『Love's Illusion: Music from the Montpellier Codex 13th-Century』
Anonymous 4
愛の幻影
~モンペリエ写本(13世紀)の音楽
〈全29曲〉
アノニマス 4
CD: harmonia mundi France
Series: Production USA
HMU 907109 (1994)
Made in Germany
発売元:株式会社キングインターナショナル
販売元:キングレコード株式会社
KKCC-289 (1994年)
¥3,000(税込)(税抜価格¥2,913)
帯裏文:
「「イングランドの聖母ミサ」(KKCC-263)、「降誕祭の夜に」(KKCC-288)が大ヒットのアノニマス4。今回はモテットの写本としては最大規模をもつ「モンペリエの写本」からを、いつもの天女の歌声で披露。モンペリエ医科大学図書館に所蔵されるこの写本は1270年から1300年頃にフランスで編纂されたもので、音楽史的にも重要なもの。アノニマス4が、中世へのはかない憧憬を込めて、透明な歌唱を繰広げている。」
1. Plus bele que flor / Quant revient / L'autrier joer / FLOS FILIUS (Mo 21) 2:37
私が服従する人は/木々と花々が/ある日私は/FLOS FILIUS (Mo 21)
2. Puisque bele dame m'eime / FLOS FILIUS (Mo 231) 2:02
美しい夫人が私を/FLOS FILIUS (Mo 231)
3. Amours mi font souffrir / En mai / FLOS FILIUS (Mo 111) 2:37
愛は私に/五月に/FLOS FILIUS (Mo 111)
4. Ne sai, que je die / IOHANNE (Mo 185) 1:23
何と言ったら/IOHAN(NE) (Mo 185)
5. Se je chante / Bien doi amer / ET SPERABIT (Mo 311) 2:04
もし私が歌うなら/恋人を愛さなければ/ET SPERABIT (Mo 311)
6. Or ne sai je que devenir / Puisque d'amer / KYRIELEYSON (Mo 267) 1:48
どうしたらいいのだろう/私が望むのは愛/KYRIELEYSON (Mo 267)
7. Hé Dieus, de si haut si bas / Maubatus / CUMQUE (Mo 92) 1:46
神よ、私は高所から/ひどく打たれた者たちは/CUMQUE (Mo 92)
8. Celui en qui / La bele estoile / La bele, en qui / IOHANNE (Mo 20) 2:49
誠実な心で/美しい海の星よ/私が信じる麗しい御方よ/IOHANNE (Mo 20)
9. Qui d'amours se plaint / LUX MAGNA (Mo 215) 1:45
愛に不平を言う人は/LUX MAGNA (Mo 215)
10. Amours, dont je sui / L'autrier, au douz mois / Chose Tassin (Mo 270) 2:20
私を虜にする愛は/4月のある日/タッシンの調べ (Mo 270)
11. Au cuer ai un mal / Ja ne m'en repentirai / Jolietement (Mo 260) 2:55
心の痛みが/愛を後悔したりは/愛の悲しみが私を (Mo 260)
12. Quant voi la fleur / ET TENUERUNT (Mo 241) 2:15
森で花を見た時に/ET TENUERUNT (Mo 241)
13. Quant se depart / Onques ne sai amer / DOCEBIT OMNEM (Mo 131) 1:37
緑が野山から去り/私にはわかりません/DOCEBIT OMNEM (Mo 131)
14. Joliement / Quant voi la florete / Je sui joliete / APTATUR (Mo 34) 2:59
何と楽しいことか/小さな花を見た時/私は若い娘/APTATUR (Mo 34)
15. Amor potest conqueri / Ad amorem sequitur (Mo 328) 1:19
愛ハ弱メラレル時/忠誠ト節度ハ愛ニ (Mo 328)
16. Ce que je tieng / Certes mout / Bone compaignie / MANERE (Mo 33) 2:10
喜びと思ったものは/良い生き方とは/楽しい仲間は/MANERE (Mo 33)
17. J'ai si bien mon cuer assiz / Aucun m'ont / ANGELUS (Mo 128) 2:12
私は十分に満足した/嫉みのために/ANGELUS (Mo 128)
18. Ne m'oubliez mie / DOMINO (Mo 236) 2:35
私を許して下さい/DOMINO (Mo 236)
19. J'ai mis toute ma pensee / Je n'en puis / PUERORUM (Mo 255) 2:18
長い間私は/歌うことしかできないとしたら/PUERORUM (Mo 255)
20. Blanchete / Quant je pens / VALARE (Mo 168) 2:33
百合の花のように/愛する恋人を想う時/VALARE (Mo 168)
21. Dame, que je n'os noumer / Amis donc est / Lonc tans a (Mo 337) 4:32
魅力的なブロンドの夫人よ/恋人よ/初めて恋人に会ってから (Mo 337)
22. Li savours de mon desir / Li grant desir / Non veul mari (Mo 323) 2:05
私が望む喜びは/私が愛し始める前に/亭主は欲しくない (Mo 323)
23. Entre Copin / Je me cuidoie / Bele Ysabelos (Mo 256) 3:23
パリの陽気な仲間たち/差し控えようと思う/麗しいイサベルは (Mo 256)
24. S'on me regarde / Prennés i garde / Hé, mi enfant (Mo 256) 1:52
もし誰かが/注意しなさい/さあ、我が子よ (Mo 256)
25. Quant yver la bise ameine / IN SECULUM (Mo 223) 1:18
冬が冷たい風を/IN SECULUM (Mo 233)
26. Ne m'a pas oublié / IN SECULUM (Mo 207) 1:49
彼女は私を忘れたりしない/IN SECULUM (Mo 207)
27. On doit fin[e] Amor / La biauté / IN SECULUM (Mo 134) 1:28
純粋な愛は/我が夫人の美しさは/IN SECULUM (Mo 134)
28. Ja n'amerai autre que cele / IN SECULUM (Mo 3) 1:28
愛する彼女以外の人は/IN SECULUM (Mo 3)
29. Quant je parti de m'amie / TUO (Mo 200) 1:20
恋人が去った時/TUO (Mo 200)
TOTAL TIME 64:04
ANONYMOUS 4
アノニマス4
Ruth Cunningham
ルース・カニングハム
Marsha Genensky
マーシャ・ジェネンスキー
Susan Hellauer
スーザン・ヘラウェアー
Johanna Rose
ジョアンナ・ローズ
録音:1993. 9. 28/30, 1994. 2. 17/18/ルーカスアーツ社スカイウォーカー・スタジオ
Recording: September 28-30, 1993, February 17-18, 1994, Skywalker Sound, a division of LucasArts Entertainment Company, Nicasio, CA
Producer: Robina G. Young
Engineer: Brad Michel
Editing: Paul F. Witt
Cover: Tapestry, Lady and the Unicorn.
