、スマルプグリガンのもつ複雑で洗練された音色を導入することが試みられました。」

「ティルタ・サリは、1981年、プリアタン村のプリ・カレラン(北の王宮)の当主にして今世紀最大の音楽・舞踊演出家と称された、故アナッ・アグン・グデ・グラ・マンダラ翁によって創立されました。」
「翁の没後、(中略)ティルタ・サリの中核になっているのは、舞踊面ではアナッ・アグン・グデ・バグース・M.E.氏、音楽面ではチョコルダ・アリッ・ヘンドラワン氏です。」

「スカール・ジュプン(Sekar Jepun)」
「スカールは「花」、ジュプンは「プルメリアの花の一種」あるいは「日本」という意味です。1985年の初来日を記念して、いわば「日本の花」ともいうべきこのオリジナル曲が創作されました。マンダラ翁とヘンドラワン氏によってつくられ、それ以来ティルタ・サリの十八番として幕あけに演奏されます。」
「クビャール・トロンポン(Kebyar Trompong)」
「これはゴン・クビャールのための舞踊作品として創作された、踊り手がトロンポンを演奏しながら踊る座位舞踊です。」
「カピ・ラジャ(Kapi Raja)」
「カピは「猿」、ラジャは「王」。ラーマーヤナ物語の英雄の一人、猿の王のスグリワを讃えた曲です。’88年2度目の来日のためにヘンドラワン氏が作曲しました。」
「ヤマ・サリ(Yama Sari)」
「ヘンドラワン氏が昨年の三度目の来日公演のために作曲した作品です。曲名のヤマは「ヒンドゥーの守護神」の一つで、天国で死者の魂を迎えいれるかどうかをきめる神、サリは「花芯」。そして同時に、ティルタ・サリと交流の深い日本のグループ山城組のヤマと、ティルタ・サリのサリを長年の交流を記念して結びつけた名称でもあります。」
「バリス(Baris)」
「バリスは、戦士の踊りのことで、バリ島の男性舞踊を代表するものです。」
「ウジャン・マス(Ujan Mas)」
「ウジャンは「雨」、マスは「金」です。(中略)’88年のヘンドラワン氏の作曲です。(中略)その哀調をおびたメロディーが、聴く人の心の琴線をふるわせる佳曲です。」
「タルナ・ジャヤ(Taruna Jaya)」
「タルナは「男性の若者」、ジャヤは「勝利者」、これも舞踊がともなうのですが、音楽としても名曲中の名曲です。」


◆感想◆

ブックレットに日本語および英語解説、写真図版(モノクロ)6点、図「ゴン・クビャールの編成」1点、「JVCワールド・サウンズ(全60巻)」CDリスト。

②⑦はティルタ・サリの前作『幻視と瞑想のガムラン』(1985年1月録音)にもスマル・プグリンガンによる演奏が収録されていました。
③④は、ティルタ・サリの音楽的指導者である「ヘンドラワン氏」が後に編成したグループ「ヤマ・サリ」の『燦然と神秘のガムラン』(1996年4月録音)でも取り上げられています。
また、本CDの二か月後に録音されたキングレコード「ワールド・ミュージック・ライブラリー」シリーズの『黄金の雨~グヌン・サリのゴン・クビャール』(1990年12月録音)では、本CD収録曲のうち①③⑤⑥⑦が取り上げられていて、この重複かげんは尋常ではないです。しかも同CDの解説(皆川厚一)によると、①⑥の作曲者はグヌン・サリのリーダーである「イ・ワヤン・ガンドラ」で、⑥は1950年代に作曲されたことになっています。「ヘンドラワン氏」もグヌン・サリの音楽的リーダーだったと「ヤマ・サリ」のCD解説にあるので、「ガンドラ」氏と「ヘンドラワン氏」はどういう関係にあるのか、同一人物ではないようですが、自分のような門外漢には皆目見当がつかないです。本CDのクレジットでは全曲「ヘンドラワン氏」が作曲者であるかのように記載されていますが、それも疑わしいです。というか、クビャール曲「ウジャン・マス」は1969年リリースのノンサッチ盤『Golden Rain: Music of Bali』(Explorer Series)にすでに収録されているので、1988年の作曲というのはありえないです。というか、そもそもガムラン音楽に「作曲」だの「オリジナル」だのといった概念はふさわしくないようにも思われます。

★★★★☆

 

Tirta Sari - Ujan Mas

youtu.be

 

 Hudjan Mas (Golden Rain) (Nonesuch Explorer Series)

youtu.be

 

Gunung Sari - Hujan Mas

youtu.be

 

 それとは別ですが 

Javanese Court Gamelan: Hudan Mas

youtu.be

 

Java - Sudanese song - Udan Mas

youtu.be

 

nekonomorinekotaro.hatenablog.com

nekonomorinekotaro.hatenablog.com

nekonomorinekotaro.hatenablog.com