Atelier of the Loire Valley, "mille fleurs", 15th-century.
Musée de Cluny, Paris
Cliché: Giraudon / Art Resource, N.Y.
Recorded and produced in the USA
◆スーザン・ヘラウエアーによる解説(佐々木勉 訳)より◆
「今日「宮廷風の愛」として理解されている詩の表現を最初に行った詩人には、自らもトルバドゥールであったアキテーヌのギョーム10世(在位1127~37年)がいる。(中略)ギョームの孫娘アリエノール・ダキテーヌ(1122?~1204年)は、祖父の宮廷でこの文学的遺産を受け継いだ。アリエノールは、やがてフランス王ルイ7世(在位1137~80年)とイングランド王ヘンリー2世(在位1154~89年)の王妃となり、マリ・ド・シャンパーニュ(1198年没)の母親となるが、それに伴って北フランス各地の宮廷に「純粋な愛」を歌う優れた詩人を紹介することになった。こうして北フランスでは、トルバドゥールから強い影響を受けながらトルヴェールと呼ばれる詩人たちの活動が始まったが、彼らは、プロヴァンスの素朴な叙情詩をさらに洗練されたものとし、「純粋な愛 fin amours」の上品な修辞的な表現法を生み出した。
「純粋な愛」を歌った広範囲にわたる作品からは、二つの不文律があったことがわかる。第1に、「純粋な愛」は、結婚と無関係にしか存在しないということであり、第2に、男は、恋人の意志が道理にかなっていようといまいと、その意志に絶対に服従するということである。(中略)実際、この掟は、女性を快楽の対象、あるいは婚姻関係の奴隷という立場から高め、結婚以外の愛の領域においては審判を下し、賞賛を受ける側へと導いた。しかし、この理想化は、女性を苦悩の世界から主役の座へと移動させたに過ぎず、一つの物語の中に受け身の役を与えただけであった。「純粋な愛」を歌った作品に表現されたロマンチックな愛は、おそらく知的な幻影に過ぎない。すなわち、現実的な日々の生活には、何ら変更はないのである。」
「ここでは、モンペリエ Montpellier写本に収められた宮廷風の愛を歌ったフランス語によるモテトゥスが演奏されている。」
「モンペリエ写本では、13世紀のモテトゥスの最も代表的な形態であるフランス語による二重モテトゥスの数が最も多い。(中略)これらの作品では、上2声部には互いに異なる独自の歌詞が付されている。(中略)多くの2声フランス語モテトゥスは、伴奏声部が付加されたトルヴェール歌曲 chanson d'amours に似ており、実際、トルヴェール歌曲の旋律がモテトゥスの上声部に組み込まれた例も少なくない。」
「13世紀のモテトゥスの演奏については、多くの議論が行われてきた。(中略)多くの研究者は、テノル声部は楽器によって演奏すべきであると考えている。(中略)しかし、これはまったく妥当な方法かもしれないが、声楽のみで演奏することを不適当とする根拠も何もない。私たち「アノニマス4」の演奏では、しばしば声楽によるドローンが加えられ、楽曲中の1つの声部が複数の歌手によって歌われている。」
◆本CDについて◆
輸入盤国内仕様。スリップケース。二つ折りブックレット内側にトラックリスト、裏表紙にCDリスト(カラー図版2点)。別冊ブックレット(全88頁)にトラックリスト&クレジット、Susan Hellauerによる解説(英語原文と仏・独訳)、歌詞(原文と英・独訳)、演奏者紹介(英・仏・独文)、写真図版(モノクロ)1点、裏表紙にCDリスト(カラー図版2点)。別冊解説書(全20頁)に邦文トラックリスト&クレジット、スーザン・ヘラウエアーによる解説(佐々木勉 訳)、「演奏者について」(佐々木勉)、訳詞(佐々木勉)。
アメリカの中世音楽グループ「アノニマス4」の第3作。女声アカペラで世俗曲を歌っています。声によるドローンが幻惑的です。「一角獣と貴婦人」タペストリーをあしらったデザインもよいです。
★★★★★
Dame, que je n'os noumer / Amis donc est / Lonc tans a (Mo 337)